ミニフロ〜その7

視点は泉。内容は二拓♀+一泉。(ここでの一泉は付き合ってる設定)

 

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それは大切な宝物

 

学校の帰り道。

私と輝一が並んで自転車を漕ぎながら、土手沿いを走っていたときのこと。

「あれ?あそこにいるの…拓也じゃない?」

「え?」

輝一が自転車を止めて、橋桁の下を指差す。

その先に見えるのはたしかに拓也によく似た女の子のシルエットだった。

川底を漁って何かを必死になって探しているようにも見えるその姿に、私と輝一は互いに目を見交わした後、小さく頷きあうと、自転車を降り、土手を下ってその子の傍まで駆け寄っていた。

「あ…やっぱり拓也だったのね」

「ああ。泉に輝一か」

無造作に脱ぎ捨てられた靴と靴下。そしてその傍に置かれた通学用バッグ。

口を開いたバッグの上に乗せられた真紅の携帯電話は、誰かからの着信があったことを知らせるように、何度もランプを点滅させている。

しかし、本人はそのことに気づかなかったのか、それどころではなかったのか、その先の川辺で膝下まで足を浸からせて、川底を攫い続けている。

拓也は私たちに気づくと体を起こして、軽く応えるとすぐに再び屈み、目を凝らして何かを探す仕草をみせる。

「何か探し物?良かったら手伝おうか?」

「あっ私も探す」

輝一が率先して、靴と靴下を脱ぎ、ズボンの裾を膝上まで捲り上げているのを見て、私も慌てて靴と靴下を脱いで、拓也のいる川辺へと足を浸ける。

「キャッ!つめたっ」

春先とはいえ、まだ朝夕は肌寒いくらい。

当然水温もまだまだ水遊びをするには早すぎるくらい冷たくて当たり前。

拓也はそんな中、いつからいたのか。よく見れば水に浸かっている手足は真っ赤になって本人も微かに震えていた。

それなのに、拓也はめげずに何かを探しているみたい。

何を探しているのかしら?と思って、拓也に問いただそうと彼女の顔を覗き見たときだった。

「もしかして…ヘアピン探してるの?」

「あっうん。ここで子供たちとサッカーして遊んでたときに、どうも取れちゃったらしくてさ。ここんとこ、ピンの留まり具合が悪かったし、ちょっとした弾みで外れちゃうこともあったからな。油断してた」

そういいながら、拓也は「地面や草むらにはなかったから、たぶんこっちのはずなんだ」と一人呟きながら、オレンジ色に染まる川底を見つめている。

「一体、いつから探してるんだい?」

「ん?…えっとぉ。さっき帰宅のチャイムが鳴ってたからもう1時間は経ってるかな?」

「そんなに?!もう、諦めなさいよ。たかがヘアピンじゃない。同じのが良ければ、また買えば」

「輝二が…くれたヤツなんだ」

私の言葉に拓也が俯いた姿勢のまま、川底を探る手を止め、震える声で小さく答えた。

「アイツが…俺にはじめてくれた誕生日プレゼントなんだよ。…俺が女になってから、最初の誕生日にくれたんだ」

拓也は濡れた手で軽く零れ落ちる涙を拭うと、再び川底へと両手を浸ける。

「赤い色は火の闘士のイメージ…アグニモンとヴリトラモンのこと、輝二はそこまで考えてくれててさ、俺に合うだろうって…。アクセサリーの1つや2つ、つけとけって…」

拓也は空がオレンジから深い紫へと色を変え、底が見えないくらい暗くなり始めてもなお、手探りでヘアピンの感触を頼りに探し続ける。

「だから、たとえもう壊れてしまったものだとしても、宝物としてとっておきたいんだ。必ず…見つけるんだ」

「そうね…きっと…ううん!必ず見つかるわよ」

私も、拓也と一緒になって夢中になって探した。

だって、今の拓也の言葉聞いたら、ほっとけなくなっちゃったから。

私のこのお気に入りのヘアバンドだって、今一緒にいる大切な人からもらった宝物だもの。

ふと視線をあげれば、その先には輝一が同じように川を漁っている姿が見えた。

彼もまた、拓也のために必死になって小さなヘアピンを探してくれている。

拓也が落としたという辺りを3人で探し続けて、どれくらい経ったのだろうか?

辺りは完全に日が落ち、もう私たちの手足も痺れて限界が近づいていた。

「ごめん…。2人とも、もういいから。後は俺、1人で探---」

「拓也!輝一!泉!!」

「輝…二?」

「すまない!輝一。遅くなった。でも…見つけてきたから。そっちは結局、どうなった?」

「こっちはやっぱり見つけられなかったみたいだ。きっと軽いから川下へ流されてったかも。それか、光物だしカラスがとうの昔に持ってっちゃったかな?」

「そうか…。すまなかったな。泉も。こんな時間までこのバカに付き合わせちまって」

輝二はまず私と輝一に、拓也のことで迷惑かけたと頭を下げてきた。

そしてその足で、バシャバシャと水を弾きながら、拓也の下へ歩み寄るとそのまま、俯いたまま輝二と顔を合わせようとしない彼女を一気に抱き寄せた。

「本当にバカだよ。おまえはさ。あんな小さなヘアピン1つのために、こんな冷たい水ん中ずっといて…風邪ひいたらどうすんだよ」

「だって…俺っ…ひくっ…うっぅっく」

輝二の胸の中で一気に感情が弾けたのか、滅多に泣かない強気な拓也が堪えていたものを一気に吐き出すようにボロボロと泣き出していた。

「泉」

そっと肩越しに声をかけられ、振り返れば輝一が優しく微笑んだまま「帰ろう」と囁いてきた。

「そうね」

--輝二が来たからもう大丈夫。

そう輝一の口元が動いたような気がして、私は小さく頷くと一緒に冷たい川から離れる。

去り際に輝二が拓也に何かを手渡し、そして2つのシルエットが1つに重なり合うのが目の端に映りこんできたことで分かった、拓也はもう大丈夫だということ。

「良かったわね。拓也」

ゆっくりと自転車を漕ぎ、輝一と2人。家までの短い距離を走り抜けながら、私は輝一から輝二がなぜ、ここに私たちがいることを知っていたかを聞いた。

「そうなんだ。輝一がメールで拓也のこと全部伝えてたのね」

「うん。ヘアピンが見つかる可能性が低いことは分かってたけど、あれだけ必死の拓也みたら、下手にいえなくて、輝二からもらったものだって聞いて、それで輝二に同じの探してあげてって頼んだんだ」

「それで、輝二がこんな時間にここへ来たのね」

「みたいだね。同じのかどうかまでは分からないけど、でも輝二が拓也のために選んだものはみんな拓也の宝物になると思うから、それでいいと思うよ」

「私も…そう思うわ」

「ねえ、泉の宝物はやっぱり」

「ええ。輝一が私にはじめてくれたこのヘアバンドよ」

満面の笑みで私がそう答えれば、輝一は心底嬉しそうな顔をして笑ってくれる。

きっと今の輝二と拓也もそうね。

大切な宝物は全て、一番大切な人がくれるんだから---。

 

end


短く終わらせようとして文に起こすと長くなる〜…

これは一体どういうこと?

もうミニフロじゃない!!

そしてどっちかというと一泉が出張ってた気がする。

んで、にょ拓はきっと風邪ひいて寝込むんだなと続編の予感。

もしかしたら、直接サイト用にアップするかも?↑を。