僕の彼女にはヒミツがある
3.霧野監督と美少女板挟み
翌日から俺は雷門高の生徒として、2年E組に編入した。
「えと…です。よろしくお願いします」
「それじゃあ、くん。キミの席は窓際の一番後ろね」
「はい」
先生に言われるままに、俺は霧野の後ろの席に着く。
「昨日のこと、パパに話しといた。今日の放課後早速見てくれるってさ」
「そう。ありがとう」
「まっアンタの昨日のシュート威力見る限りでは、かなりの戦力になるとは思うし、そのこともパパには話しといた」
霧野は先生がHRの続きをはじめたところで、そっと椅子を後ろにずらし、先生の話を聞くふりをして俺に囁きかける。
「ところでアンタ、前の学校ではポジションどこだった?」
「ああ。俺はやってた」
「そっか。じゃあ、京馬と同じだね。アイツもなんだ」
「へえ。アイツも同じポジションか」
「ちなみにあたしは--」
霧野が自身のポジションの話をしようとしたときだ。
--コツン。
いつのまにか、俺たちの席の前へと来ていたらしい先生が名簿で、霧野の頭を軽く叩く。
「いてっ!」
「霧野さん。転校生にいろいろと教えてあげるのはいいけど、今はHRの時間でしょ?お話は後にしてね」
「はあい。ごめんなさい」
クラスメイトがクスクスと笑う中、真ん中の席にいた京馬と目が合う。
京馬は霧野に向かってはっきりと口の形で「バカ」と言った。
霧野にもそれは俺同様に目にとまったらしく、小声で「余計なお世話」と先生が後ろを向いた先に、京馬に向かって舌を突き出す。
「2人ともけっこう仲いいんだな。もしかして、おまえら付き合ってんの?」
「んなっ?!そっそんなわけないだろ!あっあたしがアイツなんかと!アイツとはただの腐れ縁!中学からずっと同じ学校でクラスだったんだよ!」
「きーりーのーさぁん!」
「はうっ!せっ先生!ごめんなさい!」
おもわずといったところだろう。
霧野は俺のさりげない言葉に、顔を真っ赤にして反論し、つい声を荒げてしまったようだ。
先生に二度目の指摘を受け、さすがに今度ばかりはおとなしくなった。
俺は小さくうなだれる彼女の背中を見つめながら、ちょっと悪いことしちゃったかな?と思うのであった。
※ ※ ※
--放課後。
「今朝はごめんな。俺が変な詮索したせいで」
「あーだから、もういいってば!何度も謝んなよ!それよか、ここがサッカー棟。たぶん、パパもうミーティングルームにいると思うから、ちょっと待ってて」
京馬は日直の仕事で少し遅れて顔を出すからと、俺たちに託て教室に残った。
俺と霧野は霧野の父である霧野蘭丸監督に会いに一足先に、サッカー棟へと来ていた。
霧野がサッカー棟は部屋多いからって、入ってすぐのフロアに俺を置いて霧野監督を探しに中へ入っていてすぐ。
「あー!くんだあ〜」
聞き覚えのある明るい声に、あっとなって振り返れば、スポーツバッグを肩に提げた神童先輩が俺の隣へ駆け寄ってくるところだった。
「神童先輩。どうしたんですか?霧野に会いに来たんですか?」
--霧野なら、今監督を呼びにいきましたよ。
そう続けようとしたが、それよりも先に神童先輩は大きく首を左右に振り、大きな声で一言。
「た〜く〜は〜」
「はい?」
「だからね、くん。私の名前は拓葉なの〜!拓葉って呼んでよぉ。神童先輩はやだあ」
プウッと頬を膨らませて小リスみたいだ。
ホント、この人可愛いよなあ。とか思いつつ、俺は気持ち頬を染めつつも遠慮がちに早速「拓葉…先輩?」と呼んでみる。
「うん。よろしい」
俺がちゃんと名前で呼んであげたことが嬉しかったのか、拓葉先輩は満面の笑みで俺を見上げ笑ってみせた。
「ところで拓葉先輩は--」
俺が再び最初の質問に戻ると今度はサッカー棟の奥の方から、霧野の俺を呼ぶ声がした。
「〜!パパ、連れてきたよ〜!」
「おっ!おまえが、蘭花が言ってたか。へえ〜」
霧野と同じ長い綺麗なピンク色の髪をしっぽのように一括りにして垂らし、霧野とは対照的なほどに澄んだ透明感のある緑がかった切れ長な青い瞳で人を射抜くような視線で俺を見つめながら、彼…霧野監督は俺の前へと姿を見せた。
(うわあ〜…すっげえ!かっこいいっつーか、美形って言葉が似合うよなあ。この人。やっぱ親子だよなあ。霧野にそっくりだ)
俺がボーッと憧れの霧野蘭丸を見つめていると、隣で拓葉先輩が存在感をアピールするかのように声をあげた。
「あっ蘭丸さんだぁ!お久しぶりでーす!」
「あ?拓葉じゃないか。なんでおまえがここにいるんだ?部活は?」
「あー。やめてきました!今日から、蘭花と一緒にマネージャーするんです。よろしくお願いします。蘭丸さん」
ぺこりと頭を下げ、拓葉先輩は霧野監督に挨拶をすると、隣に立つ霧野へと笑顔を向ける。
「蘭花もよろしくね」
「って!アンタ!本気だったの?」
「うん!だってくんと一緒の部活になりたかったんだもん」
「うー…もおっ!勝手にすれば!」
「ホント、そういうとこ神童そっくりだよなあ。アイツも一度スイッチ入ると周り見えないとこあったから」
--とくに恋愛に関してはさ。
「せいぜいがんばれよ。〜拓葉の父親、めちゃくちゃ手ごわいぞぉ」
「え?何がですか?」
霧野監督がぼそりと霧野に小声で呟いてた言葉が聞こえず、俺は何をがんばれというのか?と首を傾げる。
ただ、霧野は父親の囁いた言葉にボンッと顔を真っ赤にして、物凄い目でなぜか俺と拓葉先輩を睨みつけるのだったが--。
「じゃあ、奥でユニフォームに着替えて、グラウンドな。それと蘭花」
「何?」
「とおまえ、そして拓葉の分。3人分のユニフォーム出して着替えて来い」
「え?あたしらも?」
「ふえ?」
「にはスペシャル入部テストやらせてやるぞ〜」
「はっはあ?」
楽しそうに笑いながら「そうだ。神童今来れっかなあ」とかポケットから携帯を取り出すと、空いてる手でハンチング帽を被り直し、外へと出て行くのであった。
「ねえねえ。蘭花〜。私も入部テストしろってこと?」
「たぶん、の相手しろってことでしょ?でも、なんであたしらが」
「え?ちょっと待てよ!俺の実力計るのにおまえらが出んの?」
「らしいよ。とりあえず、ユニフォーム用意するから、すぐに着替えてグラウンドで合流ね」
「わあ〜蘭花ちゃんやお父様たち以外とサッカーするの久しぶりだから楽しみだなあ」
「パパったら何考えてんだか」
俺にユニフォームを一式よこすと、2人は俺を置いて隣の女子更衣室へと消えていった。
(女の子2人相手に入部テストって何するんだろ?)
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