「おめでとうございます!雨の日記念日。本日、100人目ご来店のお客様には、こちらの割引券にプラスいたしまして、当店予約必死の特大パフェを進呈致します。よろしかったらお2人で仲良くどうぞ」
「うわあ〜!ありがとうございます!ねっねっ!見て下さいよ〜!蘭丸さん!!特大ですよ〜!イチゴにバナナに生クリームたっぷりでポッキーも!ふにゃあ〜//おいしそう」
「それではごゆっくりどうぞ」

偶然、天馬に引っ張られて入った喫茶店で、適当に軽食をとろうと注文を出し、頼んだ品が届くまで天馬と談笑していると、頼んでもいない特大パフェが俺たちの前へと置かれる。
何事かと思っていたら、雨の日記念で毎回やってる100人目の客限定の特別サービスだそうだ。
本当、今日は雨様様だな。
相合傘とか天馬の可愛い一面とか、とどめはこの特大パフェと天馬の幸せそうな笑顔だ。

「蘭丸さんも食べましょうよ〜。こんなの俺1人じゃ片付けられませんて」
「あーでも、俺そこまで甘党じゃないしな」
「むぅ〜…じゃあ、せっかくあーんしてあげようと思ったけど、やめときます」
「え?あーちょっと待った!分かった!半分は無理だけど、少しは手伝うから!な?だから、天馬〜」
「じゃあ、蘭丸さん。あーんしてください」

その上、普段なら恥ずかしがって決してしない、恋人らしい行為も、雨の日で周りに客も少ないせいか、恥ずかしがらずにしてくれる彼女が目の前にいる特典つきだ。
向かい合って座ったテーブルに片手をつきながら、スプーンを差し出し可愛らしく口を開けながら、俺へとパフェを食べさせようとする天馬を写メに納められるなら、撮っておきたいという衝動を抑えつつ、俺は天馬と交互にパフェの食べさせあいっこをしながら、文字通りの甘い時間を過ごしていくのであった。

※ ※ ※

「雨…上がりましたね」

喫茶店を出て、近くのゲーセンで天馬がやりたいという対戦ゲームと、天馬が物欲しそうにみていたキャッチャーのぬいぐるみを取ってやったりと、バカみたいに遊んでいるうちにアッという間に時は流れ、外は朝からの曇天の暗がりとは違う意味で、真っ暗になっていた。
雨は上がったらしく、夜空には満天の星と綺麗な三日月が浮かび上がっていた。
最寄り駅を出て、天馬を木枯らし荘まで送っていく最中、彼女が軽く身震いしたことに気づき、俺は着ていた上着をそっと羽織らせてやる。

「あっ…」
「寒いんだろ?無理すんな」
「でも…そうしたら蘭丸さんが」
「俺はいいよ。丈夫だから」
「でも、風引いたら困ります!」
「うわっと!」
「こうして帰れば2人とも寒くないですよ」
「だからって、不意打ちはないだろう」
「えへへ。たまには俺からもアリです」

2人で1つの上着を羽織ってしっかりと体を寄せ合って、残り少ない時間を家路へと向かって歩いていく。
彼女の温もりは俺の体温よりも気持ち高くて、あったかくて柔らかかった。
できることなら、ずっとこうしていたいけど、まだ俺たちは子供だからそうもいかなくて…
「今日は楽しかったです。ありがとうございました」

木枯らし荘の看板が目に見えてきたとき、天馬がスッと俺から離れるのを感じた。
名残惜しそうに伸ばした手は、天馬をつかめずそのまま下ろされた。

「ああ、俺も楽しかったよ。初デート早々、雨だった割にはけっこうついてたよな?」
「はい!俺もそう思います!それに…」
「天馬?」
「あれ?ごめんなさい…俺、嬉しいはずなのに、楽しかったはずなのに、なんでだろ?涙が止まらない」

別れ際。
急に泣き出した彼女を見て、俺はびっくりして天馬を腕に抱き寄せる。
同時に激しく声を上げて泣き出す天馬。

「これっきりじゃないですよね?俺たち、これからも何度も何度もこうして楽しい日々繰り返せますよね?これ、夢じゃないですよね?本当ですよね?」
「ああ、本物だ。その証拠にさ…目、閉じてくれないか?」
「こう…です…ふぁ//」

そっと彼女の濡れた唇へと、自信の唇を軽く押し当てるだけのキスを天馬へとする。
天馬が夢から醒めないようにと魔法をかけて---。

「どうだ?夢じゃ感じられない感触あっただろ?」
「ふぇ…はい//ありました」
「もし、また必要になったらいつでも言えよ。いくらでもしてやっから。永遠に醒めない夢を見させてやる」

--だから、もう泣くな。

そういって瞳の淵に溢れる涙を拭ってやれば、天馬は小さく頷き笑顔を浮かべてみせた。

「それじゃあ、おやすみなさい。蘭丸さん。今度…今度は晴れた日に、デートしたいですね」
「ああ、そうだな。俺も次こそは晴れること信じてるよ」

俺の言葉に最後にもう一度、小さく笑みを返し、今度こそ天馬は元気よく木枯らし荘へと帰っていったようだ。
彼女の帰りを待ちぼうけていたと思われる愛犬が、吠え立てる声が背を向けて歩き出した俺の耳にはっきりと響いてくる。

--雨の日の魔法か。

天馬が去り際にぼそりと俺に呟いた言葉。
それは雨の日じゃないと見つけられない恋人たちの時間だと、天馬は言う。
だからこそ、今度は晴れた日にだけ見つけられることを2人で見て行きたい、感じたいと言っていた。

「俺もそう思うよ」

夜空を見上げれば、流れ星が1つスッと瞬く間に消え去っていく。
だけど、俺と天馬の関係はこの先も変わらず、消えないでいてほしい。

--これっきりにはしないからな…天馬。

俺の小さな誓いは今流れた星に乗って、彼女へと届いただろうか?
大切な…キミへと。

-end-