いつもの時間、いつもの場所で(輝<=>天♀)

※輝と天馬の出会い話、捏造その2。今回はバス通学設定にしてみた。

いつもの時間、いつもの場所でキミに会えるのが嬉しくて、僕は早起きをするようになった。
だってキミはいつも僕が乗る時間より1本早いバスで行ってしまうから…

あの時、いつもより早い時間にあのバスに乗っていなかったら、僕はキミに会うこともなかったのにね。

僕はふとそんな運命的な出会いに気持ちのぼせ上がりながら、今日もまたいつもより30分早く家を出て、部活でもなんでもないのに早く学校へと向かうため、バス停に立つんだ。
キミが乗ってくるバスに乗りたいがために---。

※ ※ ※

雷門中を経由するバスが僕が待つバス停前へと到着するとすぐに、僕は人の少ないバスへと乗り込む。
いつもと同じ斜め前の席にキミがいる。
僕はまだまばらな乗客の間を縫ってキミの近くへ移動する。
そして、そっとキミを盗み見るようにして、いつも決まって数歩後ろに立つんだ。
さすがに彼女の隣に立つ勇気はまだなくて、僕はいつだって外を見つめる振りをしながら時々、文庫本を熱心に熟読しているキミの斜め横顔をそっと盗み見るだけで精一杯。
今日もそのつもりでいたんだけど、その日は僕の指定席とも言える場所が他の乗客の人が固まって立っていて、僕は迷いながらも勇気を出して彼女の間隣になる位置の吊り輪へと手を掛けて立ち止まった。
(うわぁ〜…こんな近くで彼女を見下ろすことになるなんて。自分でとった行動とはいえ、ちょっと緊張するなぁ)
いつも離れたところでチラチラと見ていただけの彼女。
他校からの転校生らしく、彼女は雷門中の制服ではないセーラー服をいつも着用していた。
彼女は僕が隣に立ったとき、一瞬僕の方を見上げてきたような気がしたけど、気のせいだったのだろう。
僕が彼女の視線に気づき、視線を落としたときには彼女は黙々と目の前の文庫本…いや、コミックスへと目を落としていたのだから---。
(ずっと文庫本だと思っていたけど、漫画読んでたんだ。それも少年漫画の単行本だ。意外だなぁ…しかも、これ僕も持ってて好きな話のヤツだ)
おもわず、彼女が読んでいた漫画へと目を向けていた。
彼女は僕の視線に気づいたのだろうか?
急に読んでいた漫画をパタンと閉じると、鞄の中へと押し込み、代わりに参考書を一冊取り出して、そっちを読み始めた。
(あわわっ!もしかして、僕が盗み見てたせい?どうしよう…嫌われたかな?)
おもわず、謝ろうかとも思いもしたが、会話もしたことのない相手である。
下手に謝って、それこそ盗み見ていたと公言するような真似をして墓穴を掘るのもどうかと思う。
そんなことにでもなったら、きっと僕は明日からこのバスに乗り合わせることすらできないだろう。
僕はあまりの気まずさに場所でも変えようかと、空いてる席を探していたときだ。
ふと彼女が読んでる参考書が逆さまなことに気づき、ついうっかりと「あれ?その本逆さま」と心の中での呟きのつもりが、そのまま口にしてしまっていたようだ。
慌てて口を噤むももう遅い。
彼女はハッとなって顔を上げると、顔を真っ赤にして僕を見上げると「ふにゃあっ///はっ恥ずかしい」と言って、慌てて参考書を元の向きに戻す。
「あっいや!ごっごめんね!!変なこといっちゃって」
「え?あっううん。教えてくれてありがとう…えと、そのっ…キミも雷門中?」
「え?うん…そうだけど。キミも?」
「うん。1ヶ月前に転校してきたばかりだけどね」
「そうなんだ」

その日。
小さなきっかけが僕と彼女の距離を一気に縮めた。
彼女は実は前々から、僕と話をしてみたかったという。
「だって、キミのことはじめて見た時から気になってたから」
「え?ウソ。それ、僕もなんだ」
「ふぇっ…本当?」
そして互いに同じ思いを抱えていたこともそこから知った。

それからだ。
僕と彼女の関係が変わったのは---。
「おはよう!輝。今日も席とっといたよ。一緒に座ろう」
「うん。ありがとう天馬さん」

--あの日を境に僕は彼女と友達になった。
ずっと話したかった女の子とまさかこうして隣り合わせに並んで、通学できるようになるなんてね。
僕は今日もいつもの時間、いつもの場所で彼女に出会い、学校へ着くまでのわずかな時間を彼女と一緒に楽しく過ごす。
クラスは違うし、住んでる場所も遠い。
だけどね。
毎日、決まった時間、決まった場所でキミに会えるこの瞬間が僕は好きだよ。
だって、この時だけはキミは僕の隣にいてくれるんだから---。

いつもの時間、いつもの場所で…
今日も僕はキミに会うために学校へ行く。

-end-