キミにただ逢いたくて(雪天♀)
--遠くにいても、いつだって繋がっているから。
その言葉が、ただただ今は寂しさに折れそうな自身を支え続けていたってのに…
--彼と付き合い始めて半年。
直接会って話したのは数える程度。
明日は、恋人たちの聖なる夜とか言われてるクリスマスイヴ。
今まではそんなこと一度も気にもしなかったってのに、なんでだろう?
こんな気持ちになるなんて…
辛いよ
苦しいよ
逢いたいよ
話がしたいよ
ねえ…
「雪村…寂しいよ」
ぼそりと今や毎晩欠かさず交わしている電話口でのやりとりで俺は、つい言ってはいけない弱音を吐いてしまっていた。
《天馬…》
「ごめん…今の聞かなかったことにして。それじゃあ、近いうちにクリスマスプレゼント送っておくから!じゃあ」
《あっおい!天っ》
雪村の言葉を途中で遮る形で一方的に通話ボタンを切る。
そのまま電源を落としてから携帯をベッドの上に投げ捨てた。
「逢いたいって言ったところで、そう簡単に逢える距離じゃないのにね。俺、何言ってんだろ」
--分かりきったことなのにさ。
今にも涙がでそうになり、俺はギュッと強く唇を噛み締めると、再び机の上に置いてあった作りかけのマスコット人形へと手をかけるのであった。
※ ※ ※
翌朝。
俺は昨日、人形を作ってる途中でそのまま迂闊にも寝てしまったらしく、寝冷えをしてしまったようだった。
朝起きると同時に、背筋に異様なまでの寒気を感じる。
気持ち気分も悪い。
「少し寝よう…」
今日から部活も休みだし、イヴにこれといった予定もいれてなかった俺は雪村へ送る予定のクリスマスプレゼントを用意しておいた箱へと詰めるだけ詰めると、そのまま倒れこむようにして、ベッドの中へと潜り込んでいた。
それから半刻ほど経ってから、なかなか起きてこない俺を心配して秋姉が俺の部屋へと上がってきた頃には、俺は完全に風邪の症状を悪化させてしまっていた後だった。
「38度。これじゃあ、葵ちゃんのお誘いには答えられないわね」
「え?葵?葵がどうかしたの?」
「うん。今さっきね、葵ちゃんがウチへ来て、天馬にクリスマスパーティーの招待状を置いていったのよ。なんか準備に急いでる感じで、私に「渡しておいてくれ」って言って、そのまま信助くんと大きな袋抱えて、帰ってっちゃったわ」
「そうなんだ」
「いいわ。私から、葵ちゃんには話しておいてあげる。残念だけど仕方ないわよね」
「うん…」
--薬持って来るわね。
そういって葵が置いていったという招待状を俺の枕元へと置くと、秋姉はいそいそと部屋を出て行った。
「…会場がサッカー部のミーティングルームになってる。ってことは、サッカー部みんなで集まってパーティーするつもりだったのかな?」
ふと雪村とはじめて会った日のことを思い出す。
「はあ…俺、なんで雷門イレブンの誰かとじゃなくて、雪村を好きになっちゃったんだろ」
--他校じゃなかったら、こんなに寂しい思いで苦しんだり、不安になる必要なんてなかっただろうに…
「雪村のバカ…」
俺は招待状をスイッと指先で弾き飛ばすと、ガバッと布団を頭から被って秋姉が戻ってくるまで、1人行き場のない感情と熱から来る苦しさからワケも分からずイライラするのであった。
--まさか、その招待状の裏に葵からのとっておきの伝言が記されていたなんて、気づくこともないままに…
「んー微熱程度まで下がったわね。ご飯、食べられそう?」
「うん。少しなら入りそう」
「分かった。じゃあ、お粥作ってきてあげるね」
「ありがとう。秋姉」
「あーそれと、葵ちゃんが天馬の体調が少しでも良くなったら、お見舞いに行ってもいいか?って言ってきたんだけど」
「ああ、別にいいよ。葵だけなら問題ないし」
「そう。分かった。じゃあ、伝えておくわね」
「うん」
まる1日、薬を飲んでぐっすりと寝たおかげもあってか、夕方には俺の熱はすっかり下がり、食欲も戻ってきていた。
俺は秋姉が部屋を出ると同時にベッドから這い出すと、昨日の夜から電源を切ったままになっていた携帯へと手を伸ばしていた。
「雪村の奴、怒ってるかな?」
携帯の電源を入れなおしながら、俺は彼からのメールなり着信履歴なり入ってるのだろうかと、ディスプレイが待ち受け画面へ切り替わるのをドキドキしながら待っていた。
「……とりあえず、1回だけ掛けてくれた履歴はあるけど、繋がらなくてあっさりと諦めたってとこか。意外と冷たい奴だな…アイツ」
すぐさま調べた着歴とメール受信。
着歴には雪村のほかに葵から何回か掛けた形跡が入っていた。
たぶん、例のパーティーの件だったのだろう。
メールも何通か入っていたが、届いていたのは葵からのパーティーの案内メール。
その後、秋姉から俺が風邪で寝込んだことを知らされてからのお見舞いメール。
これは他にも、葵のお節介で知らされたと思われる雷門イレブンのみんなからのも届いていた。
けど、そこには雪村の名前だけがなくて---。
「急に彼女が着信拒否ったんだぞ!ちょっとは心配してメールの1つでも打てっての!」
ちょっぴり悲しくなりながらも、俺は階下からの秋姉の呼び声に、すぐさま携帯を閉じ、パタパタとスリッパの音を響かせ、部屋を出て行くのであった。
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