| 「やっぱさ、ヴリトラモンって鷹か鷲がベースのビーストだと思うか?」 「どっちだっていいだろ」 「まあどちらにしても、猛禽類の感じがあったのはたしかだよね?」 「そうなるとシューツモンは同じ鳥型だったけど、何がベースだったんだろ?」 「泉なら分かるんじゃないか?スピリットと会話してたんだしな」 「それを言うならさ、俺だって同じだけど。まあ、聞かなかったんだけどさ。今思えば、それくらい聞いときゃよかったかな〜。どっちだろ?」 遊園地、水族館、動物園。 とりあえず、カップルが集まるところよりかは家族連れが集まるようなところが、照れが少なくていい!って理由から、動物園を推してみた。 遊園地は乗り物に乗るのに順番待ちの列があるからって理由で、輝二があまりノリ気じゃなかったし、そうなると水族館か動物園ってなって、とりあえず今いる場所から近い方ってことで動物園になった。 小さい頃はよく母さんに連れられて、信也と一緒によく来てはいたけど、こうして久々に来てみるとまた違う見方ができて、思ってたより面白いことに気づかされる。 とくにウチは父さんが動物アレルギーということもあって、動物に触れ合う機会が少なかったから、ここの小動物と触れ合える広場が大好きで、かなりの時間をここで過ごしてしまっていたことを思い出す。 「ほら、輝二。こいつ、ふわふわもこもこして可愛いぞ」 「輝二はうさぎは苦手じゃないよね?」 「苦手じゃないが、別に触りたいと思うほどでもないしな。それに…」 輝二と輝一は俺が小さい子と一緒になって、うさぎを抱っこしてるのを遠目に見つめながら、なんか時々ひそひそと耳打ちしあっては、双子ならではの共感する何かがあるんだろう。 俺が知る限りでは何年ぶりか、兄弟らしい仲睦まじさが見えて、おもわず3人揃ってでのデートをしてみてよかったかもと思えた。 まあ、それもコイツらが話してる内容が判明するまでは、だったんだけどな。 「そういや、おまえら俺がうさぎと遊んでいるときに何話して盛り上がってたんだ?」 「ん?ああ、さっきのね。いや、輝二がさ、どうせ触るんなら拓也を抱っこしたいって言うからさ」 「んなっ?!」 「んで、俺もそれはいいね〜なんて話になってさ、拓也があそこのうさぎだったらいいのにね〜なんて話になってさ」 「とはいえ、おまえみたいな性格だと落ち着きなさそうな暴れうさぎになりそうだけどな」 「でも、うさぎ抱っこしてたときの拓也、凄く可愛かったなあ」 「おまえもあんな可愛い顔できるんだなって思った」 「お持ち帰りしたいね〜なんて話になったらさ」 「まあ、そこから先は拓也には言わない方がいいだろう。殴られるぞ」 「う〜ん。そうだね。それにここで話す内容じゃないしね」 「おっおい!いっ一体どんな話してたんだよ!え?俺の知らないところで!!まさかとは思うが、あの…え〜えと」 頭の中ではなんか恥ずかしい映像が脳裏を過ぎり、慌てて頭を振りながら、顔は真っ赤になってしまう。 2人は俺のそんな様子から、満足げに互いに笑みをこぼし目を見交わすと、これでトドメだといわんばかりに、同時に俺の耳元にそっと甘い声色で秘密の言葉を囁きかける。 「ふにゃっ?!バッバカ!!んなこと言うな!」 2人の握ってた手を振り払い、逃げるようにして走り出す。 「え?あれ…拓也?!」 「おい!拓也!勝手にどっか行くな!迷子になるぞ!」 「ちょっといじりすぎたかな?」 「とにかく、捕まえるぞ」 「あっじゃあ、せっかくだから、また賭けよっか?」 「で、今度は何を賭けるんだ?」 「そうだね。じゃあ、こういうのはどうかな?」 俺を追っかけてきた2人の声が、途中から聞こえなくなったのに気づき、俺はふと足を止め後ろを振り返る。 「あれ?輝二?輝一??」 あたりを見回せば、そこには輝二の姿も輝一の姿もなく、代わりに見えるのはぐてーっと檻の中で寝そべるライオンの姿と、それを眺めている家族連れ数名。 「はぐれたかな?…でも、まっいいか。少しは頭冷やさせないと。いや、俺が冷やすべきか?」 まだ心臓は走ってきたせいか、それともさっき囁かれた言葉の魔力のせいか、激しく動悸したままだ。 当然、顔も真っ赤で軽い微熱状態で、ちょっとクラクラしている。 とりあえず、近くのベンチに腰掛け、弁当の入ったバッグを隣に置く。 と、同時に鳴るのは俺の腹の虫。 「そういや、もうお昼なんだよな。