| 「テストの点数が良かったらデートしてやっていい」 どうせとれるわけないと決めつけて双子と交わした約束。 「ほっぺにチュウくらいのおまけもつけてやるぞ」 ちょっと大きく出た約束が、まさか本当に実行しなくちゃならなくなるなんてな。 最初は物凄く後悔してたのに、なんでかな? いざ、約束してどこで遊ぶとかそんな話するようになってから、次第に楽しみになってく俺がそこにはいて---。 考えてみたら、俺。デートなんてもんするの生まれてはじめてかもしれない。 結局、あの泉との一日デートってのも、俺の体の異変騒動がきっかけで幻になったわけだしな。 だからかな? こんなに気合いれて準備してるの。 朝、いつになく早く目が覚めて、母さんに手伝ってもらって3人分の弁当作って、滅多に着ないよそゆきの可愛いフリルのついたスカートとか自分で引っ張り出して履いてみたり、慣れないメイクとか泉に教わったとおりにしてみたりとか、ピン跳ねする髪をなんとかしようと鏡と睨めっこしながら格闘したりとか。 なんか自分じゃないみたいだ。 ようやく身支度を整え、鏡の前で改めて完璧な女になりきった自分を見つめながら、ちょっとだけ満足げに微笑む。 (これだけ女らしくしとけば、アイツらと一緒に歩いていても、バランスとれるよな?) ぼんやりと輝二と輝一と一緒に、楽しそうに笑う自分を想像し、顔に熱があがるのを感じ、ブルブルと顔を左右に振る。 「さてと…そろそろ時間的にも」 ふと時計を確認。そして気づく。 それは、とんでもないミス。
ツンしてデレてキスもして!
「やっば!余裕もって準備してたはずなのに〜!これじゃ完全遅刻じゃねえかよ〜!」 待ち合わせ場所に指定された、昔よくみんなで集まっていた公園へと向かいながら、俺は携帯電話を開く。 「10分は遅刻確定だな。電話した方がいいかな?」 でも、どっちに? ふとそこで思考が止まり、アドレス帳にあがる2人の名前のどちらかを選ぶかで迷ってしまう。 「くっそ!考えてる時間が惜しい!もういいや!向こういったら直接あやまろ!」 再び猛ダッシュですれ違う人たちを器用に避けながら、見えてきた公園へと飛び込んでいく。 「あっ拓也!」 「やっと来たか」 「ごっごめん!支度に手間取っちまって…アハハ」 とりあえず笑って誤魔化す。 輝二はともかく、輝一は優しいからこれで許してもらえるはずと思って、2人の反応をこっそりと上目遣いに見る。 「まあ、仕方ないよね。拓也もいちおう今は女の子なんだし」 「いっいちおうはねえだろ」 「ごめんごめん」 予想通り、輝一はあっさりと笑顔で許してくれた。 そして俺的厄介だと思われる輝二はというと---。 「それなりに女らしくしてきたようだしな」 「んぎゃっ!あにすんだよ!バカ!!」 いきなり背後から俺のスカート軽く摘み上げやがった。 おもわず、ブンッと右手を振り上げるも、さらりと交わされた挙句に、その右手を見事にとられ、引き寄せられると同時に耳元に囁かれる輝二の甘い声。 「とりあえず、ちゃんとすっぽかさずに来たんだし、許してやるよ」 「ふえっ////」 反射的に顔が真っ赤になってしまう。 (あれ?怒られなかった。てっきり今までみたいに「時間にルーズすぎ」とか「遅刻癖なおせ」とか言われるかと思ってた) 俺が男だった頃、みんなで会う約束をして、たまに遅刻とかしちまうことあって、そのたび(とくに輝二)に嫌味とか言われたり、怒られたりしてたんだけどな。 やっぱり女相手だと甘くなるのかな? なんて思いながら、目の前の2人を改めて見直せば、やっぱりあの頃から数年経ってるだけあって、制服の時とは違う私服ならではの個性が、2人の元々の整った容姿を際立たせてかっこよくみせている。 (やっぱ、俺と違ってホント、コイツらかっこよすぎだよなあ) つい見惚れてしまっていると、ふと輝一が俺のことを見て輝二に向かっていった言葉が耳に届き、褒められた嬉しさと恥ずかしさに、またほっぺに熱が上がるのを感じた。 「それに予想してた以上に、今日の拓也可愛いね」 「だから言っただろ?この賭けは俺の勝ちだな」 「仕方ないね。じゃあ、最初の権利は輝二に譲るよ」 (なに?今、輝二の口から『賭け』とか聞こえたぞ?