たまには…(蘭天♀+拓)
「てーんま!」
「うひゃっ//」
「可愛い〜わんこわんこ〜」
何の前触れもなく、いきなり天馬の背後から抱きつく幼なじみ。
毎度のこととはいえ、やはりいきなり抱きつかれれば驚くのも当然だ。
彼女は大きくびくっと肩を震わせると、反射的に逃げようと手足をばたつかせるも、すぐに諦めたようにおとなしくなった。
俺はその光景を目の前にし、おもわず何回目かと言えるため息をついた。
--また、霧野の人目を気にしないスキンシップか。
天馬もかわいそうだな。
毎回、顔合わせるたびにこれをやられてたんじゃ、いくら恋人という立場でも天馬もやってられないだろう。
俺は他のサッカー部員が恨めしそうに霧野を見つめる視線をビシビシと隣で感じながら、顔を真っ赤にしてされるがままになっている天馬を横目で見つめる。
--だが正直、俺も羨ましい。代われるなら、その位置代わってほしいくらいだ。
「きっ霧野先輩〜!あのぉ…みんなが見てます」
そうおもわず霧野へと念をこめて睨みつけていると、天馬も周りの視線の痛さにうんざりしたのか、恐る恐るといった感じで霧野へやめてくれと目で訴えてるようだ。
「え?ああ、そうだな」
天馬の指摘に霧野が天馬への頬擦りをやめ手を離す。
「でも、天馬すんげぇぷにぷにしてて気持ちいいんだもんなあ。一度やると癖になるっていうかさぁ」
「だからって、場所くらい考えろ!」
「おまえ、触ったことないからそういうこと言えるんだよ。一度、触ってみ?絶対、癖になるから」
「「え?」」
霧野の発言におもわず、俺と天馬が同時に声をあげていた。
「だから、ちょっと天馬のほっぺ触らせてもらえよ。な?天馬、ちょっとくらいならいいだろ?神童だし」
「え?えと…キャッキャプテンが触りたいと言うんでしたら、どうぞ!」
キュッと目を瞑り、俺の前にズイッと歩み寄る天馬。
「なっ?!てっ天馬//」
「遠慮すんなって!絶対、癖になっから!でも、二度はナシな。いちお、俺の彼女だし」
--神童だから特別なんだからな。
と念押しして、霧野は俺を天馬の眼前へと押し出す。
「じゃっじゃあ。遠慮なく」
「どうぞ」
霧野もいいと言ってるし、たまには俺も行動的になってもいいよな?
そもそも、霧野に天馬を取られたのも、行動力の差が一番の原因だったわけだし。
そう思って、俺はそっと天馬の頬を滑り抜け、彼女の背中へと手を回す。
「「え?」」
今度は抱きしめられた天馬とそれをのほほんとした状態で見つめていた霧野とが同時に声をあげた。
「ひゃっ//」
「ああーっ?!」
次の瞬間。
俺はおもいっきり霧野がいつも天馬にしているように、彼女の頬に自身の頬を摺り寄せていた。
正直、今にも死にそうなほど心臓がドキドキして爆発寸前の中での決死の行動。
「ななっ何してんだよ!おまえ!!俺は触っていいって言っただけでなぁ」
「だから、触っただけだ。ただ、おまえが思ってた触り方と違かっただけのことだろ」
してやったりな顔で、俺は霧野に笑みを向けると、そっと天馬の頭を撫でて「ありがとう」と顔を真っ赤にしてカチカチに固まってる彼女の耳元へ囁き、悠然とグラウンドへと向かうのであった。
--まあ、たまにはいいだろう。
少しくらいいい思いしても…
-end-
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