僕の彼女にはヒミツがある
4.伝説の男!円堂守の娘登場!!
ユニフォームに着替え、俺が少し遅れて合流した京馬と一緒にグラウンドへと出ると、そこにはすでにサッカー部のメンバーが一足先に集まって練習をはじめていた。
「おっ来たな。!おいっおまえら〜!ちょっと集まれ!」
霧野監督に呼び集められ、それぞれ練習に集中していた部員たちが一斉にベンチへと集まってくる。
「悪いな。練習はじめたばっかで中断させて。でも、これからコイツの入部テストやりたいから、ちょっとだけグラウンド空けさせてな」
「えっ?入部テストって…俺たちが相手するんじゃないんですか?」
「ん?ああ、それなんだけどさ」
キャプテンマークをつけた3年らしき人に霧野監督が理由を話そうと口を開いたときだった。
「監督〜!ずるいですよぉ!!蘭姉たちばっかり!ボクにもテスト手伝わせてくださいよぉ!!」
「あ?椛(もみじ)か…なんで、このタイミングでくっかなあ」
猛然とした勢いでかっ飛んできた1人の少女。
彼女は一体何者なんだ?
と、俺が京馬をちらりと見やれば、京馬は「ウチのマネ」と一言。
「マネージャー?じゃあ、霧野と同じじゃん。でも、なんで」
--テストに出たがるんだ?
俺が意味がわからんと首を傾げていると、霧野監督が呆れたように彼女を見下ろし、きっぱりとテストへの参加を拒絶する意思を示す。
「新入部員のテストするんですよね?しかも蘭姉たちが相手とか!だったらボクも出ていいと思うんですけど!」
霧野たちが出ると聞いた途端に、なぜか京馬をはじめとする一同が驚きの表情で俺を一斉に見つめる。
俺は理由も分からずに、京馬に「何?」と問おうと口を開くも、それよりも先に霧野監督とマネージャーの会話が先に続き、俺は話し掛けるタイミングを失ってしまう。
「でもなあ…今回のテストにはおまえ出ても仕方ないだろ?」
「ゴール守れます!」
「だからなあ…ゴール守られてもテストの意味ねえの!今回は。だから、キーパー以外に脳のないおまえには出番なし!分かったら、こいつらと一緒にベンチでのプレイでも見てろ」
シッシッと犬でも追い払うように監督はマネージャーに手を払う仕種をする。
「え〜?!そんなぁ〜…久しぶりに試合らしいことできると思ったのになあ」
「だから、試合じゃねえっての!」
話が片付いたところで、ようやく霧野と拓葉先輩がユニフォームに着替えて顔を出した。
「残念でしたねぇ。椛〜やっぱダメだっただろ?」
「あう〜蘭姉までぇ。いいじゃないですかぁ!出してくれたってぇ!キーパーいた方がより臨場感ありますよ!」
「まあ、もみちゃんの言うことも分かるけど、今回のテストはシュートを決めるとかじゃなくて【私たちを制限時間内に抜けるか】だから」
「でも、抜いたらゴールするんですよね?」
「抜けるかどうかすら分からないのに、アンタいてもやることないじゃない」
「う〜確かに」
「だから、パパはアンタはいらないって言ったのよ」
ボールを1つカゴから取り出しながら、霧野はそれを拓葉先輩へと向かって投げる。
「パパ、あたしら少し体動かしてからはじめさせてもらっていい?久々だから、少し慣らさないと」
「ん?そうだな。でも、早くしろよ。あくまでテストなんだし、本気だされてもが困るだけだしな」
「分かってるっての!行くよ!拓葉」
「うん。はいっ蘭花」
拓葉先輩はそれを器用に胸でキャッチすると、そのままウォーミングアップのつもりだろうか。
先を走る霧野へとパスしながら、2人はグラウンドへと出て行った。
「なあ…俺、なんか物凄く下に見られてね?仮にも中学時代に全国大会でベスト8に入った経歴あるんですけども」
「だからこそ、俺らじゃなくて敢えて霧野たち当ててきたんだろ?より、レベルの高い奴当てておまえの真の実力見るためにな」
「え?」
京馬の言葉に俺はおもわず、首を傾げてしまう。
そういえば、さっきもそうだ。
2人が俺のテストの相手だと聞いたときの、先輩たちの驚いた顔がふと思い出される。
「いいか?。最初から本気で行け!あいつらを女だからって甘く見てると、一度も抜けないままテスト終わっちまうぜ。たぶん、抜けなくてもそれなりの成果見せりゃテスト受かれるだろうけど、監督が就任してからウチの部員半分近く減らされた理由…全部、アイツらに手も足も出なかったのが原因だからさ」
「ええっ?!」
全盛期の頃に比べれば、中高ともにサッカーの名門と謳われた雷門も、ここ10年ほどになってだいぶ地位も衰退してきてはいた。
つまりはそれだけ才能ある選手がここ雷門にでなかったということである。
「監督が来てから、かなり変わった。ついてけないって辞めた奴多いし、マネージャーもそれに釣られて辞めちまって…今、いる霧野と今年入ったばっかの円堂の2人だけがマネしてるだけ」
--そんだけ、監督の指導は厳しい。でも、俺たちは確実に強くなってもいる。
京馬はそう言うと、意地の悪い笑みを浮かべると俺を見てこういった。
「逃げるんなら今のうちだぜ。どうする?」
「ああ?俺が逃げる?どうして?んなわけないだろ!やってやるよ!俺の本気、見せてやる!」
「ああっ!それでこそだぜ!やっぱりおまえは変わっちゃいねえよ。あの時と全く同じ」
--サッカーバカだ。
フッと笑みを漏らし、俺と京馬はあの頃と同じようにハイタッチを交わし、俺はグラウンドへと飛び出していく。
その先にはウォーミングアップを終えた霧野と拓葉先輩が待っていて、俺が2人の前へと立つと霧野がボールを俺の足元へと転がした。
「テスト内容はこう。アンタはそのボールをキープしつつ、あたしと拓葉のディフェンスを抜いてシュートする。もしくは制限時間内までにボールをキープし続ける。仮にあたしらにとられても、時間内に取り返せてればOK。できたらだけど」
腰に手をあて、余裕げな笑みさえ浮かべ、霧野は自信満々に俺を見つめる。
俺も俺で、そんな霧野にお返しにとばかりに満面の笑みで答えながらこう言った。
「心配ご無用。俺には俺にサッカーの楽しさを教えてくれたあの人から教わったドリブル技があるんだ!絶対、とられやしねえよ!」
--そう。
今の俺がこうして今もサッカー続けているのは、あの人のおかげ。
あの人が俺にサッカーを捨てずに続ける力をくれた。
サッカーと向き合う楽しさを教えてくれた。
だから、俺はいつかまたあの人と一緒にサッカーしたくて、それでここに戻ってきたんだ!
成長した俺のサッカーを見てもらうために!
だからこそ、俺は--。
「いつだって本気でサッカーしてるんだ!」
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