背伸びしても届かない〜南←天♀

 

 

それはまだ俺が雷門中へ入学する少し前の話。

俺はある人に恋をした。

それはきっと決して届くことのない恋。

だってあの人は俺にとって高嶺の花と言える人だったから---

 

背伸びしても届かない

 

「うわあ〜ここが雷門中かあ」

「入学前に中見ていく?私、ここの先生に1人知り合いがいるから、話してあげるわよ」

「ホント?ありがとう!秋姉」

秋姉の買い物に付き合った帰り。

俺は偶然、雷門中の前を通り過ぎた。

そして、出会った運命の人。

「あっ!天馬!いくらいいって言ったからってはしゃぎすぎよ〜!」

「大丈夫だって〜!」

早くサッカー部の練習が見たくて、俺は両手に荷物をぶらさげたまま、駆け足でグラウンドを探して走り回っていた。

そこへ飛んできた白球。

「うわっ!」

「天馬っ!!」

「ソニックショット!」

野球部の流れ球と、それを弾くように飛ばされたサッカーボールとが俺の眼前でぶつかり合って、威力を相殺して左右へと転がっていく。

「おいっ!大丈夫か?」

「あっはい…ありがとうございます」

「あのっすみませんでしたぁ!」

「気をつけろよ。俺が気づいたから、良かったけどさ。そうじゃなきゃこの子にまともに当たってたぞ」

「はい。ごめんね」

「いえ、大丈夫ですから」

野球部側とサッカー部側から人が駆け寄ってきて、それぞれボールを掴むとそのまま元いた場所へと戻っていく。

俺もまた、駆け寄ってきた秋姉に介抱してもらいながら、秋姉の知り合いの先生のところへと戻っていく。

「あのっ!」

途中、やっぱりちゃんとお礼が言いたくて、俺は振り返り紫色の髪が印象的なサッカー部の彼の元へと駆け寄っていた。

「なんだ?」

「あのっ!俺、今年この雷門中へ入学するんです!そして、ここのサッカー部にマネージャーとしてですが入るつもりです!なので、良かったら少し早いですがお名前聞かせていただけませんか?」

「南沢」

ぽそりとそう言うと彼は俺の頭にポンッと手をおいて、こう続けた。

「もし、俺の下の名前知りたかったらさ、もうちょい大人の魅力つけな。そしたら、カノジョにしてやってもいいぜ」

「ふえっ//」

「じゃあな。体だけ大人なお譲ちゃん」

「ふにゃあ〜っ//」

去り際にさりげなく俺のコンプレックスであるほかの同級生の子よりは豊かな胸を軽くなでられ、俺はおもわず奇声をあげていた。

でも、決して嫌とかじゃなくて…

なんでだろう。

魔法に掛けられたように完全にその一瞬に心奪われていたのであった。

「南沢先輩…か」

ウチに帰ってからも、俺は熱に浮かされたようにずっと彼のことを考えていた。

--いつか…

いつか近づけるのかな?

そっと鏡を取り出し、はじめて買った口紅を引いてみる。

「もうちょっと大人になったら…届くかな?南沢先輩に」

鏡の中の自分はまだまだ背伸びしなきゃいけないくらい幼い顔で、俺を見つめ返していた。

--俺が彼の言う大人の女性になるには、まだ当分時間がかかりそうな予感がした。

【お願いだから、その時まで待っていてくれますか?】

そっとそう願いをこめて、俺はティッシュで、まだ早すぎた口紅を落とすのであった。

-end-


あとがき--

初南天♀小説。初回なので天馬♀の片思いにしてみた。

くろうさRが割と好んでる傾向の1つに無意識両思い前提での片思いと届かない片思いとがある。

南天♀はたぶん後者路線で進むと思う。

構ってはくれるけど、相手は本気じゃない?みたいな…

子ども扱いされて、天馬♀が必死に背伸びしようとする感じになるのかな?

蘭天♀でも物によっては奮闘しているとこあるから、微妙に南天♀と被って書き辛かったんだけど、住み分け決まった感じ。

蘭天♀は少し子供っぽくじゃれ合う恋愛で、南天♀は天馬♀を大人の階段へと登らせてくれる紳士南沢みたいな立ち位置でよいかと。

2011/10/8