夢渡り人 時代越えし瞬間(とき)

7.イルミナを救う者

「イル…ミナ」

「そうじゃ。お主は女王イルミナが導きし娘。イルミナがノア・ストーンの力の一部を利用し、お主をここ『ダイアロス島』へと呼んだのじゃ」

「ダイ…アロス島」

「そうじゃ」

「ダイアロス…じゃあ今、私そのダイアロス島にいるのね。どこをどうやって来たのか分からないけど、私…イルミナのいるダイアロスへ来たのね?」

夢は独り言を繰り返しながら、少し前の記憶を辿りながら現在の状況をゆっくりではあるが確実に把握していった。

「…そうだ。私、そのイルミナの夢を見たんだ。それから彼女が私に助けを求めてることを知って、何とかしてあげなくちゃってなって、そしたらダイアロスと私たちの世界を繋ぐ青い鳥が飛んでっちゃって、追いかけてたら黒い影が襲ってきて…でも仙ちゃんが助けてくれて。そして2人で影から逃げていたら乗ってたボートが急に現れた渦に呑みこまれて…私…仙ちゃんと---」

そこまで記憶を反芻した後、夢はハッとなって辺りを見渡した。

「そうだ!仙ちゃん!!あの渦に呑まれた時にはぐれたんだ!!リボン…こんなに手首に痕が残っているのになんで解けちゃったんだろう」

「どうしたのじゃ?ユメよ。ここへたどり着くまでに何かあったようじゃな」

「ええ。あなたに話してもどうにもならないかもしれないことかと思うけど…」

「そういえばまだ名乗りもしていなかったのう。ワシはモラ族の長老、イーノスじゃ」

「ええ、イーノスさん。あのね、あなたがイルミナからすでに私のことを聞いていることは分かってる。でもね、ここへ送られてきたのは私だけじゃないのよ。もう1人、私と同い年の男の子がいたの。でも、ここへ来る前に黒い影に襲われてはぐれてしまったみたい」

「黒い影じゃと?まさか…あ奴が…?」

夢の言葉にただ静かに耳を傾けていただけのイーノスが、ふと何か思い当たる節でもあるかのように、1つの単語に過敏に反応した。

「イーノスさん?何か…何か知ってるの?私たちを襲った黒い影のこと」

「いや…ハッキリとは言い切れんが、なぜイルミナが異界の者を---ユメを必要としたのかが今のお主の言葉で少しだけ分かったような気がしてな」

「私とその黒い影とイルミナ…何か関係があるとでもいうの?」

「そうじゃな。少なくともその黒い影はお主とイルミナを接触させたくはないようじゃ」

「なんのために?」

「さて。その目的までは分からぬ。ただ、ワシにいえることはイルミナがお主の力を必要としていることだけじゃ。そしてその黒い影を操る者はそれをなんとしても阻止したいと考えておるようじゃな」

「…つまり、イーノスさんはイルミナがなぜ私をここへ呼んだのか目的までは分からないってことね」

「すまぬのう。ワシはただ、お主がここダイアロスへ来たときの案内人として、お主を導くようにしか言われておらぬのだ。後はイルミナがおまえに送った」

「イルミナが私に送った?」

イーノスがイルミナから受けた言葉を夢に託そうしたときだった。

--ドガーン!

「なっなに?!」

「何事じゃ?ティキイ」

「そっそれが何者かが!黒い影のようなものが天空より現れて、ここへ攻撃を!!」

「奴め、ユメの居場所を早くも突き止めたようじゃな。仕方ない」

「ちょっと!イーノスさん!!イルミナが私に送ったものって?」

「それはお主が一番よく知っておるはずじゃ!お主はそれを持って、イルミナのために何かをせなければならぬことになっておる!そのためにも、まずはここから一刻も早く離れねばならん」

イーノスはそういってティキイに命じて、旅へ出すための準備を始める。

「よいか。ユメよ。よく聞くんじゃぞ」

天井をいつ突き破らんかの勢いの怒号の中、イーノスは声を上げて叫んだ。

「お主はすでに2つのアイテムを持っているはずじゃ。地図、そしてノアピースじゃ」

「地図…地図は分かるけど、ノアピースって?」

「青く光る小さな石じゃよ。間違いなくお主はすでにそれを所持しておる。なぜだかは知らぬがな。その証拠にお主はアルターを渡ってAncientAgeからここPresentAgeへと時間移動をした。アルターを使えるのは我々、モラ族が授けたブランクノアピースに時の記憶を封じてあるものだけなのじゃよ」

「青く光る石…もしかしてそれって」

夢が思い当たる節でもあるように制服の内側を探り出したときだった。

「準備ができました!」

ティキイが小さなリュックを抱えてイーノスの元へと駆け戻ってきた。

「うむ。ではユメよ。これを背負いなさい。この中にしばらく分の食料とダイアロス各地の地図、そして少しばかりのGoldが入っておる」

「あ…え?」

「よいか。ここから先はお主1人で進まねばならぬ。ワシはちと気になることができたため、これから調べなくてはならぬため、すぐにはお主の力にはなれぬ。だが心配するでないぞ。この島では助けを求めるものには必ず手が差し伸べられるものじゃ」

「え?ちょっと待ってよ!私、そのイルミナが送ったもの見失っちゃったかもしれないの!だからイルミナのこととか、それに仙ちゃんだって」

しかしイーノスは夢の言葉に耳を貸す様子もなく、淡々と言葉を続けるだけだ。

「よいか。これからワシはお主を一度『隠れ里ネヤ』へと送る。そこならあ奴らも追っては来れまい。そこにはお主同様にここダイアロスへ流れ着いたばかりの旅人たちが集まっておる。中には旅慣れた者も訪れる場所での。そこで良き仲間を見つけるのじゃ」

「ねえ、そこに仙ちゃんもいるの?」

「それは分からぬ。本来なら、お主は最初にそこへ出るはずだったところを襲撃に遭い、関係ない場所へと流れ着いたようじゃからな。じゃが、同じ島に流れ着いていればいずれは会えるじゃろう」

「イーノス様!もう限界が近づいています!このままでは家が持ちません!!」

「ではユメよ…イルミナを…ダイアロスの未来を救ってくれ」

次の瞬間、夢の体を眩い光が包み込んだ。

--ヒュンッ!

一瞬にして光にとけ消えていった夢の体。

それと同時に静かになった攻撃。

「ユメの気配がなくなったことに気づいたようじゃの」

「無事に逃げ切れてくださればよいのですが…」

「そうじゃな」

夢の消えた後を見つめながら2人のモラの民は静かにその場を後にするのであった。

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