その日の午後のことでした。

お昼過ぎから本格的に降り出した雨は今もまだ止まず、夕方だというのに空はもう夜のように暗くなっていました。

私は忘れ物をしていたことに気づき、二度目の買い物に1人でかけました。

買い忘れた品も手に入れ、夕食の時間も近いこともあり、急いで帰ろうと歩いていたときでした。

(せっかくですし、お夜食に何かお菓子でも買っていきましょう)

ふと和菓子屋さんの前を通りかかったとき、昼間のマサトの満足げな顔が思い浮かび、またあの顔が見られるならと、ちょっと寄り道をしてみます。

たった数分の寄り道も、食堂のタイムテーブルのことを考えれば、大きなロスです。

(あんまり遅い時間になってしまうと、女の子がいなくなってしまいます)

私は和菓子屋さんを飛び出した後、近道をするつもりで、公園を走り抜けることにしました。

日曜日…普段なら、その公園は小さなお子さんや、若いカップル。

それに、お昼すぎになるとやってくるおいしいクレープ屋さんのワゴンが近くにお店を広げます。

だけど、今日は雨が降っていることもあり、誰もいないようですね。

少し不気味に感じながらも、駆け抜けてしまおうと水溜りを跳ねたときでした。

「わふっ!だっ誰かいます?!」

私はびっくりして抱えていたお茶菓子の入った紙袋を危うく落としてしまいそうになりました。

滑らせかけた手の中の紙袋をしっかりと腕の中に抱えなおしてから、私はゆっくりと半信半疑で視線上に映る大きな黒い影へと近寄っていきます。

「…よお。クー公じゃねえか」

「やっやっぱりマサト。どうしてこんな雨の中、走っているんですか?風邪、引きますよ」

気のせいじゃなかった。

雨の中、レインコートも身につけず、ジョギングをしているマサトがそこにいたのです。

「あ?風邪?んなもん、もうここ何年も引いてねえなあ。まあ、アイツらがいうには俺はバカだから風邪ひかねえらしいけどな」

そういいながら、マサトは近くの遊具を使って筋トレをはじめてしまいました。

私はいくら風邪をここ何年引いたことがないから大丈夫。みたいなことを言われても、今目の前でずぶ濡れの姿で汗を流すマサトを放って帰るわけにもいかず、自分の差していた小さな傘をマサトへと差し出していました。

「何してんだよ!そんなことしたらおまえが風邪ひくぞ!」

「大丈夫です。私には、ほらっ!マントと帽子がありますから。これがレインコート代わりになりますから」

さっきより激しく降りだした雨に、私の小さな体はあっという間に体温を奪われ、ただでさえ寒がりな私は微かに震えだしてしまいました。

マサトもそれに気づいたようで、慌てて私が差し出していた傘をひったくるように奪うと私の頭上へとその傘を戻してくれました。

「俺よりもおまえの方が風邪ひくぜ。それに…」

マサトは屈みこんで、私の手の中にある紙袋を指さして子供のような笑顔を浮かべてこうつなげました。

「せっかくの食いもんが台無しになっちまうだろおが」

「わふっ!ごめんなさい」

私は慌てて、紙袋を開けて中を覗いてみます。

「大丈夫でした。中の包みは濡れてませんよ。マサトも後で一緒に食べませんか?」

「そうだな。ちょうど俺も腹減ってきたとこだしよ。そろそろ、寮へ帰るとするか。そうしないと、クー公に風邪引かせちまいそうだしな」

「はい。そうなりますね。でも、それはマサトも同じです」

相変わらず、マサトは私に傘を傾けたままで自分は頭から冷たい雨を浴び続けている。

私はそれがいたたまれなくて、真剣な顔で傘の端を掴むとそっとマサトへと押しやりました。

マサトはちょっとびっくりしたように、私の顔を見つめた後。

「そうだな。じゃあ、こうしようぜ」

といって、私を片手でひょいっと抱き上げました。

「わふっ!マッマサト?」

「クー公もちょっとは濡れちまってるから、俺がびしょ濡れでもそんなに気にならねえだろ?」

「それはそうですが…でも」

「これが一番いいんだよ。おまえは楽できるし、俺はおまえを担ぐことで筋トレをして帰れる。俺にしてはなかなかいい考えだろ?」

「はい。そうですね」

ちょっと恥ずかしい気持ちも内心ありましたが、それでも私はマサトのその好意がとても嬉しくて、素直にマサトの腕に腰を落ち着かせていただきました。

1つの傘を差し、マサトは私を濡れないようにしっかりと抱え上げ、ゆっくりと寮へと戻る道を歩いていきます。

私はもう何も言葉を発することもできずに、小さく俯いたまま、マサトの肩に乗せた手は気持ち汗ばみながらも、この予想外の幸せに嬉しさを隠し切れずにほんのちょっとだけ泣いてしまいました。

「クー公。お茶菓子しっかりと濡れないように持ってろよ」

「はい!了解なのです」

いきなりマサトに声を掛けられ、一瞬びっくりしつつも、私は慌てて涙をぬぐって笑顔でそう答え、そして自分とマサトをしっかりと包み込むようにさされた傘を見上げていました。

--雨の日は、泣き虫お空でみんなしょんぼり顔。だけど、私は嬉し顔。あなたと一緒に相合傘で誰もいない静かな道を恋人気分で歩いてます。

それはとてもとても幸せなとき。

それは雨の日にしかできないちょっとサプライズなイベントです。

 

-end-


駄文--

真クド第二弾。雨の日ネタ。

タイトルの「あまいろ」はクドの髪『亜麻』色と『雨』色をかけあわせていたりで敢えてひらがな書きだったり!

真クド的、相合傘…やっぱり身長差考えると真人がクドを抱きかかえて相合傘が自然な気がする。

お姫様抱っことは少し違うとは思うけど…

クドは小さいから片腕に納まりそうな印象あるし。

きっとお父さんが子供を抱きかかえているような感じ。

2008/06/16