夢渡り人 時代越えし瞬間(とき)

8.幼き日の記憶

『うっわあ!何それ!すっげえキラキラしてる!!』

『えへへ〜すごいでしょ〜!これね、ゆめの宝物なんだよ』

『いいなあ〜。俺も欲しいなあ』

『ゆめもあげたいんだけど、半分こできないんだもん』

『いいよ。無理しなくてもさ』

『あっでもね、せんちゃんには代わりにこれあげる!』

『なあにこれ?』

『これね、ゆめが書いた地図なの!だいあろす〜って場所の地図なんだよ』

『へえ…』

『だからこれ、せんちゃんにあげるね。みんなはこれをただのいたずら書きって笑うけど、ゆめにはこれは宝の地図に見えるの!それでね、いつかせんちゃんのパパみたいにゆめとせんちゃんとで一緒にこの地図で宝探ししようね!』

『うん!じゃあ、俺このだいあろすって場所、父ちゃんの世界地図とか見て調べておくよ!』

『うん!それでね、おっきくなったら一緒にこの地図の島へ一緒にいこうね!約束だよ。』

『約束だ』

※ ※ ※

「やく…そく。ゆ…め…」

「あ…キミ。ねえ、キミ!大丈夫?」

誰かが自身の体を激しく揺すっていることに気づき、仙太郎はゆっくりと瞼を開いた。

「ゆ…め?」

「夢じゃないよ!現実だよ!キミ、生きてるんだよ〜!魂と肉体はかろうじて離れずに済んだんだよ〜。わかる?」

「え?何、言ってるの?魂?肉体?それ、どういう」

ハッとなって身を起こせば、そこは教会らしき場所のベンチの上。

すぐ傍には知らない女性が1人、見たこともない服装で自分のすぐ隣に腰掛けているのが見えた。

「覚えてないのね?キミ、ダーイン山で丸腰のまま、うろうろしてたところをちんぴらオークたちに絡まれて、危うく殴り殺されるところだったんだよ」

「そういえば…二本足で立つ凶悪そうな顔した豚たちにいきなり、背後から殴られて、最初は1匹だったのがどんどん仲間が増えてきて…その後はもう覚えてないけど」

少しずつ思い出される記憶に、仙太郎はおもわずその時の言い知れぬ恐怖に反射的に身震いしてしまう。

その様子を見て、今度はさっきよりも優しい声で、気遣うように話しかけてくる女性。

見た目は同じ人間のようだ。自分と同い年か2つ3つ上くらいだろうか?

でも、ここは間違いなくダイアロスだ。

仙太郎は彼女との話の内容から、確実にその現実を把握していくのであった。

「かなり際どかったからね。まあ、魂と肉体が仮に離れてしまっても、アタシなら何とかだけど復活はさせてあげられたんだけどさ。でも、良かったよ。間に合って」

「あっじゃあ…あなたが、俺を助けてくれたんですか?あの豚の群れから?」

「あーうん。アタシと…そこのガスマスク男の」

「おいおい。ガスマスク男とは失礼じゃないか?リジュ。俺はガスマスク男じゃなくて超爆弾男のkyoだぜ!」

「はいはい。分かってますって。アンタの超爆弾攻撃のおかげで、豚はあっという間に殲滅で楽だったしねえ」

「俺の罠毒で弱ったところをすかさず、おまえがこんぼうでぶちのめしていく!相変わらずキチクなやり口だぜ!さすがキチククイーン・ラフレシアという異名は伊達じゃないなあ」

「って!そんな呼び方してんのアンタだけでしょうが!!」

(あれだけの豚をたった2人で倒したってのか?見たところ、俺と大差ない体格っぽい2人だけど…)

自分のいた世界では考えられない環境をダイアロスへ飛んできて真っ先に体験した仙太郎は、ふと大事なことを思い出し、ベンチから立ち上がっていた。

「ハッ!そうだ!夢!夢は!!女の子なんですけど、いませんでしたか?身長は俺より少し低くて、髪は肘にかかるくらい長くて…それに制服!制服着てます!この世界ではきっと俺たち以外着てないヤツです!」

「女の子に制服?んー制服ってんなら、ダイアロスアカデミーの子たちが来てるヤツなら知ってるけど」

「あっいえ、そっちの世界のじゃなくて、俺みたいな…って?」

直接、見てもらった方が早いと思い、仙太郎は自身の体を示し、そこではじめて自身の体を見下ろした。

「あれ?俺、制服…じゃない?」

よくよく見下ろせば、見たこともない綿地の服の上下を着ているではないか?

