叶わぬ想いは 人魚のように

泡となって消えてしまえばいい

何もかも忘れてしまえばいい

あなたを好きだったこと全てを

永遠に忘れてしまえたらいいのに

 

叶わぬ想いは人魚のように

 

あの2人から距離をおきたかった。

とっても大好きな親友と、親友と同じくらいに想いを寄せていた憧れの先輩。

2人はボクにとってどちらも捨てがたいくらい大切な存在で、だから、その2人が付き合うことになったと聞いたとき、ボクは心から祝福できるはずだと思っていた。

なのに…

なんでこんなに辛いのだろう?

ボクは前から分かっていたはずなのに!

棗先輩が親友の小毬のことをいつも気にかけていたことを…

一番好きな人だからこそ、彼のいつもと違う微妙な変化に気づいていた。

気づきたくなかったはずなのに気づいてしまっていた。

結局、何もいえずに時が解決するのを黙ってみていた。

小毬から「恭介さんとお付き合いすることになった」と言われたとき、無理して笑顔で「よかったね」なんて言ってた。

本当は辛くて仕方なくて、どうしたらいいか分からなくて複雑な気持ちでいっぱいで、明日から学校でどんな顔して彼女と会えばいいんだろうって思ってた。

逃げるように一歩踏み出せば外はどしゃぶりの雨で、ボクは傘もささずに飛び出していた。

そして---。

 

※ ※ ※

 

「おい…大丈夫か?」

ボクはもう1人の棗先輩と出会ってしまった。

忘れるつもりでいたのに…

この世界から消えてしまいたいとさえ思ったのに

2人の前から消えてしまいたいと思ったのに

「…棗…先輩…なんで?なんでボクを助けてくれたの?なんで?」

(なんで恋人の小毬じゃなくてボクを…?)

「なんでって、おまえがこのどしゃぶりの雨の中、ぶっ倒れてたからに決まってるだろうが!もう、ナルコレプシーは完治したんじゃなかったのか?

しっかりと抱きしめられたぬくもりは暖かくて、ごしごしとかき乱される頭の痛さは本物で---。

でも、たしかにボクの願いは届いていた。

ここはボクのいた世界ではなくて、もう1人のボクがいる世界だったこと。

2人の前から消えることは叶わなかったけど、でもここにはまだボクの居場所があったこと。

偽りのつかの間の逃げ場所に過ぎない場所だけれども

それでも今はここにいたいとボクは心から思っていた。

 

 

叶わぬ想いは 人魚のように

泡となって消えてしまえばいいと思っていた

けれど今は違うから

たとえ叶わなくてもいい

つかの間の夢を 幻想の世界で過ごせるだけでもいい

いつか笑顔で 心から2人を祝福できるようになる日まで

そのときまではどうかここで幸せな夢を見させてください

それが 永遠に叶うことのない 想いだとしても---

 

-end-