女王さまは気まぐれです

「はい」
スッと俺の頭上から降ってきた紙袋。
うざったそうにそれを払いのけながら、視線をあげればそこには珍しいことにが立っていた。
「なんだ?一体。おまえから俺のとこへ来るなんて。どういう風の吹き回しだ?」
プレゼントの送り主がともなれば、話は別だ。
俺はゆるく腰掛けていたベンチから身を起こすと、一度は払いのけたそれを手を伸ばして受け取った。
は俺が紙袋の中身を開けるのを横目で確認しながら、ベンチの背もたれへと腰を下ろす。
「それさ。おとといのお詫びだから」
「おとといの?」
「そっ。アンタのこと下着ドロと勘違いした件の…」
「ああ。あれか」
「むしろ逆に犯人とっ捕まえてくれたってのに、悪かったわね。いきなり理由も聞かずに殴って」
「もう慣れた。おまえの鉄拳にはな」
俺は珍しく汐らしくしてるに、本当に気にしてない旨を告げ、紙袋の中を覗く。
「なんだ?サンドイッチか」
「まぁね。アンタ、いつも学校行ってんのか?ってくらいに朝練と夕練の時間に顔出すから。作ってやったの」
中身を覗けば、そこにはサンドイッチが数切れいれてあった。
「それと聞いたわよ。アンタ、あまり朝食とらない口なんだってね。シュウが教えてくれた」
「そうか」
「仮にもスポーツやってるんだから、朝食くらいしっかりととりなさいよね?親御さんは作ってくれないの?」
「ウチの両親は今は海外出張中だ。だから、ゴッドエデンに長期いても誰も気にも留めなかった。今も俺がここへ戻ってきたことすら知らないだろう」
が作ったと思われるサンドイッチを一切れ取り出し、その具のはみ出し加減を丁寧に観察していると、いきなり横から伸びてきた細腕。
「何じろじろ出来具合を見てるのよ!見た目はいびつだけど味は保証するからさっさと喰え!!」
「おい!せめて恋人らしい食わせ方をしろ!」
「んなっ//誰が恋人だぁっ!!」
よほど俺に口に入れてもらいたかったのだろう。
は半ば強引にそれを俺の口元へと運ばせ、食べさせようとする。
だが、俺の"恋人"発言を耳にした途端に、あっけなく手を離し、またそっぽを向いてしまったようだ。
仕方なく、自身の手で最初の一口を押し込んでみた。
「どぉ?いちおう、さっきも言ったけど味見はしたんだ。秋姉監修の卵サンド!おいしい?」
「…ああ。おまえの愛を感じるぞ」
「だっ//誰がアンタに愛情を注ぐかっての!!」
「相変わらず素直じゃないあたりも、おまえらしくて俺は好きだぞ」
「んにゃっ///そんな恥ずかしげもなくおまえはぁっ!だから、嫌いなのよ!」
顔を真っ赤にして、スッと背もたれから腰を浮かすとは「朝練行くから」とだけ残して、サッカー部の待つグラウンドへと駆けていく。
去り際に「全部食べろ」と命令をすることを忘れずにだ。
俺はそんなに何年かぶりの気持ちが暖かくなる感じを覚えさせられた。
「本当に、おまえは俺にとって最高のいい女だな。よ」
アイツに出会ってから、俺はずっと忘れてたぬくもりとか優しさを教えられたような気がする。
相変わらず、アイツは俺に対して素直じゃないが、それでもこうして時々見せる優しさと気遣いがやはり俺には嬉しくて---。
(少しはアイツの言うように、相手の気持ちというのも理解した付き合いをしてみるのもいいかもな)

それは少しでもおまえとの距離を埋めるために必要な選択肢。
俺はおまえのためなら、この無駄に高いプライドも少しは折れそうな気がしてきたよ。
それほどまでに、俺は最初の頃よりおまえにますます惚れこんでしまったのかもしれないな。

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