「泉のお父さんってさ、イタリア料理店やってるんだよね?」 「ええ」 「それで、泉は小6の頃、みんなで将来の夢のこと話してたとき『私ね、大人になったら、パパのお店でおいしいデザートを提供するパティシエールになるの』って楽しそうに俺たちに話してたよね?」 「ええ。そんなことも言ってわね。昔は」 「なんで、急に調理師としての道を選んだの?キミのお父さんに何か言われた?」 「え?あっううん!そんなこと」 廊下に出れば、まだ授業中の時間と言うこともあって、やけに外は静まり返っていて、私は輝一くんと一緒に、屋上へ上がりながら私の父のこと、お店のこと話してた。 本当は話したくなかったんだけどな。 とくに輝一くんには---。 だけど、彼は本当に人の心を読むのがうまい。 私の隠し事なんてすぐにバレちゃう。 彼は屋上のドアを開け、そのまま壁に寄りかかると、真っ青な空を仰ぎ見ながら、自分の今考えてること、本音を打ち明けてくれた。 「隠さなくていいよ。実際、俺言われたし。ほら、1週間前のこと。覚えてる?俺が泉の家へ遊びに行った日のこと。ご両親がお店でお仕事してたから、夕飯の支度、泉がしてて俺が手伝ってたじゃない?」 「あっうん。覚えてる…けど」 「それさ、キミのお父さんが見てたらしくて。キミが席外したとき、聞かれたんだ。『キミはウチの子と付き合ってるのか』って」 「え?あ…ウソ!やだ!パパったら…ごめんなさい!何かひどいこととか言われなかった?ウチのパパ、ちょっと過保護すぎるとこあるから」 「あっううん。素直に認める発言したら、普通に『やっぱりな』って苦笑されただけ。それよりもキミに話しておきたかったことはこの先で」 輝一くんは壁に寄りかかっていた背を正すと、おどおどする私へと向き直り、父に言われたという言葉をハッキリと私へと告げた。 「キミのお父さんにこう言われた。『泉とは将来一緒になるつもりで今、付き合ってるのか?それともただ好きあっての一時的な付き合いか』って」 「やっ!もおっ!パパッたら!何考えてんのよぉ〜」 顔を真っ赤にして、視線を外す私に輝一くんは真顔のまま。 「だから、俺言っちゃった。『泉がどう考えてるかは知りませんが、俺は泉とは将来一緒になりたいです』って」 「え?////」 ただでさえ、真っ赤な顔がこれ以上真っ赤になれないってくらい、真っ赤になった。 「そしたらさ、『もし良かったら、泉と一緒にウチの店継いでくれないかな?』なんて言われちゃったよ。『キミは見たところ、料理の腕は人並み以上だし、キミさえ良ければ資格とってシェフとして、いつか私の味を受け継いでくれないか』とかさ。盛り上がっちゃって」 ここではじめていつもの輝一くんの優しい笑顔が戻ってきて… 「だからさ、泉。俺、キミが本気で俺との将来のこと考えてくれるって言うなら、これから出す進路希望に『調理師の専門学校』へ通うって書こうと思う」 「あっわっ私…私は」 「それと婿養子の件も、母さんには話しておく。もしかしたら、案外その話聞いて母さん安心して入院してくれるかもしれないしさ。俺の未来が幸せなものだと分かればだけど」 スッと輝一くんの手が伸びてきて、私の頬へと触れた。 「好きだよ。泉…愛してる。心からキミだけを」 「こう…いち…。わっ私も…」 無意識のうちに溢れ出る涙もそのままに、私は輝一くんの胸の中に自ら飛び込んでいた。 キュッと彼の首に両腕を回して、精一杯の背伸びをして自分のずっと抱えていた想いを伝えた。 それは私があなたに出会って、恋をして、変わっていった昔からの小さな夢のこと。 「輝一くんと一緒に叶えたい夢。叶えたいから…卒業しても、ずっと一緒にいてください。私の未来のだんな様として」 「泉…俺でいいんだね?」 「ええ。もちろんよ。だって、私の小さな頃から描いていた夢は、あなたに出会って少し変わったわ。将来、素敵なだんな様とパパのお店を継ぐことにね。そしてね、その人はあなたよ」 そっと見つめ合い、私たちは今までにないくらい甘いキスを交わす。 ずっと一緒に---。 これからも2人一緒の未来を---。
「じゃあ、これからは泉の夢は俺の夢にもなるんだね」 「そうね。輝一くんがシェフになって、私が」 「パティシエールだろ?」 「ええ、もちろん」 教室へ戻り、私たちは真っ白な進路希望の用紙に、それぞれの未来へ必要な道へと繋がる進路を書き込み、揃って先生へと提出した。 「へえ。木村が調理師で織本が製菓の専門学校か。ってことは、将来は2人でお店でも開くつもりか?」 「「はい」」 「ハハハ。こうもあっさりと認められると先生もからかいようがないな。おまえたちの未来が楽しみだよ」 私たちの用紙が最後だったようだ。 先生はクラス分の進路希望の用紙をまとめて、教卓の上で揃えれば、終業のチャイムが鳴り響く。 「よし、じゃあこのままHRして終わりにするか」
私が自分の席へ戻ると、後ろから拓也がツンツンと私の背中をつつく。 「なによ」 「結局、何も言わなくても通じ合ったじゃねえか。良かったな泉」 「うん、ありがとう。拓也」 「何年後になるかわかんねえだろうけど、おまえらが結婚して、親父さんの店継ぐようになったらさ、俺たちみんなで飯ご馳走になりにいくから、そんときは奢ってくれよ」 「そうね。でも、その頃は拓也も輝二も子持ちだったりするだろうから、赤字にされそうだわ」 「んなっ?!///おまえなあ〜」 顔を真っ赤にして、黙り込む拓也に軽く笑みを零しながら、私は思うの。 --このこと、早くパパに伝えてあげたいなって。 きっとパパも喜んでくれると思う。 跡継ぎが決まったんだもの。 それに… 私が近い将来嫁いでも、パパの傍にいることを---。 輝一くんと一緒にね。
-end- あとがき-- 突発妄想で久々に書いた一泉。 一気に高校3年なんですが…。しかも、いつのまにか付き合ってる。(でも、なんとなく呼び捨てより、「輝一くん」呼びが好きなので、そのままに) そして将来決定。進路決定…。 泉の父がお店持ちとかは今回思いついた。まさに突発俺設定。 輝一くんを婿養子にしたかっただけです。(え?) んでなぜか、輝一くんの母さんが今までの無理がたたって入院しなくちゃいけないとか? アフターとして、輝二さんの説得と、輝一くんが泉ちゃんと結婚前提で将来設計こみでの進路を決めたことに安堵した母さんは、おとなしく入院を決めてくれたようです。 そして、輝二の頼みもあって、元旦那が輝一に無期限で入院費を貸してあげたのでした。(つまり、遠まわしに返さなくていいと) ちなみに、ここでの拓也はデフォにょたでも、本来の男の子としても読めるように、うまく性別を包み込んでみたのだが…。 だから「拓也と輝二も」でなく、「拓也も輝二も子持ち」としてみたのですけど… 2011/5/2 |