夢渡り人 時代越えし瞬間(とき)

1.記憶の中の幻の島

深い 深い 闇の中

私はわずかな空気を求めてもがき苦しんでいた

突然の嵐 無残にもくだける小舟

投げ出される自身の体

大海の渦にあっという間に呑まれ 私の体は沈んでいく

むなしく伸ばした手は水を掻き 空気を失った頭からは意識が遠のいていく

もう肺の中が空っぽだ

私は…

もうここで終わりなのね

ゆっくりと閉ざされた瞼の先に 目指していた世界が揺らいで消えた

--ガバッ!

「っはあ!はあ!はあ!はあ!」

肩を大きく上下に揺らして少女は深い眠りから目を覚ました。

「…ゆ…め?」

恐怖に目を見開き、少女は辺りを見渡し、そしてゆっくりと天を仰いだ。

見慣れた天井。

ほっと安堵の息をつき、ギュッと強く握り締めたままの布団から手を離す。

同時に、少女は何かをポンポンと叩きつける物音にようやく気づいたようだ。

「…仙…ちゃん?」

少女はうっすらと陽の光さすカーテンの隙間から顔を覗かせ、そう窓の先に見える少年の名を呟いた。

「よっ!夢!!」

夢がカーテンを開けたとたん、向かいの家の窓際に器用に腰掛けながら、手にしていた小さなゴムボールを投げつけてきたのは彼女の幼馴染の火柳仙太郎(カリュウセンタロウ)だ。

「相変わらずすっげえ頭だな」

「……」

「後で話しがあるんだ。すっげぇぞ!見たらおまえもビビるって!だから、例の秘密基地に後で集合な!『トレジャーハンター部』全員呼んどいたから」

夢の寝ぐせがしっかりとついた頭をケラケラと笑いながら、仙太郎は不機嫌極まりない彼女を後目に部屋の中へと戻っていく。

「うん。分かっ…て!なんで私が!!」

夢は仙太郎が投げつけてきたボールを慣れた手つきでキャッチすると、怒り任せに部屋の奥へ消えた彼へと投げ返す。

「私はそもそもその『トレジャーハンター部』に入った覚えはありません!そもそも、部というより同好会って言った方が正しいんじゃないのかしら?」

「いいだろ。どっちだって!どうせ、学校非公認の集まりなんだしさ。それよか、さっきのな。おまえがちっちゃい頃に話してたアレと関係ありそうなんだよ!ほらっ!何とか島がどうとか…女の人がどうとかって」

飛んできたボールを器用に交わしながら、再び窓際まで顔を覗かせた仙太郎はそう夢にいうと、たった一言。

「後でな」

とだけ言い残して窓をぴしゃりと閉めて部屋を出て行ってしまったようだ。

「ダイアロス島…」

残された夢は仙太郎がうやむやなままにしていった記憶の島の名前を誰に言うともなく1人呟いていた。

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