キミのこと信じさせて?(マサ天♀)

--キミを好きだと気づいたのは、キミが霧野さんと仲良くしているのを見てしまってからだった。

俺が霧野さんを追い詰めれば追い詰めるほど、キミは俺のことを「信じる」って言いながらも、霧野さんの心さえも同時に救おうと働きかけてた。

部活が終われば、すぐに気遣うように寄り添って励まして---。

その影の努力があってかどうか知らないけど、月山国光との試合を終えてから霧野さんはずいぶんと俺に対して優しくなったような気がする。

--あの子が俺を”信じてる”って何度も言ったから、信じる気にでもなった?

彼女はあくまで雷門のマネージャーとして、彼女の親戚のお姉さんが昔そうしていたように、選手を健康面だけでなく、精神面でも支えてあげられるようにがんばってただけらしいよ。

けど、その結果が無意識のうちにマネージャーとしての信頼よりも、異性としてアイツらから下心丸出しで見られるようになってるってのに、気づかないバカな女が彼女なんだ。

でもさ…

そんな嘘みたいにマッサラな心を持つバカ正直な女を俺もまた、好きになっていたのもまた事実で---。


※ ※ ※

「ねえ、天馬さん」

「なあに?狩屋」

昼休み。

霧野さんが彼女をお昼に誘いに来ることは想定がついていたので、一足先に彼女を終業のチャイムが鳴ると同時に、屋上へと連れ出す。

今日はいつもより風が冷たく日の当たりもよくないこともあって、幸いにも屋上には人っ子一人いなかった。

俺は小さく震える彼女の隣に座ると、彼女が寒がらないようにとそっと肩を抱きしめてあげた。

一瞬、天馬さんの肩がビクンッと跳ね上がり、俺を見つめる顔が瞬時に赤くなるのを横目で確認して、心の中でほくそ笑む。

恋愛に割と鈍感そうに思える彼女も、あからさまな態度に出られるとさすがに意識するのかな?

ちょっとだけ気分がよくなった。

「ごめんね。こんなところでお昼食べさせちゃって。寒くない?」

「あっ//ううん。平気だよ。だって狩屋が傍にいるからあったかいよ」

(嘘ばっかり。さっきからずっと寒さに震えてるじゃないか。何、やせ我慢してるんだよ。この寒がり女がさ)

「そう?そう言ってくれると助かるよ。なにせ、今日は誰にも邪魔されずにキミと一緒にいたかったからさ」

「そっそうなんだ//」

震える手で目の前のお弁当箱を広げる彼女を見つめ、俺は口ではそうは言ったものの心の中では違うことを考えていた。

--彼女の時々つく嘘はとても優しい嘘。

それに気づいたのは彼女と付き合うようになってから…

とはいえ、まだ本物の恋人になったわけじゃない。

だってまだ、俺は彼女のこと本気で信じてないから。

彼女は霧野さんよりも俺が好きだってハッキリと言い切ったけど、でもそれでもキミは今だって霧野さんだけじゃないほかの奴らにだって、俺に向けるのと同じくらい優しい笑顔を向けてる。

--時々、キミの心を疑っちゃうよ。

今でもさ。

”ねえ?キミは本当に俺だけのモノになってくれたの?”

だから、時々こう彼女に問うんだ。

「ねえ、天馬さん。俺のこと好き?」

「え?うっうん!もちろん!俺、狩屋のこと…マサキのこと大好きだよ//」

(え?…今、なんて)

はじめて聞いた言葉に俺は一瞬、動揺していた。

「あーっやっと見られた。マサキの赤い顔。嬉しいなぁ。はじめてだよ。キミが俺のこと本気で好きなんだなって態度で見せてもらえたの」

「なっ何言ってるんだか。俺は最初から天馬さんのこと本気で--」

「分かってる。それくらい…。でもね。たまにはちゃんと態度で見せてよ。俺に対してもさ、もっと本当のマサキを見せていって」

--だって、そうじゃないと不安で堪らないから。

ぼそりと呟かれた言葉に、俺はハッとなって彼女を見つめていた。

真っ赤になった頬からぽろりと零れ落ちた一滴の涙。

彼女の--天馬の本心を見せつけられた瞬間、俺の中の迷いは消えていた。

「天馬…」

「え?…マサ…んっ//」

そっと彼女の頬を滑る涙を拭って、優しく口付ければ天馬はゆでだこの様に真っ赤になって、それでも嬉しそうに微笑んでくれた。

「これでいい?」

「うっうん//でも、不意打ちは卑怯だよ!今ので頭ん中真っ白になっちゃったじゃないか!せっかくのファーストキスだったのにさ。何も覚えてないよ」

「じゃあ、もう一回してあげよっか?さっきよりも長いの」

「ふえっ//あっいや…俺はそのっにゃっ//」

二度目のキスを交わしながら、俺は彼女の柔らかな髪をそっと片手で梳いていく。

--好きなんだ。

改めて思った。

そして、信じてみようと思った。

彼女の想いの全てを---。

「天馬…俺、キミのことだけは信じてあげてもいいよ。何もかもね」

「うん…俺も…マサキの全てを信じてるよ。最初からね」

「ああ、分かってる」

--そう。最初から分かってたのにね。

キミだけは真っ直ぐに本当の俺を見ていてくれてたこと。

人を信じることができなくなって偽りの自分を前にだして、本当の自分を押し隠して生きてた俺を、キミだけはちゃんと受け止めてくれていた。

ずっと信じて、ただ待っていてくれていた。

俺が変わっていくことを---。

だから、俺はそんなキミを好きになれたんだよ。

天馬---。

-end-