あ〜なんか変なタイミングでアイツらとはぐれたよな。俺」 昼食にしたくても、2人と合流しなくてはどうにもならない。 ハアと疲れたようにため息をつき、真っ青な空を眺める。 「綺麗な青…なんかアイツらの瞳の色みたいだ」 どっちが好き---。 なんて言われたのいつだっけ? 最初は輝二が好きで、輝二にだけ見てもらいたくて、この体のままでいることを選んだ。 けど、いつからだろう。 輝一と一緒にいる時間が増えてからかな? 少しだけ気持ちが揺れ動いた。 輝二にはないもの、輝一は持っていて、時々それが俺にとっては輝二への不安を大きく包み込んでくれてて、迷わされた。 輝二より、輝一と一緒にいた方が幸せなのかな?って---。 輝二よりも輝一の方が俺のこと分かってくれてて、優しく包み込んでくれる。 不安も寂しさも、焼きもち妬きな心も溶かしてくれる。 でも、それでも輝二の時々与えてくれるキスも、強引だけどギュッと奪うように抱きしめてくれる感覚も刺激的で、愛されてるって思えて満たされる。 (俺、どっちと付き合いたいんだろ?) 「さあ、どっちだ?」 急に目の前が真っ暗になり、輝二とも輝一ともつかない微妙な声色で、後ろから声を掛けられ、俺はビクッとなって目隠しをしてきた手に恐る恐る触れる。 「えと…この感じ。もしかしてだけど…輝」 この静かに優しく俺を包み込む手の感じ。 これはきっと---。 「一?」 「当たり。よく分かったね?」 「ん?なんとなく。で、輝二は?」 「今、呼ぶよ」 ベンチを跨ぎ、俺の隣に腰掛けながら、輝一は携帯を取り出すと輝二へと今、俺たちがいる場所を告げる。 「すぐ来れるあたりにいるみたいだよ」 「そっか。あの…ごめんな」 「ああ。それを言うならこっちの方だよ。ごめんね。拓也」 「ぅわっ…」 いきなり何の前触れもなく、抱きしめられ、俺はびっくりして変な声をあげてしまった。 「あっごめん。驚かせちゃった?」 「あっううん。違う…ただ、輝一がこんなことするのはじめてだったから、ちょっと意外だっただけ。でも、嫌じゃないからな。心配するな」 すぐにその手は離され、ぬくもりもすぐに消えた。 なんかちょっともったいないって思ったのはなんでだろう。 「拓也!輝一!!」 「あっ輝二!あの…さっきはごめんな」 「かまうな。こっちこそ、ちょっとからかいすぎたと思ってる。すまなかった」 輝二ともちゃんとお互いに謝りあって、とりあえずまた3人合流できた。 輝一は輝二の方へと歩み寄ると、またくだらないゲームでもしてたらしい。 「俺が先に見つけたよ」 「ああ、分かってる。今度の賭けはおまえの勝ちな」 「賭け?賭けって…また、おまえらそんなこと。じゃあ、輝一っおまえ、さっきのは」 「ん?なんのこと?今度の賭けの景品はこれだよ」 「これって弁当か?」 「そっ。このお弁当のおかずを拓也にあーんして食べさせてもらう権利賭けてたんだ。そろそろ、ちょうどいい時間だったしね」 輝一は俺のバッグを指差しながら、さっき抱きしめたことの件については、輝二には内緒にしておきたいのか、適当に受け流したようだ。 しかし、輝二もこういうことになると双子ならではの勘でも働くのか、さりげなく輝一を見る目が、厳しくなっていく。 「なあ、俺が来る前におまえ、拓也に何したんだ?」 「え?別に。強いて言えば、目隠しして「だ〜れだ?」はしたけど」 「本当にそれだけか?どさくさにまぎれて拓也のこと抱きしめたりしたんだろ?」 「すげ…見抜いてやがる」 おもわず、ボロッと俺がバラしたことにより、輝一の秘密はもろくも崩れ去ったようだ。 「おまえなあ。俺だって朝の一回きりしか、拓也の体抱きしめてないんだぞ。本来なら、軽く3回くらいはチャンスあったところを我慢してたってのに!約束したよな?今朝」 「ああ。でも、ちょっとしか触れてないし。ね?」 「あっうん。俺がびっくりして声あげちゃって、そしたらすぐ離してくれたからカウントに入らねえって」 なんかまた双子の仲が険悪になりかけてきたんで、慌てて俺は輝一のフォローをしてやる。 それにしても輝二の奴、嫉妬心半端ねえんだよな。 おもわずため息をつきつつ、仕方ないと覚悟を決め、今日くらいはサービスしてやろうと俺は、さっき輝一が言ってたことを2人にしてやると約束した。 「それと、1回ずつなら抱きしめてやってもいいぞ。おとなしくしてるんならな」 「雨でも降るんじゃないか?」 