夢渡り人 時代越えし瞬間(とき)

4.イルミナ

昨夜から降り始めた雨は時間を追うごとに激しくなってきているようだった。

「まるで嵐みたい」

夢は心の中で(あの夢で見た光景に似ている)と付け足しながら窓の外の景色に目をこらすのであった。

※ ※ ※

「やはり…未来は変えられないのでしょうか--」

薄明かりの中、その人影は城の上空に浮かぶノア・ストーンを祈るようにして見上げながら呟く。

「急がねばなりません…一刻も早く……を」

最後の一言は、目の前に突如現れた青い鳥の羽ばたきにかき消されてしまうほどの小さな声だった。

「頼みましたよ」

人影は見えない力に床に押し付けられるようにして蹲り、再び青い鳥が消え去った天を仰ぎ見た後、フッと意識を失い倒れ伏すのであった。

「イルミナ様!大丈夫ですか?イルミナ様!!」

気配に気づき、警備に立っていた兵士が慌てて駆け寄る足音が聞こえる。

「…ミナ。……ユ…メ…」

※ ※ ※

「夢…お〜い夢。夢さぁん」

「イッイルミナ?!」

深い眠りから目覚めるようにガバッと上半身を起こし、夢は何を思ったのか反射的に辺りを見回す。

「え?あれ??イルミナは??青い鳥は??」

次第にはっきりとしてくる意識と今ここにいる現実。

「っあー。バカ…せっかくバレないように起こしてやろうとしてたのに…っと」

周りを見やれば、すぐ隣では斜め前を見据えて小さくため息をつき、額に手を当て頭を振る仙太郎。

そして、彼の見ていた方へと釣られて視線を向ければ、そこに立っていたのは、授業中に堂々と居眠りをしていた生徒にご立腹な様子の教師。

「どうした?雅。授業中だぞ。寝ぼけてる暇があったらこの問題解いてみろ」

「あ……と〜」

夢が「分かりません」と言うよりも早くに天の助けか終業を知らせるチャイムが鳴り響く。

「せんせ〜い!もう終わりで〜す」

夢の隣でサッと挙手をして仙太郎が助け舟とも思える言葉を吐き、教師も仕方ないといった調子で日直に号令をかけるように指示を出す。

「雅。今度から気をつけるんだぞ」

「はい。すみませんでした」

ガタガタとあちこちで椅子を引く音と雑談で室内が賑わう中、1人心配そうに夢を見つめる仙太郎がいた。

「おい。夢、大丈夫か?いきなり、一点見つめたままうとうとしだしたと思ったら、寝ちまって…具合でも悪かったのか?」

「あっううん。なんでもないの。ただ…自分でも分からないんだ。授業受けてたのは覚えてるんだけど、急に意識が遠くなって…」

「それでイルミナって?」

「…よく分からない。ただその人がこの子をここへ送り込んだ感じだった」

「地図は?」

「地図については何も…それよりイルミナだいじょー」

--ゴッ!!

「うわあっ!」

「キャアッ!だっ誰よ!雨が降ってるのに窓開けた奴!!」

夢がイルミナの名を口にしたときだった。

突如、閉め切っていたはずの窓が全て全開になり、風雨が室内に流れ込んできた。

《イカセハ…シナイ…イルミナ…モトムムスメ…》

「イルミナ…求む?」

窓際に立つ生徒たちが口々に文句をいいながら、窓を閉めていく中、夢の耳にだけ届いた謎の言葉。

その言葉は風の音が消えると同時にフっと耳元から遠のいていった。

「いったい、どういう??」

夢が顎に手を当て、考え込んでいると夢の腕を誰かが強く引っぱってくるではないか。

「なあに?私今、考え事…」

うざったいという表情全開で振り返ればそこにはかなりパニックになっている仙太郎。

「大変だ!あの鳥が…逃げちまった!!ダイアロスへの道しるべが飛んでっちまったんだよ!」

「ええっ?!」

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