ずっと一緒、これからも(雪天♀吹)

「雪村〜!吹雪さん〜!うわっとと!」
慣れない草履に足をとられ、木枯らし荘を一歩でて早々に転びそうになる。

「おっと!セーフ」
「ふにゃっ//ふっ吹雪さん。すみません!ありがとうございます」
「ったく!着物着てる時くらいは、おしとやかにしてろよな?」
「……えっ?あっうん。気をつける」

でも、寸でのところで吹雪さんが俺のこと抱きとめてくれたので、転ばずにすんだようだ。
フッと体が浮く感じを覚え、振り返れば、そこには笑顔で俺を抱き上げる吹雪さん。
俺は彼と目が合った瞬間に、一気に赤くなった顔を隠すのに精一杯で、その後の雪村の小言が一瞬だけどっか遠くへいってしまったくらいだ。
困ったようにもぞもぞしていると、すぐに吹雪さんは俺を下ろしてくれて、雪村へと押しつける。

「慣れない着物だものね。歩きづらいだろうし、雪村にでも手を繋いでもらうといいよ」
「「えっ//あっえと…」」
「アハハ。2人とも顔真っ赤。可愛いなあ」
「「ふっ吹雪さん!!」」
「あれ?そんなに恥ずかしがることじゃないだろう?雪村も天馬ちゃんも…でも、どうしてもっていうなら、雪村」
「はい?」

クスクスと笑いながら、ひょいっと吹雪さんが俺の手をさりげなく引き上げたかと思うと、そのまま俺を自分の方へと引き寄せる。

「ふぇっ//」
「んなっ?!」
「僕が彼女をエスコートしちゃうからね」
「えっ?あっちょっ」

当然、俺も雪村もびっくりして慌てふためく。
しかし、吹雪さんはその光景が面白いのか、相変わらず笑みを浮かべたままで、俺の手を握ったまま、ちょっと不機嫌そうな顔をして吹雪さんを睨みつけている雪村にさらりと悪意のない言葉を返すだけ。

「ほらっ行くよ。早くしないと参拝客でごった返しちゃうだろ?ましてや、僕たちはあまりこの辺の地理は詳しくないんだからさ。急ぐよ」
「あっちょっと!吹雪先輩!!」

車のキーを上着のポケットから取り出すと、吹雪さんは木枯らし荘の前に止めてあったレンタカーの前へと俺を連れて行き、後部座席のドアを開けてくれた。

「どうぞ。お姫様。特等席です」
「うにゃっ//わわっ!ご丁寧にありがとうございます」

俺が乗り込みやすいようにそっと手をとり、座席へと誘導してくれる吹雪さん。
その前では雪村が完全に不貞腐れて、勝手に助手席へと乗り込む姿が吹雪さんの肩越しにちらりと見えたりするのであった。

※ ※ ※

「うわあ〜…やっぱり都会の初詣は人ごみが違うよねぇ」
「凄いな…」
「この調子だといつお参りできるか分かりませんね」
「まあ、気長に行こうよ。って…へえ」

車を降り、神社の境内へと続く道へ向かって歩き出してすぐに、人の波に捕まってしまう。
長い階段の先は、長蛇の列で下手にボーットしてたら、波に飲まれてはぐれてしまいそうな勢いだ。
俺はおもわず、自然と雪村へと手を伸ばし、彼もまたそれに気づいてくれたのか、そっと握り返してくれる。
それを俺の隣で見守っていたらしい吹雪さんが、おもわずといった感じで笑みをこぼし、雪村に訝しがられたところだ。

「なっ//なんですか?」
「いや、行きの時と違って、今回は最初から2人仲良くしっかりと手を繋いでるからさ。やっと恋人らしくなったなっておもわず嬉しくなっちゃってさ」
「「だっだって…迷子に(なられたら)なったら困るから//」」

