夢渡り人 時代越えし瞬間(とき)

9.ダイアロスの仲間たち

「キャッ!」

眩い光と体が強い引力で引っ張られる感覚に、夢は地に足がついた途端に、バランスを崩しよろけて腰を打ってしまったようだ。

「いったあ〜い!」

軽く尻餅をついた体勢で、よろよろと立ちあがる。

「ここが、もしかして【隠れ里ネヤ】かしら?」

辺りを見渡せば、どうやら建物の中らしい。

近くに誰もいないことを確認してから、夢は唯一開いた正面の扉から外へと飛び出した。

「お待ちしておりましたぞ。あなたがイーノス様がおっしゃられていた娘、ユメですね」

外へ出てすぐ、イーノスと同じモラ族の民がユメに声を掛けてきた。

「ええ。そうです…が、あなたは?イーノスさんの?」

「はい。ドーンといいます。先ほど、我々のみが知る連絡方法でイーノス様からあなたのことを聞きました。あなたには、これから自身がこの世界で生きていくための術をここで学んでいってもらいます」

「え?でも、私…仙ちゃん探さないと!」

「それも聞いております。その方のことに関しましては、現在イーノス様が旅人たちの力を借り、探してくださっています。見つかりましたら、すぐにでもここへ連れてきてくれるでしょう。ですから、まずはユメ。あなたはあなたがしなくてはならないことのためにも、ここで最低限の覚えておかなくてはならないことを覚えていってください」

「はい…分かりました」

仙太郎の安否を一刻も早く知りたい。そして、早く一緒にイルミナのところへ行って、用件を済ませて帰りたい。

それが今の夢のたしかな気持ちだった。

しかし、正直なところ、ついさっき体験した言い知れぬ恐怖を思えば、この世界のことを何も知らずに1人、飛び出すこともどれだけ無謀かも分かってはいた。

夢は仕方ないといった感じで、ドーンの言葉に頷き、彼からネヤについて説明を受ける。

「この世界にはあなたのように、イルミナに導かれ、この島に辿り着き、新たな命を受けた者たちが、最初に集まる場所。あなたたちはここで、このダイアロスで生き抜くための術を学んでいくのです」

ドーンの説明はまるで学校のつまらない授業を受けているかのような感覚さえ覚えさせられた。

「この世界には様々な職業があり、そのことをあそこに集まっている賢人たちから聞くことができます。ぜひとも、参考に聞いていくといい。あなたの将来を決めるのにいいアドバイスをしてくれますよ。それとあちらにある建物が--」

あまりに長い説明におもわず、夢は欠伸する。

瞬間、ドーンの痛い視線が夢へと注がれた。

「人が親身になって説明してあげているというのに、なんなんですか?その態度は。あなたは他の旅人と少し違った経緯でここへ辿り着かれたと聞く。イルミナにとって特別な存在とも。だからこそ、私は他の者よりもより無知なあなたに事細かに話して聞かせているというのに…」

「そうは言うけどさあ。冗談抜きで、キミの説明無駄に長いとアタシは思うんだけどなあ。ねえ、ミィきち」

「ボクには関係ない。それよりも早く行こう。キミの用事、済ませるんだろ?」

ドーンの小言に口を挟むように現れたのは、ヌブール村で見た少女同様に、頬に変わった紋様を刻んだ子供2人。

(たしか、彼女たちはエルモニーとかいう種族とかってイーノスさんが言ってたっけ?見た目は子供だけど、あれでも成人だとか)

夢がぼんやりと2人とドーンのやりとりを眺めていると、ミィきちの傍にいたずいぶんと大きなネズミがちょこちょこと夢の方へと歩み寄ってきた。

「うわああっ!何、このネズミ!!でかっ!信じられないくらいでかっ!」

「こら、忠太郎。戻って来い」

「キュッ」

忠太郎と言われたネズミはミィきちに呼ばれると、すぐさま彼女の脇へと移動し、言われるままに座った。

「まあ、いい。せっかくだから、ミャコたにミィきち。あなたたち2人がそこの客人、ユメにネヤを案内してあげなさい。私は、これから来るほかの旅人たちの案内もしなくてはならないしね。人の話に無関心な娘の相手を延々としてあげられるほど暇でもないしな」

「おお、いいね〜それ。アタシもちょうど暇してたし、いいよ。引き受けたげるよ。よし!じゃあ、ミィきち。話もついたし、行こう」

「なんで…ボクが」

「いいじゃんかあ。どうせ、キミだって暇してたんだしさ」

「ボクは、新しく友達になったバジリスクの赤ちゃんの名前を考えてただけだ。そこをキミが勝手にボケーッとしてる暇してるって決めつけて、キミの用事とやらに付き合わせたんだ」

ドーンと話をつけたらしく、ミャコたがミィきちを無理矢理引っ張りながら、夢の前へとやってきた。

「こんちは〜。アタシ、ミャコた。ミャコでいいよ。いちお、今は酔拳士やってるんだあ。ドーンからキミのこと任されたからよろしく〜」

ふらふらとまるで酔っ払ってるような感じのチャイナ服にポニーテイルの少女はそう言って、夢にぶっとい腕を差し出してきた。

夢はその手をとり、少し屈んで握手しながら、おもわずうっと鼻をつまみそうになるのを堪えた。

(こっこの子、酒臭い…まさか本当に飲んでる??こっ子供なのに??)

一方、2匹のネズミを従えた自身もうさぎのコスプレをしている(夢にはそう見えた)少女は、ミャコたに腕を掴まれてるから、渋々いるという感じで、夢から声をかけるまでは視線をあわそうとはしなかった。

「あの、私…夢っていうの。えと…よっよろしくね?」

「みぃきち。こっちが忠太郎でこっちが豆二郎。よろしく」

「「キュッ」」

「よっよろしくね。ネズミさんたち」

「忠太郎と豆二郎」

「…忠太郎と豆二郎…くん」

「そう。ボクの大事な友達だから。一緒に行動するなら名前…覚えて」

ちょっと人間不信っぽそうな感じのミィきちに、おもわず顔を引きつらせながら、夢はもう1人の小さな酔っ払いを見つめ、小さくため息をついた。

(こんなことになるんなら、おとなしくドーンさんの話に耳を傾けてればよかったな)

しかし、後悔先に立たずである。

夢は頼っていいのか、よく分からないエルモニーの2人を、この地ではじめての仲間として迎え入れることとなったのであった。

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