「さあ、選んでもらおうか?」

「拓也は俺と輝二どっちと付き合うの?」

「ちょっちょっと待て!なんで急にそんなこと言われなくちゃいけないんだよ!」

「いいから、はっきりするんだ。俺と輝一、おまえはどっちを選ぶんだ?」

「もちろん、俺だよね?拓也」

「俺だよな?拓也」

「拓也」

「拓也」

 

ねえ、どっちが好き?

 

「拓也!」

「んん〜…どっちか選べなんて俺にはまだ…選べにゃっ?!」

ブワッと体が浮き上がる感じがした次の瞬間、俺はものの見事にフローリングの床に這いつくばっていた。

「っで!!」

「いつまで寝てるの!遅刻するわよ!!」

「え?あれ??輝二と輝一は??」

「何寝ぼけてるのよ。輝二くんも輝一くんも学校に行かないと会えないわよ。分かったらさっさと支度しなさい。電車乗り遅れるわよ」

「はあい」

寝ぼけ眼のまま、時計を見る。

「って!後30分もしたら電車いっちまうじゃねえか!!」

「だから早くしなさいって言ってるんじゃない。輝二くんだの、輝一くんだのと男の子の夢なんか呑気に見てる場合じゃないのよ。あなたはね」

ベッドを整えながら、にやりと笑う母さんを後目に俺は大急ぎでパジャマを脱ぎ捨て、制服へと袖を通していく。

 

「いってきま〜す!!」

「ほらっ!拓也!お弁当!!それと頭すごいことになってるわよ!」

「あ〜これは電車の中で何とかするからいいよ!じゃっいってきま〜す!」

「もおっ…いってらっしゃい」

10分後には朝ごはんもそこそこに家を飛び出す俺がいた。

考えてみたら、高校へ入学してから2年になるけど、余裕持って学校へ通ったのって入学して最初の3日くらいだったかもしれない。

何とか電車に間に合い、一息つきながら寝癖で爆発している頭を手ぐしで適当に直しながら、ふと今朝の夢のことを思い出す。

(なんか変な夢だったなあ。アイツらに迫られるなんて…ありえないだろ?)

もう少しで電車の乗り換え。ちゃんとした時間に乗ってれば輝二と乗り合わせるんだよな。

(まあ、遅刻寸前の今となっては一度も会ってないけどな)

なんて考えながら、乗り換えの電車が到着するホーム目指して階段を駆け降りて行く。

そして---。

電車の到着を待つ駅のホームで俺は見知った後ろ姿を見つけ、おもわず「嘘だろ?」と思った。

「え?輝…二?」

まさかの輝二が立っていた。

「なんだ?俺がいたらおかしいか?」

「あっいや、だってさ。この時間だとギリギリだぜ」

「まあな。駅についたら猛ダッシュしないと正門閉められるな」

「って!そういう話してるんじゃなくて、なんでおまえがこの時間にいるんだよ!!いつも、一本早いので行ってるおまえが!まさか、寝坊?」

「…どうだっていいだろ」

なんか凄く不機嫌そうに返された。

でも、気持ち顔が赤いような気もしなくもないな。

もしかして図星だったとか?

俺が顔を覗き込めば、視線をはずし顔を合わせようとしない。

結局、学校の最寄り駅に着くまでの間、俺は輝二の視線を捉えることができなかった。

「おまえ、毎朝これやってんのか?」

「もう日課だな。完全に」

改札口を抜け、人ごみの間を器用にぬって、外へと飛び出す。

まだちらほらと同校の生徒が大通りを走っていく姿が見える中、俺は輝二に細い路地裏の方を指し示して、先を走っていく。

そこから裏山へと出れば学校までの道は一本道。

全力で走っていけば10分もしないうちに辿り着けるという、俺だけが知っている近道を一緒に並んで駆け抜けながら、輝二は呆れたように笑っている。

「たまには早起きしてみろよ。それに…」

学校が見えてきたところで、輝二は腕時計を確認し、走るのをやめ立ち止まる。

「なんだよ?」

俺もまた、足を止め、少し後ろで佇んでこちらを見ている輝二へと近寄る。

「頭…凄いことになってるぞ」

ぐいっと腕を引っ張られたかと思うと、そのまま俺の体は輝二の胸の中へ吸い込まれるように入っていく。

「わわっ!何するんだよ!」

「少しジッとしてろ。今、梳かしてやるから」

「いっいいってば!いちおう手ぐしで軽く寝癖は直してたし。本当は後でもう一回、ちゃんと梳かそうと思ってたんだけど、輝二の視線捉える方のが忙しくて忘れてたんだよ」

「そんなに俺の顔を眺めていたかったのか?けっこう可愛いとこあるよな。おまえ」

「ちっ違うっての!おっおまえがなんか俺の視線はずしたがってたからそれで…」

輝二は自分が髪を伸ばしていることもあって、コームは常に持ち歩いてるっぽいようだ。

俺を胸の中に抱きこんだまま、制服の内ポケットから取り出したコームで、俺のぴんぴんに跳ねた髪を優しく梳いていく。

その櫛どおりが気持ちいいのと、輝二に抱かれてる感触が心地いいのとが重なって、俺はうっかりと目を閉じ、輝二におもいっきり隙を見せてしまっていた。

くいっといきなり顎を持ち上げられる感覚を覚え、ハッとなって目を開けば、唇に触れる柔らかい感触。

「んなっ?!」

「髪を梳かしてやったご褒美はこれで勘弁してやるよ」

ボンッと俺の中で火が吹くのを感じた。

「ほらっ!ぼさっとしてっと本当に遅刻するぞ!」

耳まで真っ赤になった状態で、なんとか一瞬にして狂わされた思考を取り戻し、輝二を殴ってやろうと振り向けば、当の本人はすでに遥か先で満足げに笑っているではないか。

「こんのぉ〜っ!!覚えておけよ!輝二のバカ野郎!!」

 

 

-next-


あとがき--

友達以上恋人未満のはずが…拓也さん的にはそんな感覚でふわふわしてるとこなんだろうけど、輝二さんは完全恋人気分ですよ。

なんだ?このギャップは…

っていうか、輝二さんからしてみれば拓也さんは脳内嫁ですがw

いちおうプロポーズっぽいこと本人言ったつもりでいるわけですから、当然か。

ただ拓也さんがそれをプロポーズと受けてたかどうか…

1P読みきり狙ってたんですが、思ってたより輝二さんとの会話が長くなったので、2Pで輝一さんを…

拓也さん…もうアレ、正夢ですよ。な展開へと続く。

2011.3.6