「雷が落ちたりして」 「おい…今の話し帳消しにしてもいいんだぞ」 「あ…今の冗談だから。ね?輝二」 「ん?あっああ。もちろんだ」 「…ったく!今度言ったらマジでやらねえからな!」 「「了解」」 「じゃあ、飯食うか?」 そういって、俺は飯の食える場所へと2人と移動し、木漏れ日が差し込む芝生の一角へと持ってきたレジャーシートを広げ、そして大きめのトートバッグからサンドイッチの入ったバスケットとおかずの入ったタッパーを取り出し、そして自慢げにそれを2人の前で開けてみせ…うっとなった。 「嘘だろ…。せっかく綺麗に盛り付けてきたのに…形が崩れてる」 「どうした?」 「ありゃ〜少し崩れちゃってるね」 「ごめん…。なんかまずそうに見えるよな。あ〜俺、なんか変わりの買ってきてやる。水筒も忘れてきちまったみたいだしさ」 きっとさっき全力で走ってたときに、バッグをおもいっきり揺らしてしまったせいかも。 いや、それ以前からかな〜。 どちらにしても、これじゃサンドイッチとは言えないし、散乱した具を改めて挟んで食うにしても、手を汚しかねないもんな。 ガックリと肩を落とし、開いたバスケットを閉じようとする俺の手を、輝二の手が先に掴んで引き止めてきた。 「これくらい大したことないだろう。全部がばらけてるわけじゃないんだし、取り返しのつかない状態になってるわけじゃないんだ。それに…」 輝二は俺の手をしっかりと握りながら、その指先に巻かれた絆創膏に優しく唇を触れさせ、頬を真っ赤にさせてる俺をさらに真っ赤にさせる言葉をのうのうと言ってのけた。 「おまえがこんなになるまで、がんばって作ってくれた弁当なんだからな。俺たちが、食わないなんてことないだろ?」 「そうだよ。拓也。まさかキミがこんなことまでしてたなんて知らなかったから、ホントびっくりだけど、その倍嬉しいんだ。だから、どんな状態になってても、これはありがたく頂戴するよ」 「輝二…輝一。うん、ありがとな。こんなんで良かったら全部食ってもいいんだぞ」 「「それじゃあ」」 「うん。召し上がれ」 「「拓也も」」 「う…うん。そうだな」 「「食べていい?」か?」 「うん。じゃあ、俺も遠慮な…く?」 なんか今、コイツら、俺にも「食べろ」っつーか、俺を「食べていい?」とか聞いたか? サンドイッチへと伸ばしかけた手をとめ、恐る恐る2人を見れば、くだらない悪戯を引っ掛け、見事にそれにターゲットが引っかかったことに無邪気に喜ぶ子供のように、2人は俺を見て優しく微笑むと、いきなりサイドから両腕を引っ張られ、俺は2人の間に飛び込む形で前のめりに傾いた。 「ひぁっ?!」 同時に両頬に触れる唇の感触に、おもわず奇声をあげてしまう。 「ごちそうさまでした」 「今日はこれくらいで我慢するか。食べたりないけどな。拓也を」 「んなっ?!おっおまえらな!!」 「じゃあ、今度はちゃんとした昼食をいただきますか。ね?輝二」 「ああ、そうだな」 揃って「いただきます」と言って、今度は普通にサンドイッチに手を伸ばす2人を後目に、俺はスッと立ち上がると「おっお茶ねえから、買ってきてやる」と言って逃げるようにその場を離れた。 高鳴る鼓動も、熱のこもったままの体も今は知られたくないから、冷めるまでちょっと2人から離れていたい。 こんなにも2人を意識してる自分がいるなんて、知られたらきっともっとアイツらを調子づかせかねないし、俺も本当にどっちも選べなくなってしまいそうで、そんな優柔不断な自分が嫌になりそうで、でもずっと3人こうしていたいかもって我侭もあって、混乱してた。 (俺…やっぱ、男に戻ってた方が良かったかもな) 男として今この場にいたら、きっとこんなにドキドキしなかったかもしれない。 普通にこのひと時を楽しんでいたかもしれない。 どっちかなんて選ばなくて済んだかもしれないのにな。
こんな立場にされて、はじめて後悔していた。 女として生きる道を選び取ったことを---。
あとがき-- ツンが思ってたより、ない…。デレてデレてチュウじゃね?な展開に…。 あれぇ?ツンデレ女王どこへ消えたw 本来、2P止まりだったんですが、なんか3Pまで行きそうな長さに… しかも若干、シリアスなんですが? まあ、双拓♀だし、拓ちゃんがどっちつかずで揺れてないと面白くないし、これが一番双拓♀らしい展開なのかな?って気もするが、デレてばっかなのがちょっと…。 2011.4.10 |