それもいつのまにかである。

驚き、自分の着ていた制服を探し始める仙太郎。

「嘘!なんで?俺の制服は??どこ?」

「あっもしかして、アタシがユンフェイに預けたヤツが制服ってのかな?」

「預けた?ユンフェイって人にですか?どうして!」

「いや、だって血と泥まみれで汚かったから…まあ、殴られただけみたいだったから、その制服は破れたりはしてないみたいだけど、汚れ落ちるかなあ?って」

たぶん親切心で専門職の者にでも頼んだというところだったのだろう。

リジュとkyoは仙太郎のただならぬ慌てように、おもわず顔を見合わせ、余計なことでもしてしまったのだろうか?と顔を曇らせた。

「ごめん…。もしかして、余計なお世話だった?」

「あっ…いえ、そんなっ!親切心でしてくれたことだってことは俺だって分かってます。ただ…制服の中に大事な物があったので、濡らされたら困るものもあったので」

「なあ、それって」

kyoがふと思い出したように、ポンッと手を打ち、アイテム袋の中から仙太郎の所持品かと思われるものをいくつか取り出して見せた。

「これのことか?ユンフェイの奴が、持って行く前にって念のためポケットの中、全部ひっくり返していったんだよ。そしたら、これがでてきたんでさ、俺が預かってたんだ」

彼がだした持ち物の中に、例の夢が幼き頃に書いた地図も、青い鳥が運んできた手紙も、そしてあの時は持っていなかったあの青い石の欠片も入っていた。

「これです!良かった」

kyoからその他の所持品と共にそれらを引き取ると仙太郎は安心したように、ホッと一息ついた。

「これってさ、解読されてない地図とブランクノアピースの欠片みたいだけど…。なんで、異世界のアンタがこんなもの」

リジュがぼんやりと仙太郎の手の中の地図とノアピースを覗きこんだときだった。

どこからか遠く誰かの声が彼らのいるラスレオ大聖堂内に響き渡った。

《渡せ…それを…渡せ!》

「なっ何?!この声!」

「どっから聞こえてきやがる?!」

「あの時と同じ声だ…この世界へ渡るとき…一瞬だけ、聞こえた声と同じだ!きっとまた夢を……いや、そうか!この地図が狙いだったんだ!」

仙太郎は地図をノアピースの欠片と共にギュッと握り締めると、迷わず階段めがけて走り出していた。

「いけません!リジュ!kyo!彼をここから出してはいけない!あの声の主は間違いなくそれを狙っている!あの者は私たちが何とかします!リジュ…あなたは今すぐ、彼を連れてイーノスの下へ飛びなさい!」

「はい。分かりました!」

「いいお返事ですね。では、後は任せました。2人とも行きますよ」

「「はい!」」

先ほどまで、自身の仕事に没頭し、仙太郎たちに全く関与すらしなかったミストが、謎の声を耳にした途端、まるでこうなることを予測でもしていたかのように、速やかに立ち上がると神官2人を連れて、外へと飛び出していく。

リジュとkyoは言われたとおりに、仙太郎を左右から押さえ、再び大聖堂の中央へと引き戻す。

「いい。センタロウ?アタシたちはこれからヌブール村へ飛ぶわ」

「ヌブール村?」

「そう。まずはそこへ飛んで、イーノスに会う。彼はこのダイアロス全てに精通してる人なの。それにあそこなら、まず安全だから」

「分かりました。でも、あのミストって人たちは?」

「あの人たちなら大丈夫。ラルファク神がついてるんだから!それじゃあ、kyo。センタロウのフォローお願いね。アタシはアルター召喚に集中するから」

そういうと、リジュは瞼を閉じ、聞きなれない言語を唱え始める。

彼女の体全体が眩く光だした次の瞬間。

「さあ!このアルターにkyoと乗って!早く!!」

「いくぞ!俺の手を離すなよ!」

「あっはい!」

「行くわよ!ヌブールアルター前まで!」

シュンッと瞬く間に消えた3人の姿。

同時に外から聞こえてきた衝撃音は納まり、辺りのざわめきもやんでいた。

「あの地図。間違いないわ。あれは…あの時の。ねえ、イルミナ…あなたは一体何をしようとしているの?」

天へと翳していた両手を下ろし、ミストはただ静かにイルミナ城のある方角へと視線を向け、何かを察したかのように、ふとそう小さく呟き捨てるのであった。

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