雪[村くん]の女王様(雪天♀←蘭+拓)

稲妻町行きの電車に乗りながら、俺はあの日以来一度も会うことのできなかった彼女へとメールを打っている。

「もしかして、天馬ちゃんへのメールかい?」
「うぇっ…ふっ吹雪先輩//いきなし、覗き込まないでくださいよ。びっくりするじゃないですか」

打ち掛けの途中でうっかりと送信ボタンを押してしまった。
慌てて、送信を中止させようとしても、もう後の祭りだ。

「あーっもおっ!先輩のせいで、打ち掛けのまま送っちゃったじゃないですか!」
「あ〜ごめんごめん!」
「まあ、そっち行くってことは前もって伝えてあったし、今の途中送信の文面だけでも通じるとは思うんでいいんですけど」

パチンと携帯を閉じ、俺は目的地の駅の先で待っているであろう彼女を思い、胸を高鳴らせる。

(天馬…早く会いたいな)

早く会って抱きしめたい。
そして彼女の笑顔を見たいと思っていた。
けど---。

※ ※ ※

「…おい」
「何?雪村」
「なんで雷門イレブンのご一行様まで一緒に出迎えてくれてるんだよ!あ?これはなにか?俺への嫌がらせか?」

稲妻町へ着き、吹雪先輩と駅の改札口を出ると同時に、見つけた天馬の姿。
俺は数ヶ月ぶりの再会を喜び、駆け寄ってきてくれた天馬に、当然のように両手を差し伸べ抱きとめる準備をしていた。
天馬も天馬で、今日に関しては素直に恋人として甘えようと思ってたのか、とくに恥ずかしがる様子も見せずに、吹雪先輩が見ている目の前で、俺の胸の中へと飛び込もうと両手を広げて駆け寄ってくる。
そこまでは良かった。

「はい!そこまでな」
「ふにゃっ」
「えっ?」

どこから現れたのか、一本の腕が天馬が俺の胸に飛び込む寸前で伸びてきて、ぐいっと俺と天馬を引き離した。
いや、それどころか俺が腕に抱くはずの天馬をひしと背中から抱きしめやがったんですけど…。

「にゃあっ//きっ霧野先輩!あっあの!離してください〜!」
「ダーメ!離したら天馬、アイツんとこダイブしちゃうから。ここでステイなぁ」
「うにゅ〜」

まるで犬でも躾けてるような態度で、あのピンク髪のDF…霧野は、俺の恋人天馬の頭をわしゃわしゃと撫でつけながら、しまいにゃ頬擦りまでしやがったんですけども…。
呆気にとられ、呆然とする俺を挑発するかのような目で見つめながら、天馬をしっかり抱いて離そうとしない。

「おいっ霧野!いい加減、天馬を離してやれ。すっかりゆでだこになってしまっているぞ。大丈夫か?天馬」
「ふにぃ〜…キャッキャプテン。ありがとうございまっ…うひゃあ//」
「あっ…」

そこへ物分りのいい、雷門のキャプテンさんが天馬を霧野から解放してくれたと、ホッと一息とおもいきや、アンタもアンタかよ!
天馬の頭を撫でつつ、さりげに天馬を抱き寄せる。
そして、ここで俺はようやく彼らの意図を理解することになる。

(もしかして、こいつら。俺と天馬が付き合ってること知った上での妨害か?)

俺の心の声でも聞こえたのかどうかは分からないが、2人が同時に俺を睨みつけ、しっかりと天馬の両サイドをガードして彼女を俺に近寄らせないように、両腕をサイドから掴んでみせた。

(う…マジかよ。厄介な奴らだなぁ)

--まあ、その後。

俺の唯一の味方である吹雪先輩がうまく間を取り持ってくれて、天馬は無事に俺の元へと渡されたわけだが---。

「アンタさ、ちゃんとアイツらに言ったのかよ?俺がアンタの恋人になったってこと」
「ん?まっまあ//いちお…ほらっ!あの時、俺なかなか帰ってこなかったじゃん。みんな、そのこと心配してくれててさ。まあ、問い詰められて〜。その上、吹雪さんが雪村とのこと全部話してくれちゃったから、俺何も言わなくてもみーんなにその日のうちに知られちゃったんだよねぇ」
「じゃあ、なんでアイツらはこれ見よがしに俺の前でアンタにハグしたりするんだよ!おかしいだろ?カレシのいる前で!」

とくにあの霧野…。
俺は今こそおとなしく俺たちの後をついてきている霧野へと目を向けながら、天馬へと小声で囁く。
それに対して天馬もまた、困ったように肩を竦め、俺の耳元へと顔を近づけて、そっと彼らに聞こえないくらいの小声で一言。

