僕の彼女にはヒミツがある
1.必然的な出会い?それとも?
「10年ぶりだなあ。ここへ戻ってくるのも」
両親を早くに亡くし、俺は今まで父方の祖父母によって育てられていた。
あれから、10年--。
俺は家庭の事情から、ここ雷門高へと転入してきた。
「ここなら、ばあちゃんの見舞いにも歩いていける距離だし、それになんたってサッカーの名門高だもんなあ。明日から楽しみだ!」
俺は地図を頼りに雷門高に隣接する寮を目指して歩きながら、10年ぶりに見る町並みを眺める。
「ずいぶんと団地が増えたなあ。京馬と遊んでた公園も今はマンションか…。あの河川敷はまだ残ってるかなあ」
少しだけ寄ってみよう。
そう思って、大通りをはずれ、すっかり変わってしまった景色の中に微かに残る昔の面影を探しながら、記憶を頼りに河川敷へと向かう。
「だから、返せって言ってんだよ!」
「はあ?聞こえねえなあ?」
「もういいよぉ。蘭花、諦めて帰ろう?ボールならお父様に頼めば新しいの買ってもらえるし。ね?」
「ヤダ!あれは…あれはパパとママの大切な思い出のボールなんだ!あれの代わりはどこにもないんだ!取り返さなきゃっ」
「蘭花!」
河川敷を見下ろせる橋桁のところまで辿り着いたときだった。
2人の少女が、いかにも柄の悪そうなお兄さんたちと揉め事を起こしているっぽい。
1人は負けん気の強そうなポニーテールの女の子。
もう1人は見るからに大人しめなゆるふわウェーブが印象的な女の子だった。
「このっ!」
ドカッ!と勢いよく次の瞬間。
ポニーの女の子の足蹴りが男の背中に炸裂。
男の1人はもろくも膝をつく。
それを見て、相方のへらへら顔がマジ切れモードにチェンジ。
「ってえ!」
「おいってめぇ!やりやがったな!ったく!おとなしく付き合ってくれりゃ、痛い思いしなくてすんだってのによぉ。ぶっ殺すぞ!」
(うっわあ〜雲行き怪しくなってきたなあ…ったく。仕方ないから助けてやっか)
どう考えても、このままじゃ彼女らがただですまされるはずがない。
俺は見かねて、河川敷へと駆け下りていくのだが--。
「うぎゃっ!」
「ぐおっ!」
「がはあっ!」
(あれえ?俺の出番…どこ?)
俺が駆けつけるよりも早くに、自分に襲い掛かってきた3人の男をあっさりと蹴り倒すポニーの少女。
(つっつええー…)
おもわず、引きそうになった。
「ったく!どうしてもあたしらに付き合ってほしいってんなら、せめてウチのパパくらいにかっこよくなくちゃ。さてと…ボールはぁ」
パンパンッと両手を軽く叩き、ポニーの少女は、少し離れたところでうっとりと自分に見惚れているゆるふわウェーブの少女へと振り返る。
「あっ危ない!」
一瞬の隙をついて、ノックダウンされたと思っていた男が立ち上がり、ポニーの少女の足首を掴んだ。
「キャッ!」
「蘭花!」
ズルッと足を掬われ、地面におもいっきり前のめりに倒れるポニーの少女。
「さてと…さすがの武闘派少女も、力で押し込まれたら抵抗できねえよなあ」
「くっ!このっ離せ!」
「蘭花!」
「おっ!巨乳のお姉ちゃんは俺たちと遊ぼうなぁ」
「いやああっ!蘭花ー!!」
「拓葉!こらあっ!拓葉を離せー!!」
「俺たちをいたぶった罪はきっちりと体で返してもらうぜぇ。あのお姉ちゃん共々にな。連帯責任ってヤツだ」
「ダメッ!拓葉だけは!拓葉だけはやめてーっ!」
「蘭花っ蘭花ー!!」
「ほらほら、あんまり大きな声出しちゃったら、誰か来ちゃうだろおが、よっ!」
「ぐっ!」
(くそっ!マジでやばいぞ!しかも、近くに人いなさそうだし)
男たちは2人を羽交い絞めにすると、人気のないところへと2人を引きずっていく。
(くっ!)
他に助けを呼ぶ暇もない。
俺は1人でも2人を助けようと駆け出したときだった。
コツンと足元に触れたのは、ポニーの少女が取り返そうとしていたサッカーボール。
「おっラッキー!これさえあれば!」
俺はサッカーボールを足で掬い上げると、頭上高く蹴り上げる。
そして--。
「おーい!そこのお兄さんたちー!ちょぉっといいですかあ?」
「あ?なんだ?てめえ」
男たちが振り向くと同時に、俺の眼前に下りてきたボールを渾身の一撃で蹴りつける。
「その子らより、もっといいもんやるよ!受け取りやがれ!」
ドオォォォン!と激しい轟音を伴い、ポニーの少女を捕まえてた男の顔面へとそれは見事にヒットした。
「ぐはあっ!」
男が倒れると同時に、少女は拘束から解放され、すぐさま友達を両サイドから抱え込む男2人へと飛びかかり、容赦ない一撃が炸裂。
「死ねえっ!変態ども!!」
(あーあ。いくらなんでもやりすぎだろ)
その後も少女のおさまらない怒りは、彼らへと容赦なく浴びせられるのであった。
(まっいいか)
俺は2人がもう安全だと確認してから、そのまま河川敷を去るのであった。
まさか、その後すぐにまた2人と再会することになろうとは--。
その時は思いもしなかったけど。
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