「う〜…やっぱり2日目で猛ダッシュはきつかったかな?」

輝二にスポーツバッグを預けて、俺は下腹部の激しい痛みに耐え切れずにトイレへと駆け込んでいた。

「なんか頭もクラクラしてきた。朝飯ほとんど食ってこなかったからかな?」

よろよろとした足取りで、1人保健室で薬でももらってこようと歩いていた矢先である。

貧血を起こし、俺はクラリと目眩を起こしその場にしゃがみこんでしまった。

「拓也?どうしたの?大丈夫?」

そこへ偶然にも通りかかったのは輝一。

「あっうん。ちょっと貧血起こしちゃったみたいでさ」

「立てる?保健室行こうか?」

「うん。ありがとな」

輝一に肩を貸してもらい、俺はふらつく足取りで保健室へと入っていく。

「先生、たぶんこの時間だと職員会議かな?とりあえず、先生来るまでベッドに寝ておく?」

「ん…そうする」

俺は一番手近な場所にあったベッドへと這い上がるとそのまま、下腹部を押さえ込んだまま蹲る。

「もしかしてアレの日?」

輝一は俺の様子を伺いながら、小声で聞いてくる。

「う…まあ」

泉にこういうことは男の子に知られるものじゃないって、言われていたにも関わらず、輝一にあっさりと見破られてしまい、俺は恥ずかしさに顔を真っ赤にしてしまう。

「そっかあ。大変だね。少しさすってあげようか?」

「う…いやっいい!先生来たら薬もらうし」

おもわず、首を縦に振りそうになり慌てて横に振りなおす。

「そう?まあ拓也がそういうなら仕方ないか」

(なんなんだよ?そのいかにも残念そうな顔は…)

輝一はベッドの端に腰を下ろすと、何の前触れもなくいきなり俺の胸元のリボンを解きにかかってきた。

「なっなにするんだよ!」

「あっいや、こういうときは衣服のきついところを緩めた方がいいっていうから…。あっでも、拓也の場合はいつも第一ボタン外しっぱなしだったからいいのか」

(わざとだろ?絶対、おまえわざとだろ?)

俺が顔を真っ赤にしながら、睨みつければ輝一は愉快そうに笑うだけ。

ある意味、輝二より性質が悪いときがあるのが輝一だ。

俺は布団をおもいっきり顎のところまで引き上げ、これ以上変な真似をされないようにした。

「ごめんごめん。なんか拓也見てるとつい、遊びたくなるというか、からかいたくなるというか…つまりは、好きだからこそ、いじめたくなる幼い子供みたいなものなのかな?俺って」

「なっ…」

(すっ好きって言った?今…)

俺が口を酸欠金魚のようにパクパクさせているのを見て、輝一は今度は笑うことはせず、真剣なまなざしで俺の頬を撫で、同じ言葉をもう一度呟いた。

「俺、拓也のことずっと前から好きだったんだよ」

「こっ輝一?…おっおまえ…何をいきなり」

突然のマジ告白に、おもわず声が裏返ってしまったじゃないか。

「でも、キミは輝二に気があるみたいだったし、どうしようかと思い悩んでいたんだけど、やっぱり諦める選択肢は選びたくなかったんだ。だって…たまには俺も輝二みたいに日の当たる立場になってみたいじゃない?だから…拓也だけは譲るわけにはいかない。そう輝二に言った」

「……?」

どういう意味かすぐには分からなかった。

俺はただ魅入られたようにジッと輝一の顔を見つめていることしかもうできなかった。

完全に思考回路が止まったそんな感じで、顔を真っ赤にしたまま呆然と白い天井を見つめ続けるだけ。

「今日、拓也。輝二と一緒に登校してきたでしょ?気づかなかった?輝二、俺にキミをとられたくないから、わざと一本遅らせてキミが来るの待ってたんだよ。今の俺には分かるんだ。どうして輝二がそうしたのか」

輝一はそっと俺のついさっき、輝二が触れた唇へと指をなぞらえながら、顔をゆっくりと近づけたと思ったら、俺の耳元にそっと囁きかける。

「俺がキミと同じ電車に乗る立場にあったら、絶対そうするからね」

にっこりと輝一が俺に笑いかける。

輝二と同じ顔なのに、違ってみえるその笑顔はふわっと包み込むような優しさで溢れていて、誰もを癒す力を持っている魅惑の微笑み。

輝二のような眩しい笑顔とは違って、また別の魅力をもっている。

俺がそんな優しいまなざしに戸惑い、視線を外すと輝一はそっと俺の顎に手をかけ、そして--。

「キミが俺を好きになるように…ちょっとしたおまじない。じゃあね」

「……」

そっと触れ合った唇と唇。

本日、二度目のキス。

しかも双子にそれぞれされたことになるわけで---。

輝一は「そろそろ先生来ると思うよ」とドア付近で、今にも意識が飛んでいってしまいそうな俺に向かって言いながら、去り際にあの夢の言葉を俺に呟き捨てていった。

「ねえ、どっちが好き?」

 

-end-


あとがき--

輝二さんの方が長い気がするのは前置きが長かったせいだよね?

別に二拓♀贔屓だからってわけじゃあないよね?

同日に別々の男からキスされるなんて面白いな〜なんて、これ書きたかっただけなのに、なんかシチュエーションとか考えてたら、双子が別行動でにょ拓と接触になった。

いちおう輝一さんが地元の高校ってことで、電車通学じゃないということで、輝二さんと拓也さんが相乗りしやすくなっている展開。

序盤の輝二さんの照れは、輝一さんからの前夜に受けた宣戦布告への早々の対応ってことですねw

それを素直にいえないのと、実は1本前の時間帯からずっとあそこで拓也さん待ちしてたことを知られたくなくて、悟られないようにしていたと。

チュウもそんなとこ。なんか唾つけたっぽい感じが子供っぽい争いに見えてくる。

双拓♀はこの先、どんどんスキンシップ度が競争の果てに悪化するんじゃないかと思われ…なければ、ギャグ寄りで済むんだけどな。

2011.3.6