少女は小さな夢をみる それはとてもささやかな夢を でも、きっとその夢は叶えられない だってその夢は1人じゃ叶えられないものだから あの頃は1人でも叶えられる夢だった けどね 『あなたと出会ってしまったから』 少女の描く未来に小さな夢が重ねられた 『あなたと一緒に…叶えられたらいいな』 あなたが隣にいる未来 あなたと一緒に叶えたい幼い頃からの私の夢を
それは、あなたと叶えたい小さな夢で
「ねえ、拓也は進路どうするの?」 「え?俺…俺はそうだな。勉強嫌いだし、就職する!」 「あなたねぇ…ずいぶんといい加減な」 「うっせえ」 「で、輝二はどうなの?」 「俺はとりあえず大学進学考えてる。まだ先のこととか考えてないしな。大学行きながら、考えようと思ってる」 「ふぅん。まあ、拓也よりかはちゃんと考えてるわよね。やっぱり」 「なんだよ!俺だっていちおう考えてるんだぞ!先のことくらい…」 「へえ、たとえば?」 「う…とぉ〜それは…」 ひょいっと私たちの会話に顔を覗かせ、輝一くんは自分の出した質問に、真っ赤な顔で輝二をちらちら見ては、口ごもる拓也を楽しそうにからかう。 「おまえたちには内緒だ!」 逃げるように席を立つと、拓也はそそくさと進路希望先を書いた紙を持って、先生の待つ教卓へと行ってしまった。 「それで…おまえたちはどうなんだ?」 「私は…パパのお店を継ぐつもりだから、やっぱり調理師免許取得のために専門学校かな?」 「え…でも、泉。パティシエールになりたいって昔、言ってなかったっけ?」 「あ…うん。そうなんだけど…。でも…そうなるとパパのお店が、パパの代で終わっちゃうから。パパとしては、私が婿養子でもとって、それで」 そこまで言ってから、私は慌てて口を噤んだ。 ちらりと横目で輝一くんの顔を見つめながら、グッと言葉を呑みこんだ。 「泉?」 「それよりも輝一くんはどうなの?やっぱり、お母様を楽にさせてあげたいでしょうし、就職するんでしょ?」 「あっうん。いちおうそのつもり。今もバイトはしてるけど、それでも最終目標は母さんにのんびりしてもらいたいからね。母さんは自分にかまわず、好きな道選べって言ってくれてるけど。でも…」 「おまえの母さん、まだ入院してないのか?」 「あ〜うん。先生にも無理するなって言われてるんだけど、なかなか入院を決めてくれなくてさ。通院しながら、まだ働いてる」 「そうか。それは困ったものだな」 「輝二からも言ってくれたら、母さんも少しは考え直すんじゃないかな?」 「だといいんだが。なにせ、俺たちの母さんだからな」 --俺たちの悪いとこ。辛いことを1人で無理して抱え込むところなんて、母親譲りだし。 「まず、素直に頷きそうにないよな」 「だね」 と、輝二は苦笑しながら、困ったもんだ。と輝一くんに言えば、輝一くんもまた、そうだね。と同じように苦笑してみせる。 「とりあえず、話だけはしてみよう。俺たち2人で説得すれば、首縦に振ってくれるだろうし。その方が、輝一も安心だろ?」 「うん。もうばあちゃんみたいな思いしたくないし。母さんの病気は今、入院すれば高い確率で治るって先生も言ってたから」 「だったらなおさらだな」 そう言ってから、輝二もまた進路希望を書いた用紙を手に、先生の元へと届けに席を立った。 残された私と輝一くん。 輝一くんは輝二の席に腰掛けながら、斜め前に座る私へと「どうしたの?」と唐突に話し掛ける。 「え?何が?」 まるで何もかもお見通しのようなその口調に、私は慌てて視線を外し、目の前の空白のままの進路希望の用紙を見つめた。 「泉。俺に何か隠してない?」 「え?そんなこと…ないわ」 「俺になにか言いたいことあったら、隠さずに言ってよ。これでも俺、泉の彼氏のつもりなんだけどな」 「わっ私だって、ちゃんとそれは分かってるよ!だって、あなたに告白したの私からなんだし」 「ちょっと外で話そうか?静かにしてる分には教室でてもかまわないって先生も言ってたし」 そっと私の肩に手を置いて、輝一くんが私に囁いた。 私は空白のままの進路希望の用紙をそのままに、輝一くんと連れ立ってわいわいと賑やかな教室を後にした。
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