恋をお裾分け(蘭天♀)

3/8。背番号記念用。

「あーお腹すいたぁ」
「大丈夫?天馬。部活乗り切れそう?」
「うー何とかがんばる」
「それにしても、ホント間抜けよねぇ。朝食食べ損ねたからって、お弁当食べちゃって。挙句の果てに、お財布忘れて私たちのお弁当を少しずつ食べてお昼終わりだなんて」
「ムゥー!仕方ないだろ!今日は珍しく寝坊しちゃったんだからさ」
グゥグゥなるお腹を押さえ、先輩たちが来る前にと更衣室へ駆け込み、さっさと着替えを済ませてしまう。
すきっ腹を抱えながら、信助、葵と一緒にそのままグラウンドへ行こうとしたときだった。
ふわんと甘い香りを漂わせ、霧野先輩がキャプテンと一緒に俺たちと入れ違いにサッカー棟へと入ってきた。
「うわっおいしそうな匂い」
ただでさえ、お腹を空かせていた俺は、おもわず心の中にだけ留めておけばよかった言葉をおもわず口にしてしまう。
同時に激しくなるお腹。
慌てて顔を真っ赤にしてお腹を押さえるももう遅い。
俺は2人におもいっきりそのお腹の虫を聞かれてしまった後だった。
「どうした?天馬。部活前にもう腹の虫鳴ってんのか?」
「あっいや///」
よりにもよって、憧れの霧野先輩の前で恥ずかしいところを見せてしまったことに俺は顔を真っ赤にして俯いてしまう。
そこへ信助が何の気なしにあっさりと俺がやってしまった小さなミスを霧野先輩へと話してしまった。
「実は天馬、お昼ほとんど食べてないんですよ」
「そうなんです。お昼なんて、私と信助のお弁当をちょこっとずつ食べた程度で」
「いちおう購買でパンも買ってあげたんですが、天馬は元々食べる方だからそれだけじゃ足りなかったみたいで」
一度口火を切れば、もう2人が面白がって全部話してしまう始末。
俺はいてもたってもいられなくなり、無駄に話題に盛り上がり笑い合う葵たちを恨みながら、逃げるようにサッカー棟を後にするのだった。
「あっ天馬!」
そんな俺を誰かが呼び止めたことにすら気づかずに---。
※ ※ ※
「はあ〜…恥ずかしいとこ見られちゃったなぁ」
まだ部活開始時間までには時間があるため、俺はグラウンドへは真っ直ぐに向かわずに時間の確認が出来る中庭付近のベンチに腰掛け、ぼんやりと空を見上げていた。
相変わらずお腹の虫は鳴りっ放し。
グッと腹筋に力をいれて押さえても変わらなかった。
(うー…厳しい)
カクンと首項垂れたとき、またあの甘い香りが俺の鼻腔をくすぐる。
「天馬。ここにいたのか。探したぞ」
「え?霧野先輩」
「ほら、これ。やるよ。今日さ、調理実習があってみんなでカップケーキ作ってたんだ。少しは腹のたしになるだろ。神童と山菜の分もくれたから喰えよ」
「え?俺に?」
「ああ。腹減ったまんまじゃ、練習に集中できないだろ?部活終わるまでの間なら、これだけ食えばちょっとはもつだろ?」
「あっありがとうございます!」
「神童には少し遅れてきてもいいって言われてるから、ゆっくり喰えよ」
「はい!」
「それと…これは俺の奢りな」
スッと差し出されたのは紅茶の缶。
どうやらサッカー棟にある自販機で買ってくれたものらしい。
俺は先輩の優しさにおもわず涙目になりながら、それを受け取ると一気に半分ほど飲み干していた。
「おいおい。そんなに急いで喰うなよ。味、わかんなくなるだろ?」
「そんなことないです!すっごくおいしいです!皆さんの気持ちがいっぱい詰まっていて…何よりも」
--霧野先輩の気持ちが嬉しくて、幸せです。
最後の言葉は敢えて心の中で呟いて、俺は感謝の気持ちをいっぱいにこめた笑顔を先輩へと送るのだった。
「そっか。俺も天馬に食べてもらえるきっかけができて正直なとこ嬉しかったしな。天馬の空腹に感謝だな」
「ふぇ?」
「ああ。なんでもない。こっちごと」
「はあ…」
俺の隣で霧野先輩が何だかとても幸せそうな顔をして、真っ青な空を見上げているのをみて、なぜだか俺もそれだけでお腹がいっぱいになるような気がした。
それはそれはとても幸せな午後でした。

-end-


あとがき--

携帯サイトで更新したものと同じ蘭天♀背番号記念。

ちなみに携帯では♀がついてない。(男装女子扱いなので男としても読めるので)

こっちには別の蘭天♀を〜と思ってたのですが、木枯らし更新とゲームとでできなかった…

ので、同じものを遅れてアップです。

蘭天♀好きサイトの癖して蘭天♀ないのも変だなと思いまして引っ張ってきました。

2011/3/08