あったかい手、冷たい手(倉天♀)
「あっおはようございます!」 「おはよう。天馬」 「なあ?おまえ、顔が林檎みたいに赤いぞ?熱あるんじゃないのか?」 「え?うーん。たしかに今日はいつもより、ちょっと体がぽっぽこしてるんですよねぇ。でも、大丈夫です!俺、基本寒がりですから!これくらいがちょうどいい感じですし!」 「今は風邪が流行ってるようだからな。それに、おまえは無理をしすぎるから心配だ」 「もし、途中で具合悪くなったらすぐに俺たちに言えよ。分かったな」 「あっはい!ありがとうございます!霧野先輩、キャプテン」 寒さがここへきて、グッと厳しくなってきた朝のこと。 いつものように、サッカーの練習をしにグラウンドへ駆けて来た俺たちよりも先に、そこへいたのはやっぱりアイツだった。 天馬は遠目から見ても分かるように、霧野や神童が言うように、やけに顔が火照っているようにみえた。 しかし、本人は具合が悪いわけでもない。と言い張り、そのままマネージャーとしての仕事を他のマネージャーたちと一緒になってこなしていった。 ※ ※ ※ 「そろそろ時間だな。練習はここまでにしよう」 「なあ?そういえば、天馬の奴。どうした?少し前から姿見えないんだけど」 「もしかして、やっぱり天馬さん具合悪かったんじゃないですかぁ?」 「あーそうなると、案外どっかでぶっ倒れてたりして…って!おい?倉間?」 「悪いっ!ちょっと急ぎの用!先、着替えに戻るわ」 ふと、霧野が天馬が近くに見当たらないことに気づき、不思議そうに首を傾げ、俺たちへと話しかけてきた。 同時に、俺の記憶の片隅に数分前にふらふらっと天馬が1人、サッカー棟の方面へと歩いていった姿が蘇った。 (もしかしたら、アイツ!) 速水や浜野が言ってた通りだとしたら、きっと途中で倒れてる! そう思い、サッカー棟へ続く道を駆けていく。 「天馬っ!」 誰かがサッカー棟の壁に寄りかかって、蹲っているのが目に入った。 俺はすぐにそれが天馬だと言うことに気づき、慌てて駆け寄る。 「おい!大丈夫か?」 「あっ倉…間…先輩。あはっ…すみません。俺、どうやら熱…あったみたいで」 バカみたいな笑みを浮かべて、天馬は苦しそうに息を吐きながら、そして俺を見て安心したのか、そのまま意識を失った。 「くそっ!あれだけ無理すんなって言われてただろ!バカが!!」 俺は目の前のバカな後輩に文句の1つでも言い放たないと気がすまなく、つい愚痴を吐いていた。 だが、そのままってわけにもいかない。 自分よりも体ばかりでかい後輩を何とかして、背負うと俺はそのまま保健室へと彼女を連れて行くことにした。 「思ってたより、軽かったな」 保健の先生が、これから職員会議だというので、俺がそのまま天馬に付き添ってやることになった。 俺のことは、担任の先生に話しておいてくれると言ってくれたし、敢えて速水と浜野に事情を説明しに教室へ戻らなくてもいいかと思った俺は、先生が貸してくれた上着を羽織って彼女の眠るベッドの傍に座り込む。 (やっぱ、ユニフォームじゃ体が冷えてきたら堪えるなあ) 一度、サッカー棟へ戻って着替えだけでもと思いもしたが、そこで神童たちに会えば、絶対天馬のことを聞かれると思った。 話せば、当然ここへ来たがるだろうし、誰かが付き添ってた方がいいと話せば、きっと自分が残ると、みんなが言い出すだろう。 それがなんとなく嫌で、俺は先生の「着替えてきたら」に首を横に振り「平気です」と言ったんだ。 --この特別な時間は俺だけのものでいい。 ふと、そんな感情がこみ上げてきて、俺は自身の冷えた体が熱く火照るのを感じていた。 慌てて、頬に手を当てれば、自身の冷たくかじかんだ手が心地いい。 (コイツの手は…俺と違っていつもあったかいんだよな) --それはまるで彼女のそのものを表しているようなあったかい手。 (それに比べて俺は…) --素直になれない自身の気持ちを表したかのような冷たい手。 「…んっ?ここ…は」 「天馬っ!起きたか」 フッと自身の手を伸ばし、そっと彼女の熱を帯びた頬へと触れてみる。 と、同時に固く閉じられていたはずの瞼がおもむろに開いて、俺はびっくりしてその手を反射的に退けていた。 「あっ…倉間先輩」 ガバッと跳ね起き、天馬はすぐさま自分が置かれている状況に気づくと、物凄い勢いで俺に頭を何度も下げてきた。 「ごっごめんなさい!俺っ皆さんにあれだけ気をつけろ!無理するなって言われたのに、無茶しちゃって、結局倉間先輩に保健室まで運ばせちゃって!俺…ホント、バカですよね」 「ああ、ホンット救いようのないバカだよ!おまえは!」 俺の怒鳴り声にビクッと大きく肩を震わせ、俯いたままの天馬に、俺はハッとなって口を噤んでしまう。 (違うんだ。俺だって本当は、心配して…ただ、それだけで。別に怒ってなんか本当はなかったんだ) 「ごめんなさい…。本当に」 「…熱」 「ひゃっ//」 口で言うとまた気持ちと裏腹なことを言いそうだったから、そっと手を伸ばし労わるように、天馬の額に触れてみる。 突然の俺の予想外の行動に驚いたのか、ただでさえ真っ赤だった顔がさらに赤くなる。 「まだ熱あるみたいだな」 「はい。まだちょっと頭がくらくらしてます」 「だったら、寝てろ」 額から手を離し、俺が天馬の肩を押し、ベッドへと押し戻そうとすれば、そっとそれを拒むように俺の手首へと乗せられたアイツの手。 「あの…もう少しだけ、その手。貸していただけませんか?」 遠慮がちに俺の手をとると、再び自身の火照る額、そして頬へと俺の冷たい手のひらをあてていく。 静かに瞼を閉じ、心地良さそうにする天馬に、おもわず俺もされるがままになってしまう。 「冷たくて…気持ちいいです」 「そっか?」 「はい。それに倉間先輩にこうしていただけると、安心するというか…」 フッとまた天馬が意識が飛んだように、ぱたりとそのままベッドに仰向けに横たわってしまう。 「あっおい!」 しかし、すぐにそれがただ溜まっていた疲労が睡魔となって襲っただけだったということが、彼女の規則正しい寝息から分かり、俺は一瞬焦りもしたが安心した。 「ったく!脅かしやがって」 するりと外された自身の手をもう一度、自ら彼女の林檎のように赤い頬へと触れ、優しく撫でてやる。 「ゆっくり休め。目が覚めるまでは傍にいてやるから」 の言葉に、気のせいだろうか。 一瞬だけたしかにアイツがふわりと微笑み返してくれたような気がしたんだ。 -end- あとがき-- 携帯サイトで更新したものと同じ倉天♀背番号記念。 先月までは京天♀と京拓♀で次ねえよ!って思ってたのですが、倉天♀書き始めたら癖になってしまい… でも、昨日8日終了1時間前になって、他サイトの背番号記念読んで思い出したのw 間に合わないから、今日になりました。 倉天♀いつでもツンデレ天邪鬼な倉間先輩しかいない…でも、そこが好きw 2011/11/08 |