ねえ、瞳逸らさないで(雨天♀+優京)
※剣城兄弟と天馬♀が幼なじみ前提でのお話を1つ。
いちおう優一と天馬♀の間に恋心は生まれてませんってことでの太陽くん誤解もの。
天馬♀と太陽がお付き合いはじめてまもない頃の話となってます。
------------------------------------
(また、あの人と一緒にいる)
付き合う前から分かっていたこととはいえ、やはり恋人という地位を手に入れたから故の欲だろう。
彼女が自分以外の男と仲良くしているのを見るのは辛い。
今日も天馬は僕の見舞いに顔を出す前に、あの人のために車椅子を押して中庭の散歩をしている。
隣には彼の弟の剣城京介くんが立っていて、なんだか3人とても楽しそうだ。
(彼ら兄弟と天馬は幼なじみだって、以前天馬が話してくれたけど…)
早くこっちへ来てくれないだろうか?
キミが貸してくれた本の感想とか、昨日の幻影学園の試合のこととか聞きたいんだけどな。
ぼんやりと四角く切り取られた世界を見下ろしながら、僕はふとベッド脇の小机の上に置いてあったノートに目を止める。
それは、僕と天馬がつい最近はじめたばかりの交換日記。
僕は言いことを思いついたとばかりに、ノートの最後のページを開くとそこにシャープペンで走り書きをすると、そのページを破り取ると小さい頃よく作っていた紙飛行機にして、開け放された窓から階下にいる彼女めがけてそれを飛ばした。
紙飛行機は上手い具合に向かい風に乗り、僕からのメッセージを伝えに天馬めがけて飛んでいく。
ふわりふわりと緩やかに降下したそれは---
「あたっ」
見事に天馬の後頭部に命中した。
「どうした?松風」
「…紙飛行機か。病室の子供が飛ばしたのかな?」
「………どうやら違うみたい」
「「え?」」
小さな悪戯を仕掛けた子供みたいに、僕は天馬がこちらに気づいたらしい視線を感じ、慌てて身を隠し、くすりと笑った。
まもなくして開け放された窓の外から、彼女が僕を呼ぶ声が聞こえる。
「こらー!太陽!!聞こえてるんだろぉ!!隠れてないで顔をだせー!!」
「太陽?太陽って…たしか天馬ちゃんの友達っていう」
「正確には恋人の太陽だけどねー!」
剣城くんのお兄さんの言葉におもわず訂正の意を唱えてしまわずにはいられない。
ひょこっと僕が顔を出して、階下へ向かってそう叫ぶと同時に、顔を真っ赤にした天馬が「バカッ!そんな大きな声で言うなー!!」と手を大きく左右に振って「黙れ」とジェスチャーで訴えているのが見える。
どうやら、紙飛行機のメッセージに気づいた後のようだ。
さらに愉快なことに、隣では天馬に気があるらしい剣城くんが明らかに不機嫌極まりない顔で、僕を睨みつけているようでそれがまた面白くてたまらない。
僕は湧き出す感情を抑えきれずに声をあげて笑いながら、天馬に「早く上がっておいで」と呼びかけた。
「そうしないと、僕の血圧上昇して倒れちゃうかもよ」
「んもぉっ!病人なら病人らしくしてろっての!」
呆れた風に文句を飛ばしながらも、それでも天馬は2人に別れを告げて僕の視界から姿を消した。
きっと今頃、夢中になって階段登って看護士さんに見つかって怒られてる頃かもね。
僕の予想は大方当たっていて、病室へと入ってきた天馬の第一声が「冬花さんに見つかって怒られたー!」だもんな。
「太陽のせいだかんね」
「いいよ。僕のせいにしてくれても。だって、それって天馬が僕を心配して走ってくれたから怒られたってことになるからね。僕はそれだけでも十分幸せだよ」
「……///バカ」
ギュッと握り締められたままのくしゃくしゃになった紙飛行機を見つめ、僕はおもわずまたフッと笑みがこぼれてしまう。
「ねえ、天馬。僕の嫉妬ちゃんと届いた?」
「届くもなにも、京介と優兄に嫉妬する太陽が間違ってるだけだってば!」
--彼ら兄弟は俺にとってはただの幼なじみでそれ以外の何者でもないんだよ。
そっと僕の手を握って天馬は照れくさそうに小さな声でこう呟いた。
「俺が好きなのは寝ても冷めても太陽…おまえだけなんだからな」
「そう?だったらさ」
スッと天馬との距離をゼロにして僕は天馬の腰を優しく引き寄せ、彼女の柔らかな唇へと触れながら囁いた。
「お願いだから、僕からその綺麗な瞳…逸らさないでよ。ずっと」
--僕だけを映してて。
「言われなくても、俺はずっと太陽だけを見ているつもりなんだけどな」
ほんのりと色づく頬をそのままに、今度は天馬から僕へと優しいキスを返してくれる。
「好きだよ…太陽。ずっとずっと…俺の心をあったかく照らすのはおまえだけだ」
--だから、お願いだから。
早く元気になって、ずっと傍にいてくれる存在になってよね。
俺が他の男にとられないようにさ。
フッと笑みを浮かべる天馬の長い髪を外から舞い込んできた優しい風が撫でていく。
僕はそんな幻想的な彼女のシルエットに小さく頷いて見せるのであった。
--約束するよ。
必ず、元気になってこの小さな部屋から飛び立ってみせると。
そしてキミという青空を照らす太陽として、キミの傍から離れないとね。
-end-
|