夢渡り人 時代越えし瞬間(とき)

10.夢を知る者との出会い

フッとヌブールアルター側に3人が降り立つ。

だが、周囲のアルターを利用する旅人たちはとくに気にする風もなく、アルターへの階段を行ったり来たりして、各々の目指す目的地へと次々と向かって消えていくだけ。

仙太郎はこの異常に何も反応を見せない周囲の人間にきょとんとしながら、同時にその人たちが自分の知る姿よりも異形であることに驚いているようにも見えた。

「うわっすっげ!あの男の人、頭から角生えてる。それにあの子、腕ぶっと…あっあの綺麗なお姉さん、本で見たことあるな。エルフだっけ?」

「彼女はエルフじゃなくてコグニートよ。んで、あの角つきの巨体はパンデモス。そしてそこの小さい腕が太い子たちはエルモニーっていう種族よ。ちなみにアタシらはアンタと外見似てるけど、ヒューマンじゃなくてニューターなの。ある程度まで成長するとね、アタシたちの体の成長は止まるの。ここ何年もずっと年とってないわ」

「それって不老不死?」

「さあ、アンタらの常識とウチらの常識って何かいろいろと違うみたいだから、一重には言えないんだけどねぇ」

「まあ、いいですよ。そんなことより、俺たちこれからどうするんですか?そういえば、ここへ飛ばされる前にリジュさん、たしかイーノスがどうとかって言ってましたけど」

階段へと向かって歩き出したリジュたちの後をついて歩きながら、仙太郎はすれ違う者たちを物珍しそうに見つめていく。

その中でも気になったのが、リジュの説明になかったサルみたいな顔をした小柄な男だった。

(あの人だけアルター使ってる人たちと全く違う種族みたいだな?それに、なんか俺のこと見てる?)

目が合った瞬間、ドキリとして慌てて反らせば、トンッと誰かの背にぶつかってしまう。

「あっごめんなさい。俺、余所見してて」

「ああ、構わないさ。キミは見たところ、初心者のようだしね。ダイアロスが珍しいんだろう。ハッハッハッ!」

黒ずくめの装束に怪しいサングラス姿の商人らしいコグニートの男は、やけにでかい態度で仙太郎を見下ろしながら、彼の肩をしっかりと掴み離さない。

「まあ、せっかくだし私がこれからキミのために貴重な時間を割いて、ダイアロス観光をしてあげるとしよう」

「え?あーいや、お気持ちは嬉しいんですが、俺ちょっと忙しいんで--」

変な人に捕まったー!

そう仙太郎が心の中で思い、乾いた笑みを浮かべ丁重に彼の申し出を断ろうとしたときだ。

「あーっ!ったく!アンタだったのね?センタロウがついて来てないからてっきり例の奴らが追ってきたのかと一瞬焦ったけど、まさかギルだったとは…ふざけんじゃないわよぉっ!!このっ変態商人がぁっ!紛らわしい真似しやがって!!」

いいタイミングでリジュが階段から飛び降り、いきなりギルと呼ばれたコグニートの男に飛び蹴りを食らわした。

「うっわ…一発KOかよ。ギル…さん。大丈夫かな?」

「おいおい。いきなりの挨拶がこれはないだろう。痛かったじゃないか」

(こっこの人、すげー…飛び蹴り喰らって打撃受けた様子もなく、しかも平然と復活したあ?!)

一度はリジュに蹴り飛ばされて、前のめりに倒れ伏したギル。

しかし、すぐにむくりと起き上がり、何事もなかったように悠然と振舞うその姿は物凄く怖いものがあった。

仙太郎は無意識のうちに、例の黒い影を思い出し、そろそろとリジュの後ろへと逃げ込む。

「あー心配しないでセンタロウ。こいつ、いちおうアタシの知ってる奴だから。ただ、ちょっと頭がイカレてるんのよ。とはいえ、この世界何もかも普通じゃないからキチガイなんてけっこういるけどさ」

たとえば…とリジュがチラリと背後を見つめれば、退屈そうに欠伸をして2人が戻ってくるのを待っているkyoが仙太郎の視界に映る。

「はあ…なるほどね」

kyoもまだ出会ってからほとんど話をしてはいないが、彼も少しばかり変わっている人だというのは、なんとなく感じてたので、仙太郎はあっさりと納得する。

「とりあえず、紹介しとくわね。こいつはギルバード。みんなギルって呼んでる。いちおう元富豪でさ。今は貧民?」

「ハッハッハッ!今はそうでもないさ」

どう考えても褒めてる言葉ではない。

だが、ギルバードは気にする素振りもみせずに余裕の笑い声をあげる。

周囲を歩く人間がおもわず、彼らを避けて歩いてしまうくらいに---。

当然、仙太郎も早くこの人から離れた方がいいとシックスセンスが働くのか、さりげなくリジュに耳打ちをする。

「あのぉ〜そろそろ、そのイーノスという人のところ行きませんか?夢のこととかも気になりますし」

「あーそうだったわね。じゃあ、そゆことで!アタシら行くわ」

サッと手を振り、リジュは仙太郎を連れて再び歩き出す。

すると、ギルが顎に手をあて、何かを思い出したように「あっ」と声をあげ、リジュを呼び止めた。

「もしかして、おまえ…センタロウか?」

「そうよ。アタシがさっきこの子のことそう言ってたでしょおが!」

「となると、あの娘が探していた少年とはおまえのことになるな」

リジュのツッコミを無視して、ギルバードは意外な言葉を仙太郎へと言い放ったのだった。

「あの娘…あの娘ってもしかして夢のことですか?!」

「ああ…たしか、そう名乗っていたような気もするな」

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