| お茶を買って戻る。 「あっそういえば、あ〜んして食べさせるとかなんて約束しちまってたんだよな。俺…」 せっかく冷めた熱がまた上がって…今日はなんか俺、常に微熱状態で落ち着かない。 軽く頭を左右に振ってから2人が待ってる場所へと駆けて行く。 2人の後ろ姿が見えてきた途端、おもわずその先の入りづらい光景を目の当たりにしてしまい、足を止めてしまう。 (あっあれって…まさか、逆ナン??) 俺よりずっと可愛い感じの女子が3人ほど。 なんか2人にしきりに話しかけてるのが遠目に見えた。 2人がどんな顔して、応対してるのかはここからも分からないし、何を話しているのかも聞こえない。 ただ、ハッキリしているのは、やっぱり中途半端に女な自分より、あの子たちの方がずっと女の子だってこと。 おもわず、後ずさりしてた。 手先が滑って抱えてたお茶缶が1つ、アスファルトの地面に転がり落ちて軽いカツンって音を立てた。 「あっ!拓也!!」 「拓…っ」 輝一と輝二が俺に気づいたのと同時にまた逃げ出していた。 背後から女の子の「え?何??もしかして、アイツ…男?ウッソ!マジ?女装男子って奴?ありえねえ!」と大声で笑う声が聞こえ、そして次の瞬間。 「ふざけんな!アイツは正真正銘の女だ!名前は男名だけどな!おまえらなんかより、ずっと女らしい俺の彼女なんだよ!」 「輝二の…声?」 「ごめんね。さっきから何度も言ってたことだけど、俺たちその彼女とデート中なんだ。だから、さっさと帰ってくれないかな?」 「輝一も…」 (俺なんかのために…) 足が止まっていた。 振り返ることはできなかった。 けど…。 「拓也…」 そっと背後から輝二が俺を抱きしめてきた感触に、おもわず首だけを後ろへと向ける。 「輝二…」 「気にするなよ。あんな奴らの言うことなんて。おまえは…俺にとっては一番最初に本気で惚れた女なんだからな」 「うん」 輝二の俺を抱きしめる手が緩んだ一瞬、俺は振り返りしっかりと輝二の体を抱きしめていた。 「俺も…輝二が…一番最初に本気で好きになった奴だから」 腕に抱えていたお茶缶、残り2つまでも地面に落としてひしゃげさせてしまったけど、でも…それ以上に今は自分の気持ちに素直でいたくて、輝二のこと抱きしめてた。 少し離れたところで、呆れたようにため息をつく輝一の姿が、輝二の肩越しに見えて、ちょっと悪いことしてるように見えて、すぐに輝二から離れる。 そして落としたお茶缶を3つ拾い上げると、輝二と一緒に輝一の元へと戻っていく。 輝一は少しだけ困ったように笑ってはいたけど「やっぱり、最後はこうなるのかな?」なんて小さく呟き捨てた後、俺の頭を軽く撫でてきた。
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--帰り道。 どことなく、朝のような3人一緒の空気が薄れ、輝一はどことなく俺たち2人に遠慮してるような状態になっていた。 輝二もまた、最初ほど俺にベタつかなくなって、なんか3人の空気がぎこちなく思えて、苦しかった。 どちらかを選ぶということは最終的にはこうなることなんだろう。 そんなの辛い。 輝二のことも輝一のことも大好きだ。 でも、どっちかを本気で求め、愛し合えた結末が、どちらか一方を深く傷つけることになるなら、俺はどちらも選ばない方がいいんじゃないかとさえ、思えてきた。 自分から答えは出せない。 出すのが怖い。 でも…たぶん、俺の答えは最初から決まってて---。 ただ、口に出してもう一方に伝えられなくて、こんな微妙な関係を生み出してしまっている。 傷つける側になるのが怖くて、ただそれだけで。 「じゃあ、俺…ここで降りるから。今日はありがとね。拓也」 「あっうん。それと…約束したのに、ごめんな。俺…タイミングはずした」 「キスならもうしたから…いいよ。あれで」 「でもっ」 発車の合図が聞こえて、輝一は俺の手を振り解き、ホームへと降りると閉まるドアの向こうからにこやかに手を振った。 「輝一…」 動き出した列車の中、輝一の口が何かを呟いたけど、俺には何を言ってるのか分からなかった。 でも、隣にいた輝二には分かったみたいで、そっと俺の手をここではじめて握ってきて、そっと俺の耳元に囁いた。 「今日は家まで送っててやる。荷物もあるしな」 2人で再び空いてる座席に腰掛けなおしながら、輝二はそういうと、そっと俺の頭を自分の肩へと乗せ、元気のない俺へと輝一が呟いたとおもわれる言葉を俺に囁く。 「輝一がな、さっき言った言葉。気になるか?」 