「おまえ、小毬とは小学校からの付き合いなんだよな」

「はい」

だいたい分かってはいた。

棗先輩がボクと話してくれるようになったのは、小毬がボクと棗先輩の間で深く関わるようになってからだったから。

「小毬はさ、俺のことどう思ってるんだろうな?」

「ボクには正直、分かりません」

つい冷たく言い放ってしまい、慌てて別の言葉を繋いで繕う自分がイタイ存在だ。

「だって、小毬はそういう話はボクにしたことないから…分からないんです。本当に」

「そうか。鈴も同じことを言うんだ。『気になるなら直接聞けって』な」

「そう…ですね」

たぶん、きっと2人はうまくいく。

だってボクは知っているから…小毬が棗先輩に好意を抱いていることを。

でも、ボクはそのことを棗先輩に話すのをためらい、知らない振りさえした。

話せば自分の温めてきたこの思いがここで終わってしまう。

もうこうやって小毬を口実に棗先輩とお話しすることすら許されなくなるのだ。

それだけのために、ボクは2人の邪魔をしているのか?

嫌な子じゃないか。

一瞬の間がとても長い。

しばらくして棗先輩がスッと三叉路の右側を指し示していった。

「つき合わせちまって悪かったな。じゃ、俺こっちだから」

「あっはい。さようなら」

「じゃあな」

棗先輩が行ってしまう。

小毬の本当の気持ち、知りたかっただろうに…そのためにボクを呼び止めただろうに。

「あの!待ってください!」

おもわず引き止めていたボクがいた。

「…あの。これは親友としての勘なんですけど、たぶん小毬…棗先輩のこと好きだと思います」

「そうか…ありがとな」

「いえ」

一瞬だったけど、棗先輩は嬉しそうに笑ってくれたような気がした。

軽く手を振り、棗先輩はボクの前から去っていった。

小さく手を振り返しながら、ボクはふと空を見上げる。

「雪だ…」

空から舞い落ちる白い粉雪。

地面に落ちては消え、落ちては消えていく。

それはまるで今のボクの心のようにさえ思えた。

「どんなにどんなにボクの思いを彼に伝えたしても、きっとボクの思いはこの粉雪のようにすぐに消えてなくなってしまうんだろうな」

彼の心にボクの想いが積もることは決してない。

それだけボクの気持ちは彼の心から離れた場所から流れていくから---。

ほんの一瞬、そう一瞬だけの偶然が、こうしてボクに彼の心へ触れる奇跡をくれるだけ。

そのときだけボクの想いはそっと彼の心の地面に降りそそぐ。

だけど、積もることなど決してないほど一瞬で、すぐにそれは消えてなくなってしまう。

遠すぎる距離。

近づくことのできない遠い存在。

 

彼の心の鍵を開くことができるのは小毬だけなんだ。

彼女と過ごす時間が、彼の心の地面に決して消えない思いを降り積もらせることができる。

溶けることのない恋心を---。

 

分かっているからこそ、辛い。

2人も大好きな人だからこそ、非情になれない。

奪うことも引き裂くことも何もできずに、心だけを傷つける。

そして今日もボクは自分自身に嘘をついて、親友に嘘をついてまで、こうして彼との短い時間を歩み続ける。

彼と彼女が結ばれるその日が来るまではと---。

 

 

-end-


あとがき---

恭→こまな展開を意識しつつの恭←リキ♀なお話です。

本編シリーズ理樹リキ♀でリキ♀が男装して出てきた辺りの、こちら世界でのリキの立場を書くためにちょっとがんばってみた。

向こうの理樹とこっちのリキにはいちおういくつかの違いがあるという意味での1つ目の違いがリキだけ通う学校が違うということ。

でもリキの姉妹にあたるリジュとリコはこっちの学校なんですよね。(語られることはないだろうけど)

リキの男子制服の出所はたぶん本編シリーズで明らかになるはず。

リトバスメンバーの中でも、こっちとあっちの違いが明らかになる子も出たり出なかったりです。

とりあえず、バレンタイン前にこれ作ることできてまあ、いいか。

ちょっと一方的片思いって難しいな…密かに苦手ジャンルかもしれん〜。

2011.02.13