ずっと…

これからもずっとそうだと思ってた

キミは俺にとって--ずっと

キミに恋する恋してく

アイツとはじめて出会ったのは小学校のときだった。

いつものように友達と一緒に「公園でサッカーしようぜ!」ってなって、俺は学校が終わってすぐに家に帰ると、サッカーボールを持って家を飛び出していた。

公園へ向かう通りには一軒、物凄いでっかいお屋敷があって、俺はいつもその前を通って公園へ遊びに行っていた。

--そう。あの日…

あの時、あの時間。

俺がいつもどおりの時間に、友達とサッカーしに出ていたら…

偶然にもあの時、母さんに祖父ちゃんに渡してほしいって荷物預からなかったら…

俺はアイツを知ることもないままでいられたのかもしれない。

きっと…

こんなにも今になって苦しい思いをしなくてすんだのかもしれないのに--。

※ ※ ※

「え〜?なんで俺がぁ?」

「いいでしょ。お姉ちゃん、まだ学校から帰ってこないし。あなた、どうせまた先の公園でサッカーするんでしょ?通り道なんだし、ちょっと寄っていってよ」

「うー…しっかたねえなあ。分かったよ。俺もあのお屋敷、入ってみたかったし」

「何言ってるんだか。おじいちゃんに荷物渡すだけなんだから、中にいれてもらえるわけないでしょ?あの家の子と友達になったんならまだしも」

「え?あの家、子供いんの?」

「あら?蘭丸知らなかったの?てっきり、同じ学校通ってるのかと…あーでも、案外どっかの有名な私立小かもしれないし、顔知らなくても当然かあ」

--あなたと同い年の女の子がいるらしいわよ。

母さんはそう言って、俺をあのお屋敷で執事をしている祖父ちゃんから頼まれた荷物を手渡しながら俺を見送った。

(女の子かあ…どんな子なんだろ?可愛いのかなぁ)

俺が住んでいる家から少し離れたところに高級住宅街がある。

祖父ちゃんが仕事しているお屋敷はその中でも一番でっかいお城みたいなとこだ。

白い壁がずーっと続いていて、俺は入り口を探すのにどれくらい歩けばいいんだ?とおもわず思ったくらいでかい家だった。

めいっぱい手を伸ばし、俺はインターフォンへと指を触れた。

すぐに中から声が聞こえ、それが祖父ちゃんの声だと分かったとき、俺は大きな声で「俺だよ!蘭丸!母さんに頼まれた荷物持って来たよ!」とインターフォン越しに叫んだ。

するとすぐに目の前の鉄格子みたいな門が自動で壁の中に吸い込まれていって、祖父ちゃんが「中へおいで」と招き入れてくれた。

俺が一歩中へと入ると、どこからか聞こえてくるピアノの音色。

「あっ…この曲。いつものだ」

玄関へ続く道をおもわず逸れて、俺は音色のする方へと駆けていた。

いつもの時間、ここを通るたびに聞こえる同じ曲。

何の曲かなんて知らない。

でも、なぜか聞くたびに思ってた。

--なんて悲しい音色なんだろうって。

(いったい、どんな奴が弾いてるんだ?)

俺がそっとテラスへと足を乗せ、一面ガラス張りの一室を覗き込むと、1人の少女がピアノに向かっている横顔がちらりと見えた。

茶色がかった薄灰色のゆるやかにウェーブしている髪が、彼女の動きにあわせてふわりと踊るように揺れている。

子供ながらに細くしなやかな指先は目の前の鍵盤の上を舞うように跳ねている。

おもわず、俺はその子に見惚れていた。

「…誰?」

「え?うわっ!」

よほど夢中になってみていたのだろう。

俺はいつのまにかガラス越しに彼女をしっかりと見える位置からジッと見つめていたらしい。

彼女が俺に気づき、びっくりしたようにハッとなって声をあげたと同時に、俺もまたびっくりして祖父ちゃんに渡さなくちゃいけない荷物を取り落としていた。

「爺!爺!!誰か!知らない子が家に!私の前にいる!」

金切り声をあげて、彼女がピアノから離れ、部屋の戸口へと駆け寄れば、すぐさま1人の初老の男性が駆けつける。

「どうかされましたか?拓人お嬢様」

「爺!窓の外に知らない子がいて!」

「…ん?蘭丸。おまえ、こんなとこにいたのか?」

「え?らん…まる?」

「あっ祖父ちゃん…ごめん。俺」

俺の祖父ちゃんの腰にしがみつきながら、拓人と呼ばれた女の子は俺を興味深げに見つめ、そして。

「あなたが蘭丸…くん?」

「え?あっああ。そうだけど」

タタッと俺の前まで駆け寄ると、窓の鍵を開け自分から俺を中へと招きいれた。

そっと触れられた手のぬくもりがあったかくて、俺は今でもあの時のこと今でも覚えている。

「私ね、神童拓人。あなたのお爺様からあなたのこといっぱい聞いてたんだよ」

にっこりと笑いかけられ、その笑顔があまりに可愛くて、俺はおもわず頬が熱くなるのを感じていた。

それが彼女、神童拓人との最初の出会い。

そして、今に続く繋がり。

幼なじみとしての--。

※ ※ ※

「…野?霧野?」

ゆさゆさと誰かが俺の体を揺すっている。

「霧野先輩?」

「おい!霧野!聞いてるのか?!」

「え?…あっ神童…に松風」

大事な部活のミーティングの最中に、ついうっかりとボーッと過去の思い出を振り返っていたようだ。

俺は目の前に立ち、俺の肩をしっかりと掴む神童と心配そうに俺を横から見つめてくる松風とを交互に見つめ、「悪い」と一言謝った。

「どうしたんですか?なんだかここ最近、先輩ボーッとばかりしてますよ」

「具合でも悪いか?悪いんだったら、今日は練習はしないで帰ったほうがいいぞ」

「あっいや。なんでもないから」

スッと無意識のうちに神童の手を振り払っていた。

--なんで、アイツらが一緒にいるの見てるだけで辛いんだろ?

1人先にミーティングールームから離れるように外へ出ながら、俺は思う。

--俺と神童が変わり始めたのは、松風のせい。

アイツが俺とアイツの間に入ってから、何かが2人の間で変わり始めた。

いや、正確には俺が変わり始めたのかもしれない。

知らなくていい感情を松風によって気づかされた。

神童は…

俺にとっての

ずっと大切な幼なじみであってほしかったはずなのに…

-end-


あとがき--

蘭拓♀!

とりあえず、切ない感じの主体。

拓人は女の子として進めてるので、ここで今後も間に挟む天馬は本来の男の子です。

ちなみに蘭丸は拓人が天馬を異性として意識してると思ってるゆえの苦しみ。

しかし、実際拓人は天馬を弟としてしか見てなく、天馬は拓人を憧れの先輩としてみているだけなのが現実。