| キミと味わうはじめての…?〜拓天
それは部活が終わった後のことだった。 「あーお腹空いたあ。まだかなまだかなあ?」 サッカー棟の戸締りをするために、見回りをしていたときだ。 給湯室から聞き覚えのある声がしてきて、俺はおもわず足を止め中を覗き込んでいた。 「なんだ。天馬か。おまえ、まだ帰ってなかったのか?そろそろ、鍵閉めるぞ。早く着替えろ」 「ええーっ!もっもうそんな時間ですか?あのぉ、後少し待っててもらえませんか?これ、食べちゃわないと」 「何を食べるんだ?」 俺がそう問いかけたときだった。 天馬の最近買ったという真新しい携帯から鳴り響くアラーム音。 「これですよ〜これ♪今、ちょうどできたとこなんですけど」 天馬はすぐさまアラームを止めると、目の前のカップの蓋を開ける。 同時に空腹の胃袋にはきつすぎるほどのいい香りが辺り一面に広がっていく。 俺はそのはじめてみる食べ物に、無意識のうちにとはいえ、奇妙なものでも見るような視線を向けていたのだろう。 「あのぉ〜もしかして、キャプテン。カップラーメン知らないとか…ですか?」 「え?あっいや、テレビのCMとかで見たことはあるぞ。食べたことはないけどな」 「ええ〜っ!これ、食べたことないんですか?本当に?驚きました。まさか、カップメン食べたことがない人がこの世にいるとは…」 よほど腹が減ってたのだろう。 天馬は「いただきます」と言うと、おいしそうにそれをすすりだす。 「ラーメンなら食べたことあるぞ」 「でも、ラーメン屋さんのですよね?」 「まあな。霧野に連れられて一度だけだが」 ただボーッと立って天馬が食事を終えるのを待っているのも、返って天馬に気を遣わせかねないと思い、俺は隣に腰掛け、彼が食べ終えるのを気長に待ってやることにする。 「やっぱり、キャプテンの家ってお金持ちなんですねぇ。カップメンと縁がない辺りなんて凄いです!」 「あまり、凄いとか言わないでくれないか?そういう言われ方好きじゃないんだ」 「あっすみません!別に特別扱いとかそんなつもりじゃ…。あっせっかくだから、これ一口食べてみませんか?」 「え?」 突然の天馬からお裾分けに俺は返事に戸惑う。 なにせ、そのお裾分けの仕方が、別の割り箸を用意して食べてみろとかでなく、天馬から直接「あーん」して食べさせてくれるような状況にあったからだ。 「やっぱり、お口に合いませんか?」 「いや、それは食べてみないと何ともいえないだろう」 「じゃあ、どうぞ。はい、口を開けてください」 ふうふうと息を吹きかけ、麺を冷ますと天馬はそれを俺の口元へと差し出す。 食べやすいように麺を上手に箸でからめとってまでして、差し出されたらさすがに受け入れないわけにはいかないだろう。 そう思い、俺は天馬に勧められるままに、遠慮がちに口を開いた。 「はい、キャプテンあーん」 まるで新妻のような愛らしさで、天馬が「あーん」とか言いながら、麺を俺の口へ運ぶ仕種が正直やばすぎると思った。 ダメだ! 天馬が死ぬほど可愛すぎる。 耐えろぉ〜俺。 おもわず理性崩壊しそうな自分を抑えることに必死になって、半分涙目になりながら、なんとか堪えたわけだが---。 結局、俺はカップメンの味初体験よりも、天馬に食べさせてもらったことと、同じ箸で間接キスしてしまったことの方のインパクトが強すぎて、カップメンの味など記憶に残らなかったのだった。 「どうです?けっこう、おいしいでしょ?」
「ん?まあ、そうだな」 「じゃあ、もう一口いかがですか?」 「いやっ//もういいから!残りは全部おまえが食べろ。腹、減ってたんだろ?」 「あーはい。もう、家まで我慢できないくらいに//」
再び麺をすすりはじめた天馬を見つめながら、俺は頭の中は「天馬と間接キス」でいっぱいいっぱいだった。 -end- あとがき-- 拓天デー用にあげたもの。ここでも掲載してたもので一度、削除したのですが記念シリーズ部屋を作成したため、これだけ携帯サイトと連携で残しました。 基本、背番号シリーズ天♀受のみ携帯サイトと連携予定。 10月は京天と南天だよ!にょた天受です!(後はウチカプだと3月までないよな…)
2011/9/8 |