それはまるで恋人のようでした
「…あっしまった!英語の教科書忘れてきちゃったよ〜」
俺が忘れ物に気づいたのは、次の授業が英語の休み時間。
「だったら、に借りたら?たぶん、あの子のことだから、教科書とか絶対おきっぱよ!」
俺が鞄の中を探ってると、葵がそれを目ざとく見つけて自信満々に俺の姉のずぼらさを強調しながら、すぐに行って来いとばかりに教室のドアを指差す。
俺もまあ、見つからない以上はそのつもりだったので、言われるまでもなくと言った感じで、急ぎ足でのクラスへと駆け込んだ。
こういうときにクラスが違うのはありがたいものである。
「!お願い!英語の教科書貸し…て?」
急ぎ足でのクラスへと飛び込むと同時に、姉を目ざとく見つけ声を掛ける。
つもりだったが、その声は途中で小さくくぐもっていくのであった。
目の前の光景に唖然としつつ---。
「いいじゃない!見せなさいよー!」
「なんで、てめえに見せなきゃいけねえんだよ!」
「どうせ、アンタのだってお兄さんの写真なんでしょおが!!」
「勝手に決めつけんじゃねえよ!」
「えーっ!だってアンタ、お兄さんのためにシードでサッカー潰しに来てたんでしょー!!んで、本当のサッカー取り戻したのも、どっちかというとお兄さんの一喝があってのこととかー?」
「なんでそこまで詳しいんだよ!てめえは!」
「天馬が全部、教えてくれたもん!最初は手紙だったけど、携帯買ってからはメールで〜」
「…ぐっ!おいっ!松風!てめえっ口軽すぎだろ!」
「ふぇっ…?えっいや、それより…2人とも何してんのさ?」
回りのクラスメイトさえも、2人の揉みあいを興味深げに眺めているくらい、俺が顔を出したときは、そりゃあもう、イラッとするくらい仲良くいちゃついてた2人。
呆れつつも話を聞けば、はどうやら、剣城の携帯の待ち受けが何なのか気になるらしく、彼の手から無理矢理携帯を奪おうと奮闘してたところらしい。
そして、剣城はそれを必死に防御といったところか。
「だからって、そこまでムキになってやりあうものなの?普通」
「「ったりまえだろ(でしょ!)」」
なんかイラッとするほどユニゾンしたんですけど…
「あたしは京介に待ち受け見せてあげたのに、京介は見せてくれないなんてずるいじゃんかあ!」
「そもそも、俺はてめえに「見せてくれ」だなんて言ってねえだろ!しかも、勝手に俺までブラコン扱いしやがって!ブラコンはてめえだけで充分だっての!俺は、そこまで病的じゃねえ!」
「「ええ〜。そうは見えないなあ」」
「…っ!この双子があっ!!」
剣城のブラコン疑惑否定の声におもわず、呆れてた俺までもがと一緒になって疑いの眼差しを一瞬向けてしまった。
いや、それどころじゃなかったはずなのに…
むしろ、が待ち受け1つごときで、こんなにも剣城と仲良くやってるところが許せないし。っていうか、同級生興味外って言ってたのに!
俺の前で懲りずに剣城の高く挙げられた手から背伸びしてまで、携帯を奪おうと剣城に密着するを無理矢理引き離しながら、俺はちょっとだけ剣城に嫉妬してしまうのであった。
--まあ、その後にから教科書を貸してもらった際に、姉の待ち受けが俺と妹の雛だって知ったときは素直に嬉しかったんだけどさ。
-end-