コイツら、俺の何を賭けたんだ?) 俺がきょとんとしたまま、2人を見つめているといきなり、輝二が俺の目の前の視界をその体で遮ってきた。 つまりはいきなり抱きしめられたってこと? 「うわっ!なっなにすんだよ!バカ!!ひっ人が見てんだぞ!恥ずかしいだろ!やめろっての!!」 「本当はキスの1つくらいしたい気分のところを、抱きしめることで我慢してやってんだから、おとなしく抱きしめられてろ」 「んなっ?!」 「あ〜あ。まさか拓也がこんな女の子らしい服持ってたなんて、失敗したなあ。やっぱり自称恋人を名乗るだけあって、輝二の方が拓也のことちょっとだけ詳しいみたいだね。はい!輝二〜。抱きしめタイム、終了〜」 ぐいっと輝一の手が俺と輝二の間に割って入ってきたかと思うと、いきおいよく引き離されたと同時に、さりげなく俺の右腕に絡まされる輝一の腕。 「それじゃあ、出かけようか?拓也」 「うっうん」 「今日ぐらいは男の部分押さえろよ。いちおうデートなんだからな」 「おっおう!任せとけ!」 今度は左腕に輝二の腕が絡んできて、俺は身動きがとりづらくなってしまった。 なんかこれって警察官2人に挟まれ、署に連行されてく犯人の構図に見えてきた。 「あっあのさ…この体勢、歩きづらくね?」 「そう?」 「俺は気にならないが」 「俺が気になるんだよ!頼むから、せめて手つなぎくらいにしてくれねえか?」 「どうする?」 「輝一がそうするなら、俺はかまわない」 「仕方ないか。拓也は手つなぎがいいんだよね?」 「ったりめえだろ!これじゃあ、歩きづらすぎだっての!」 渋々ながらも両サイドに絡まっていた腕が離れ、代わりに手と手を取り合っていく。 いくつかの年が過ぎて、周りの景色が少しずつ変わっていくように、俺たちも変わってたことを重ね合わせた手の大きさの違いで思い知らされる。 身長だけでなく、体格的な違いまでもがこんなにも違くなってたなんて、ちょっと悔しい。 もうあの頃のように同性同士じゃないんだから、いろんなところで負けてしまっているのは仕方ないことなのに、やっぱり同等の立ち位置でいたい俺からしてみれば、この目に見える差はちょっと悲しすぎる。 おもわず2人の手をギュッと強く握り締めていた。 「どうした?」 「なんかあった?」 「え?あっいや…なんでもない。行こうぜ」 2人にもっと近づきたいのに…届かない距離がもどかしい。 なんで、こんなこと思うんだろ? 俺、やっぱり2人のこと、好き---?? 2人の手を引いて、一歩踏み出したときだった。 ブワッと一陣の風が吹き、俺は2人と手を握ってたこともあり、捲れ上がるスカートの裾を押さえるタイミングを一歩遅らせてしまうという手痛いミスをかます。 「うぎゃっ!みっ見た?今の…見ちまったか?」 顔を真っ赤にして、サイドの2人を交互に見れば、意外にも2人ともあからさまに見ましたって感じの顔で、ほんのりと頬を染めながら、俺の視線を意図的に逸らしているじゃないか。 「ごめん…見るつもりはなかったんだけど。なにせ、丸見せ状態だったから」 「まあ、事故は事故だよな…。怒るなよ」 「う…まあ、仕方ないよな。今回は」 「それにしても…意外だよな?」 「だよね。拓也にしては、ずいぶんと可愛らしい白地に」 「ピンクの縞模様とはな」 「てっきり今回もスパッツ履いてきてるものだと思ったよ」 「胸はともかく、足はスラッとしてて綺麗だったんだな。おまえ」 「バッバカ!そんな感想いらねえんだよ!さっさと行くぞ!もおっ!」 からかわれてるのか、本気で言われてるのか分からないまま、俺は逃げるようにして2人の手を引いたまま、駅へと向かって歩いていくのであった。
あとがき-- とりあえず、タイトルが『ツンデレ』…つーか、普段の拓ちゃんそのままなんですけど…。 過去のカプ書いてる過程で不思議とツンデレるにょた化受子がいなかったこともあり、拓ちゃんは気がつけばツンデレ全開な子になっていた。 でも、輝二さんにはツンデレにゃんこ体質に対して、輝一さんと2人きりだと従順わんこ体質になるんですよ。 (不思議な夢みた感じでは一拓♀はそんなノリだった。にしても、なんで一拓♀夏祭りの夢?) そして、後編につづく。 2011.4.9 |