「うん…」 静かに輝二の肩に頭をもたせかけながら、左手はしっかりと輝二の手を握ったままの俺を見下ろしながら、輝二は子供っぽい笑みを浮かべながら、輝一が別れ際に呟いた言葉を口にする。 「今日は俺の勝ちってことにしといてやるってさ。おまえがハッキリするまでは諦めるつもりないって言ってた」 「なんか口の動きよりも台詞長くね?」 「そうか?でも、俺にはそう聞こえた。だから」 次の瞬間、俺は輝二の胸の中にいた。 「んぎゃっ?!」 びっくりして、周囲を見回せば、一瞬だけど同じ車両に乗り込んでいた老若男女が、一斉に俺たちをチラ見してたのを肌で感じた。 慌てて、輝二の腕から抜け出れば、輝二はしてやったりな顔をしながら、今度は耳元に甘い声で囁いてきた。 「今は人目があるから、別れのキスはおまえの駅についてからしてくれよな」 「するか!んなもん!!」 俺が輝二に手を上げ、輝二がその手を器用に交わし掴んだとき、急ブレーキと共に俺が乗り換えで降りなきゃいけない駅へとついたアナウンスが流れる。 俺は再び輝二の胸の中へ勢い余って自ら飛び込んでしまったわけだが、すぐに体勢を取り直すと、荷物を抱え、一目散にホームへと飛び降りていた。 輝二を置いて。 「今日は付き合ってくれてどうもありがとうございました!それではごきげんよう。輝二くん」 嫌味なくらいに満面な笑みを置き土産に、俺は発車の合図と共に閉まるドアの向こうで、小さく手を上げ、応える輝二を見た。 (あれ?てっきり追っかけてくるかと思ってたのに) なんか拍子抜けした感じだった。 そのまま、乗り換えの電車に飛び乗り、1人寂しく自由が丘へと降り立つ。 「なんだよ。家まで送るとか抜かしといて、結局いつものとこで別れただけじゃねえか」 泉に買ってやったぬいぐるみと、自分用に輝二と輝一が買ってくれた特大サイズのぬいぐるみの入った袋を左右に、肩には空になった弁当箱の入ったバッグを掛けながら、よろよろした足取りで家の前の坂道を登っていく。 なんか一気に疲れた感じだった。 怒りたいのか、寂しくて甘えたかったのか、よく分からないまま歩いていく。 家が見えてきたところで、誰かが塀に寄りかかり佇んでいるのが見えて、俺は「え?」となった。 「あっ思ったより遅かったね。拓也〜」 「輝…一?」 「うん。あの後さ、すぐに別の路線に乗り換えてさ、うまくいけば拓也より先にこっち着けるかな〜なんて思って。そしたら本当に間に合っちゃってさ。せっかくだから家の前まで来ちゃったとこ」 夕日を背にした状態で、輝一は俺の前まで駆け寄ると、速やかに俺の両手の荷物を引き取り、そしてそのまま呆然とする俺をギュッと抱きしめてきて、耳元に優しく囁きかけたのは、別れ際に呟いたというあの言葉だった。 「後で会おうね。って言ったの聞こえなかった?」 「え?だって、輝二はなんかもっと別のこと」 「どうせ、俺が諦めてないとかだろ?分かるよ、それくらい。でも、良かった。輝二がちゃんと判読してくれなくて。おかげで邪魔者なしに拓也との約束独占できそうだ。この調子だとどうせ、輝二の奴、俺が落ち込んでるの見て、遠慮したんだろうしね。ほっぺにキスもさすがに別れの車両内じゃしてもらなかっただろうし」 全部、お見通し。 そんな感じで輝一は軽く微笑むと、手にしていた荷物をいったん足元に置くと、俺の両頬へと手を添え---。 「じゃあ、約束どおり拓也のキスもらってくね」 「ふえっ?」 チュッと軽く音を立てて、輝一からされたのは頬ではなく唇。 「あっえと…なっなあ?おまえ、ずっこくねぇか」 顔を真っ赤にしながら、予想外の行動に戸惑いを隠しきれない俺に対し、輝一は再び俺の荷物を両手に下げると、家までの僅かな距離を引き返しながら、しれっとした顔で一言。 「輝二の分含めで、ほっぺから唇へと昇格ね」 だもんな。 結局、輝二にしてやられたあの分をここで帳消しにしてきたってとこなんだろうか。 やっぱり、俺…どっちもまだ選べそうにない。 っていうか、選ばせてもらえないかもしれない。 そう思った。
-end- あとがき-- このまま輝二さん優勢で終わるかと思いきや、輝一さんが締めを奪っていったという展開。 結局3Pにもつれこんだ。 後は棗先生とフロンティアメンバーの波乱のお花見ゲームつきがあるので、桜が散る前になんとか書き上げたいです。 拓ちゃんといちゃつける権利を求めて、輝二さんと輝一さんが主にがんばる。 そして泉ちゃんもこっそりと輝一くんへと野望を燃やす。 純平、友樹も密かにがんばりたいところだが、どうなるか… 2011.4.10 |