吹雪さんの言葉におもわず、照れ隠しから俺たちは同時に、言い訳めいた言葉を同時に放つ。
吹雪さんはその言葉のユニゾン具合がますますツボをついたのか、それからしばらくのろのろと進む列の中、1人愉快そうに声を押し殺して笑い続けるのであった。
それに反して俺と雪村はますます顔を赤くして、互いをまともに見られない状況になっていっているとも知らずに、ひどい人だ。まったく。

※ ※ ※

長い長い列の前が次第と減っていき、ようやく俺たちの番が回ってきたようだ。

「天馬…大丈夫か?」
「うん。ちょっと足痛くなったけど、平気」
「帰りは空いてるからすぐに戻れるから、もう少し我慢してね」
「はい。お気遣いありがとうございます」

2人を間に挟んで、それぞれお賽銭を投げ入れ、両手を合わせる。
目を閉じ、真剣に願い事を神様に伝える中、俺はふと2人が何をお願いしているのか、気になり左右を横目でちらちらと盗み見る。

「なんだよ。そわそわしてさ」
「えっ?そっそんなことないよぉ〜。あっ甘酒配ってるよ!貰ってこよう」
「さしずめ、雪村が何をお願いしたか、気にしてるってとこかなあ?」
「うっ…そっそんなことないですよ!」

参拝を無事に終え、巫女さんからいただいた甘酒を冷えた両手で包み込みながら、飲んでいると、俺の心を盗み見たかのような口調で吹雪さんが、雪村に余計なことを教えているではないか。
慌てて、否定の声を漏らすも、時すでに遅し。
雪村は我が意を得たりって感じで、満足げに笑みをこぼしながら、吹雪さんと一緒になって俺を笑った。

「どうせそんなとこだろうとは思ってたけどさ、今の吹雪先輩への反応で確定だな。ホンット、アンタってさ子供だよなぁ。人のお願い事が気になるなんてさ」
「そっそういう雪村は気にならないのかよぉ!!俺が何をお願いしたかとか」
「え?聞かなくても分かるよ。どうせ、雷門のホーリーロード優勝だろ?」
「う…」

物の見事に図星だったゆえ、声にならない声をあげてしまった。
それを見て吹雪さんがますます面白がって笑い出す。

「アハハ!本当に君たちは仲いいよね。見ていて飽きないよ。そのやりとり」
「ふっ吹雪さん!ひどいですよ!!」
「ごめんごめん。でも、天馬ちゃん。僕が思うに願い事はそれだけじゃないんでしょ?お賽銭、けっこう奮発してたもんね。たしか500円投げてたよね?」
「え?ご…500円??」
「ああ、そういやそうだったな。ずいぶんと気合入ってるなぁって俺も思ってたんだよ。普通、ご縁にかけて5円とかだよな。なのに5は5でも0を2つもサービスした500円。相当の欲張ってるように見えたぞ」
「う…俺、100円入れたつもりだったんだけど…。お願い事、3つほどしたかったし…なのに、まさか500円の方いれてたなんて!」
「「え?」」

おもわず、「もう1回お願いしなおすー!」と言って後戻りしようとした俺を、吹雪さんと雪村が全力で止めて連れ帰ったのはいうまでもないことだろうか。

「ううっ…なけなしの500円〜」
「まあ、そんだけ金いれてやったんだしさ、おまえのその3つの願い。全部叶うんじゃね?」
「うー…だといいなぁ。でも、そのうちの1つは雪村次第だからなぁ」
「え?何が??」
「あっなんでもない!気にするな!!」
「変な奴」

帰りの車の中、今度は雪村も俺と一緒に後部座席に座ってくれて、3人楽しく談笑しながら帰っていったんだけど、その時おもわずぼそりと呟いてしまった3つめのお願い。
うまい具合に雪村には届かなかったみたいだけど、きっと叶えてくれるよね?
だって、500円もはたいたんだからさ。

--神様、お願いです。この先もずっと一緒に雪村と手を繋いで年をとっていけますように。

それは長い長い未来へ続くお願い事。
500円じゃ足りないくらいかな?

-end-