「それがさ…認めないって」
「はあ?」
「だ〜か〜ら〜!霧野先輩、はじめ雷門イレブンの皆さんは俺と雪村の交際を認めないって…」

おもわず、俺は足を止め、後方から物凄い殺気を放って俺と睨みつけていた彼らへと振り返っていた。

「あっ!ちょっ…雪村!おまえ、気づいてないだろうけど化身っ!化身でそうになってる!女王様でそうになってる〜!!」
「そりゃ、出そうにもなるだろ!あっち見てみろよ!向こうなんて化身2体も見えるぞ!一体、アンタあいつらに何したんだよ!なんで、そんなに愛されちゃってるんだよ!」
「にゃっ//バッバカ!変なこと言うなっての!ごっ誤解だ!誤解に決まってる!そっそもそもだな。おっ俺は…おっおまえに愛されてるだけで充分…だっての//」
「天馬…。それ、アイツらの目の前で言ってやってくれないか?」
「にゃあっ//バカッ!んな恥ずかしい台詞言える訳ないだろ!おっおまえに直接囁くだけで精一杯だったってのに…」

ボッと顔から火がでそうなくらいに真っ赤になりながら、天馬はキュッと俺の手を両手で握り締めてきた。

<<あああああっ!!>>

後方で物凄い嫉妬のオーラが飛んできたが、もう気にならない領域まで来た気分だ。

「天馬…」
「ふにゃっ//ゆっ雪村?」

せっかく天馬がデレてることだし、このまま場の空気に任せてみようかとおもわず思った瞬間、俺はそっと天馬を自身の胸の中へと引き寄せ、そして彼女の頬へと手を添えていた。

「天馬…」

そっと顔を近づけ、彼女の淡く色づいた桜色の唇へとキスをする。

「だめえぇぇぇっ!!」

--バチン!

「ってえ!!」

一瞬、何が起こったのかとマジで思った。
てっきり、俺は雷門の誰かが俺と天馬のキスの邪魔をしてきたのかとさえ思った。
…が、実際は違かった。
手を上げたのはキスをされそうになっていた天馬本人。
後方で「ざまあみろ」と俺を嘲笑する雷門の皆さんがいたりするが、知ったこっちゃない。
俺は痛む頬を擦りながら、天馬を見下ろすと「アンタなぁ〜」と静かな怒りを煮えたぎらせる。

「俺はアンタの恋人じゃなかったのかよ!」
「だっだって!おまえが悪いんじゃないか!みっみんなの見てる前で、そっそんなことしようとするから!」
「あぁ?そんなことってなんだよ!アンタってさ、性格男な割にこういうことになると100%臆病になるんだな!」
「うっうるさい!いっいいだろ!別に!!」

プイッとむくれてそっぽを向いてしまう天馬もまた、可愛い。
などと、俺がデレてる場合じゃないんだが---。
後方では「このまま別れてしまえ」といわんばかりのオーラで俺と天馬が仲違いしている光景を楽しんでる雷門イレブン。
隣では唯一の味方でありながら、大事なとこでフォローすらしてくれないで、苦笑するだけの吹雪先輩。

(ああ…俺、とんでもない子好きになっちゃったみたいだなぁ)

おもわずため息を1つつき、次の策を考えるために黙り込めば、なぜか俺をしきりに気にしだす天馬。
そわそわしながら、それでも素直に謝れないのか、相変わらず俺から僅かに視線を逸らしたまま、時々横目で俺を見つめてくる。

(くそっやっぱり、可愛すぎるよ。アンタって女はさ)

結局、俺から天馬へと手を差し伸べてしまう。

「ほらっ!木枯らし荘…連れてってくれるんだろ?俺と吹雪先輩」
「雪村…//うっうん!」

俺が怒ってないことに安心したのか、満面の笑みで俺にしがみつき、天馬は「ほらっ吹雪さんも早く!」とコロッと機嫌を良くして先輩に呼びかけ、自分は俺の腕を引いて元気よく歩き出す始末。
その後をまた不機嫌モード全開で、気が済むまで追いかけてくる雷門の皆さん。
俺はこの先、北海道に帰るまでに後どれくらいの嫉妬のオーラを浴び、天馬の気まぐれに付き合わなくてはならないのだろうか。
おもわず、つきないため息の嵐。
でも…
それでも、この俺だけの女王様に従ってしまうのはやっぱり、俺がアンタに首ったけってことなんだよな。

(けどさ…いつか、その女王様を従えさせてやるよ。必ずな)

--俺しか愛せないほどに、夢中にさせてやるからな。

俺の女王様。

-end-