少し前までは佳奈多を困らせるためにしていた『いたずら』…

だけど、いつからだろう?

その目的がある人の目をひきつけるためだけに、わざと彼を困らせ怒らせるためだけに、するようになったのは…

 

葉留佳のマジ恋☆カウントダウン

 

「またおまえの仕業か!三枝!!」

「やは〜!謙吾くん、また今日はいつもより派手にひっかぶりましたネ〜」

「おまえな…人の迷惑というものを考えたことがないのか?」

「いいじゃないデスカ?まだ残暑厳しい季節だよ。これくらいのサプライズ、むしろ涼しくなってよかった〜って思わなくちゃ駄目デスヨ。謙吾くん、頭かたすぎなんじゃないの?」

私が、彼---宮沢謙吾を意識しはじめたのは、この辺りからだった。

今までずっとリトルバスターズのメンバーの1人として、理樹くんたちと同じように友達として仲良くしていたつもりだった彼。

だけど、あの事故の後。

謙吾くんと何日も何週間も顔を合わせなくなったあの日から、私の中で何かが変わりはじめていることに気づいてしまったんだ。

「ふう…水を浴びせられたのはこれで二度目だな」

「ごめんなさい!私のせいね」

「いや、誰のせいでもない。この胴着だってこの暑さだ。すぐに乾いてしまう。問題ない」

「でも…あなた!」

(あれ?誰か一緒にいるの?)

部室の半開きになった扉の影で謙吾くんと話す女の子の声が聞こえてくる。

でも、その声はここに来ることはまずないはずの彼女の声だ。

おそるおそる入り口に歩み寄り、そっと半開きの扉の隙間から外を覗き見たときだった。

「葉留佳!宮沢くんに謝りなさい!」

私に気づいたらしいその人影が、謙吾くんの背後からひょいっと顔を覗かせた。

それは私の予想通り。

双子の姉の佳奈多その人だったのだ。

「おね…佳奈多?なあんだ。佳奈多もいたんだ。あっもしかして、佳奈多も引っかかっちゃったとか?」

やっぱりね。と私は苦笑いを浮かべながら、かなりご立腹状態の姉を謙吾くん越しに出迎えた。

「違うわ。私があなたを探して、ここの前へきたときに偶然、彼に会って…それで」

いつもは見ることのできない佳奈多の申し訳なさそうな表情を見たとき、なぜか私の胸の奥がざわめいた。

「まさか、こんなところにまであなたがくだらないいたずらを仕掛けていたなんて、気づかずにうっかり扉に手をかけた瞬間よ!頭上からバケツが大量の水ごと降りかかってきたのは!」

あれ?バケツ??

なんかおかしいな?と佳奈多の話を聞いていた私は思い、外へ飛び出した。

「宮沢くんが私をかばってくれなかったら、水だけじゃない---バケツも私に当たってたところだったのよ」

「ごめん…ちょっと仕掛けミスったみたい」

2人の立っていた位置から少しずれたところに転がるバケツを見つめていた私は、佳奈多の言葉に反射的に謙吾くんへと視線を走らせていた。

「あっあの!謙吾くん!ごめんっ!私、そんなつもりじゃなかった!!でも…怪我---」

「大丈夫だ。水をかぶっただけだからな」

「うん。よかっ」

「良くないわよ!宮沢くん!あなた、バケツで肩ぶつけてたじゃない!私、ちゃんと見たんだから!」

「ああ、よけきれずに少しはかすったかもしれないな。だが、水がこぼれた後のバケツだ。

問題はなかったさ」

「あなたがよくても私がよくないのよ!とにかく保健室へいきなさい!」

「だから、たいしたことはないと」

「もういい!それじゃあ、その濡れた胴着を着替えにいきなさい!」

「ふむ。それもそうだな」

佳奈多の激しい言い回しにあっさりと同意し、謙吾くんは寮へと向かって歩き出した。

佳奈多はちょっとの間、私の隣で腕組をして一緒に彼の後ろ姿を見送っていたが、すぐに考えなおしたらしく、「やっぱり、あなたがちゃんと男子寮へ入るまで見守らせてもらうわ!」と勝手に答えをだして、謙吾くんを追いかけていってしまった。

「佳奈多…」

もし、私が謙吾くんに友達以上の感情を持ち始めているであろうことに気づいてなかったのなら、、きっと---。

「もしかして、佳奈多も謙吾くんのこと…好きなのかな?」

こんなこと口に出すこともなかっただろうなと思う。

---いつもなら、この『いたずら』をきっかけに子供みたいに楽しくはしゃぐ私を前に、あなたはフッと苦笑いすら浮かべて、呆れてくれるところなのにね。

「なんで、こんなことになっちゃのかな?」

失敗したのは仕掛けだけじゃない。

知らなければ良かったかもしれない、彼女の気持ちの欠片を見てしまったこと。

やっとまた昔に戻れたばかりの私たちの繋がりが、もしかしたら、このことがきっかけで再びぎこちなくなるかもしれない。

それをよりにもよって今日、自らの『いたずら』が原因で招いてしまったこともあるんだ。

『ねえ?もうやめない?こんなこと。私たち、もういがみ合う必要もなくなったんだし、いいじゃない?』

ふと仲直りした後、佳奈多が私に言ったあの言葉を振り返る。

「そうだね…。あの時、やめてたら私…きっとこんなに辛い気持ちにならなくてすんだのかもしれないね」

そっとポケットから取り出したビー玉を見つめ、私は複雑な気持ちのまま、『いたずら』の後片付けをするのであった。

「あ〜あ。それにしても、どうしようかな?この気持ち」

残されたのは、やっとはっきりと気づいた彼への想い。

伝えたくても、これじゃ伝えられないよね。

だって、私…おねえちゃんのことも大好きなんだもん。

「もう、二度とあんな思いしたくないもんね」

目覚めた思いはこのビー玉の中にしまっておこう。

そして、大好きな人たちが幸せになれるように私はこれからも今までの関係を続けていくよ。

きっと、それが一番いいんだよね?

 

-end-


なんか葉→謙というよりかは、佳謙みたいな流れが強いような…

それでも基本は初!葉謙。

はじまりから少しずつ進展したシナリオが構成されればいいと思う。

とりあえずノカプは葉謙と真クド(もしくはクド真)で更新予定。

2010 /06/26