松風ルール!
「そういえば、も天馬もさすがに中学生になったせいか、アレ。しなくなったね」
「「え?あれって??」」
それは放課後の練習中のこと。
天馬が珍しく派手なミスをやらかして、キャプテンに叱られた。
まあ、無理もないことだ。
一歩間違えれば天馬自体が大怪我を負うところだったんだから…。
キャプテンに「不注意にも程がある」と叱咤され、霧野先輩、剣城くんからも「今回ばかりは天馬が悪い」と厳しく叱られ、いつも楽天的な天馬でさえも、珍しくしょげていた。
そんなときに唯一、過保護モードなのが天馬の双子の姉のだ。
たしかに最初はキャプテンたちと一緒になってギャアギャア喚いてはいたが、天馬が大したことないと知ったとたんに、いつもの過保護モード炸裂。
文句は忘れずに、しっかりとその後の練習はDr.ストップならぬ"お姉ちゃんストップ"がかけられたくらいだ。
私は天馬の足の腫れ具合を見ながら、応急処置を手際よくするを「やればできるじゃない」とぶきっちょさんにしては、素晴らしい成長ぶりを褒め称えながらも、ふと小さいときなら双子の間にあったアレが今はないことに疑問を抱いてしまったところだったのだ。
ちなみにそのアレとは…。
「ほらっ松風家特有のなぐさめ方よ!ハグしてほっぺにチュッて、周りが驚くほどあなたたちベタベタしてたじゃない」
「「あー…」」
私の言葉に同時に思い出したように声をあげる2人。
「さっきも普通にハグして頭撫でてあげてるまではしてたけど、もうほっぺにチュッまではやらないの?」
「うーん。そうねぇ…」
「やっやるわけないだろ!!もう子供じゃないんだし!雛相手ならともかく」
唇に手を当て、思案する姉をよそに、天馬は顔を真っ赤にして、全否定。
私もまた、「そうよねぇ。もう中学生だもんね。それに…」と背後に感じる視線にもう慣れた風に振り向いてみせた。
「そんなことしたら、きっと後ろの彼らが黙っちゃいないだろうし。いろんな意味でね」
「「うっ」」
私の言葉に双子が何かを感じ取ったのか、同時に嫌そうな呻き声をあげる。
そして…
「白竜!」
「シュウも!!」
「「いつからいたの?!」」
私の視線につられて、双子が振り返ればそこにはけっこう前からいました。なストーカー2人組が立っていた。
しかも、私の話に食いつくような眼差しを向けながらである。
「おい!そこのマネージャー!!今の話は本当か!松風家では傷心しているものを全力で慰める究極ルールがあるというのは!!」
「究極、究極ってキミ、なんでも究極つけりゃいいってもんじゃないでしょ?まあ、それはともかくとして、それって他人でも有効なのかなぁ?ねえ、天馬」
「あー…どうだろ?俺、と雛にしかしたことないしなぁ」
「あたしも父さんや母さん、天馬にはされたことあるけど、他人にされたことないわ。っていうかぁされたくない!とくにアンタには!!」
に至っては、早くも第六感が作動したのか、猫のように白竜を威嚇しているし…。
天馬もできる限り、巻き込まれたくない感を溢れ出させながら、冷めた返事してるし…。
ここまで拒絶されてる2人ってある意味凄いと思う。
「じゃあ、俺にそれをしろ!!!俺の、おまえのせいで傷心しまくっている心を癒せ!」
「じゃあ、僕も。天馬に家族以外の前例がないなら作ってあげるよ!」
「「いや、けっこうです!!」」
「「遠慮しな…」」
「「するわー!!」」
--ドオォォンッ!!
物凄い轟音と共に、いつのまに編み出したのやら、双子のあわせ技が炸裂する。
「おー…すげぇ」
「俺たちが手を貸すまでもなかったな」
「同感です」
霧野先輩がはじめてを褒め、キャプテンと剣城くんが感嘆の声をあげ、満足げに鼻で笑ったと同時にストーカー2人の排除は完了したのだった。
--今日もご苦労様です。
-end-