僕のカノジョにはヒミツがある

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  5.サッカーの楽しさを教えてくれた人  

霧野と拓葉先輩を相手に、俺は今苦戦を強いられている。
「くっ!マジ強えぇ」
「でも、まだあたしらにボール取られてないだけども凄いって!」
くんってホント、サッカーうまいんだね」
こっちがかなり体力消耗してるってのに、2人は俺ほど息があがってないように見えた。
「後、3分!どうせ、やるならゴール決めてみろー!ー!!」
霧野監督の声がベンチ側から聞こえてくる。
--後、3分か。
(あの技、使うかな…必殺技とか使っちゃダメってルールはたしかなかったはずだし)
このまま競り合っていても、きっと前には進めない。
むしろ、下手すりゃきっとギリギリでボールをカットされて終わるだろう。
俺は監督の声を聞いてから、2人が互いにアイコンタクトを取ったのを横目で確認すると同時に身構えた。
(来る!)
「さあ、どうする?!」
「いかせないよー!」
「それはどうでしょうか?行きます!”そよかぜステップ!”」
「「え?」」
「何…だと?!」
俺はあの人に幼い頃に教えてもらったドリブル技で、霧野と拓葉先輩のディフェンスを次々とクリアし、そしてがら空きのゴールポストへとシュートを決めた。
「よしっ!やったぜ!ー!!」
「京馬!!」
呆然と立ち尽くす霧野と拓葉先輩の脇を駆け抜け、京馬が真っ先に俺の元へと辿り着くと、いきなり人の頭をバシンッと勢いよく叩く。
「ってえ!あにすんだよ!ったく」
「ハハハッ!相変わらず、おまえのドリブル技すげーよ!俺、てっきり今回は使わないでいくんじゃねえかって思ってたけどよぉ。やっぱ使ったか」
「まあな。ただ俺あんまスタミナないからさ。あれ、けっこう集中力いるし、疲れるから…だから土壇場まで温存してた」
「なるほどな。でも、これでおまえも晴れて雷門高サッカー部の一員だな。そうですよね?監督」
京馬が俺の肩に手をおいて、ベンチ前で立ち尽くす霧野監督へと問いかければ、監督は少し呆けた様子ではあったがすぐに気を取り直し、「ああ」と軽く答えを返す。
「入部テストはこれで終わりだ。練習再開していいぞ。それと」
霧野監督は俺へと向き合うと「ちょっと話がある」と言って、サッカー棟へと向かって歩き出した。
俺は何事だろう?と京馬へと首を傾げるも、京馬もまた「分からない」と首を左右に振るだけで、俺は仕方なしに黙って監督の後をついてグラウンドを後にした。

※ ※ ※

「おまえ…さっきの技なんだけどさ。どこで覚えた?」
「え?あー”そよかぜステップ”ですか?」
「ああ」
ミーティングルームに入ってすぐに、霧野監督は俺に近くの椅子に腰掛けるように指示すると、自身もまた俺と向き合う形で椅子に腰掛け、顎に両手を乗せ、俺を品定めでもしてるかのような目線で見つめながら、さっきの入部テストで俺が見せた技の話をしてきた。
俺はなんで?と思いながらも、この技を教えてくれた女性の話を霧野監督へと話して聞かせるのであった。

 
--そう。
あれは俺がまだ、この稲妻町に住んでた頃のこと。
あの時の俺は、今ほどサッカーが上手くなくて仲間からも「おまえがいるとチームが弱くなる」って言われて、一緒に遊んでもらえなかった。
唯一、俺とちゃんと向き合ってくれ練習に付き合ってくれてたのが京馬だった。
でも、京馬は俺と違ってプロサッカープレイヤーである父・剣城京介の才能を受け継いでいたこともあって、彼はいつだって仲間から引っ張りだこで、練習に毎回付き合えるほど暇でもなかった。
その日も俺は1人でボールを蹴って練習していた。
けど、頭の中では次第に「もうサッカーなんてやめようか?」と思い始めていて、つい目の前のボールをおもいっきり力任せに蹴り飛ばしていたんだ。
「くそっ!もおっサッカーなんて嫌いだ!」
ポオンッと勢いよく蹴られたボールが、遊んでいた公園を抜け道路へと飛び出してしまった。
そこへちょうど通りがかった1人の女性。
--それが俺とあの人との最初の出会いだった。
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